尚也(同僚)が見舞いに来てくれた。

 

正直、下半身が若干緩い以外は回復しているので遠方からわざわざと申し訳なく感じると共に友人の有難さに今更ながらの謝意を伝えようとしたが、「つまらンもんやけど」と手渡されたストロングゼロドライのロング缶の冷たさを感じた刹那むしろ殺意が芽生えたが悪気があるわけでもなし、「ほんまにつまらンもんやな」の雑言をごくりと飲み込み修正しようのない歪な笑顔で招き入れた。

 

「俺、禁酒してるん知らんかったけか?」

 

 

・・・。

まあいいや。

信じられないのも無理はない。

俺だって自信ないもの(←をい)。

 

現場の進捗確認、雑談、ダービーで大枚を失い(あんなん当たるかよ)それではと腰を上げたところで思春期の少女よろしくもじもじと「帰りたくない」と上目遣い。

 

「なにそれ怖い」

 

よくよく確認すると「帰りたくない」→「帰りにくい」の聞き間違い。

めんどくせぇなぁと思いつつ話を聞いてみる。

 

「今朝から嫁の様子がおかしい、口も利いてくれん・・・」
 
他所の嫁の機嫌なんて感知するところではないし、むしろ俺が知ってたら怖いだろ。
 
「スマホ見られたかな・・・」
 
※尚也についての注釈
①俺より年上ながら恐ろしいほどの童顔と誰もが羨むジャニ顔なので過去浮名は絶えなかった。
 
「全部消したつもりが1件だけ履歴消し忘れてて・・・」
 
※尚也についての注釈
②『以前からファンだったんです』なんて嘘のような逆ナンでパコパコママが珍しくない稀有な糞野郎(あ、下品ですね言い直します、うんこおじさま)。
 
「資材屋の営業で登録してるから大丈夫やろ思うが・・・」
 
※尚也についての注釈
③最初の浮気がバレて(氷山の一角)恐る恐る帰宅した時、家のドアの前に『死ね』と赤文字で大きく書かれた紙が貼ってあったらしい。
それが彼の嫁の血文字なのかどうかは敢えて知るところではない。
 
「内容がな・・・」
 
※尚也についての注釈
④2度目の浮気がバレて(もちろん氷山の一角)戦々恐々と帰宅した時、家のドアの前に『殺す』と赤文字で大きく書かれた紙が貼ってあったらしい。
まだ生きているところをみるとどんなマジックを使ったのか興味の沸くところだ。
 
俺はその消し忘れのメールを見せてもらうことにした。
 
 
 
 
 
5/20 14:55
From 〇〇産業㈱ 山本一郎(主任)
Sb 生理きたよー!
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安心してネ
(n‘∀‘)η
 
 
 
 

※尚也についての注釈
⑤恐らく本日が彼の生存を確認できた最後の日になろうとはこの時は知る由もなかった。