それがクロロホルムを染み込ませたハンカチかどうかなんて今更確認のしようがないのだが、とにかく俺は「ソレ」で口を塞がれた。
急速に薄れゆく意識の中で俺は必死に自分に言い聞かせたんだ。
 
「眠ってはいけない!」
 
そして思い切って目を見開く。
 
・・・。
ああ。
夢だ。
いつもの変な夢。
「夢の中で寝る」という夢、その過程も含めて嫌な汗が額をつたう。
(めヲアケナケレバおれハどうなってイタダロウ)
 
壁時計を見上げると、綺麗な「L」の字を確認。
午前3時。
この覚醒に意図がないならば薄気味の悪い偶然なんて焼け付く渇きとともに飲み込んでしまえ。
俺は浮浪者よろしく立ち上がりキッチンでコップ1杯の水道水を呷る。
下手に旨い水より落ち着くのはそれだけ人間が単純に出来てないって証明だろう。
 
パシ・・・ぺし・・・パシぱシ・・・・ぺし・・・。
 
幾らか落ち着いた鼓動に同調するかのような異音が廊下から鈍く響き応なくそれを再び速める結果に。
見え透いた恐怖が俺の両手を握りしめる。
 
(こノいえにハじぶンイガイダレモいナい)
 
目を背けたい事実を引きづり、俺は恐る恐る廊下に首を出しms
 
「ぎゃあぁー!」
(出来たらここに楳図かずお氏か伊藤潤二氏が描く絶叫画像等があると望ましい。ていうか貼れば良いじゃん。やだよめんどくさいもん。ぷんすか)
 
えっと。
確認しますと。
メイちゃん(猫14歳♀)が廊下をタップしておりました。
近づいて家主たる俺は脳内でシンクロし会話を試みました。
 
まぼ「えっと、何してはるんですか?」
メイ「まーお(見たらわかるやろ)」
まぼ「すみませんわかりません」
メイ「まーお(よう見てみい)」
 
メイの足元に微かに蠢く不快な造形。
 
まぼ「ムカデ・・・ですね、大きな」
メイ「まーお(せや、動かんようなるまで痛めつけとるわけや)」
まぼ「そっすか、もういいっすよ、片付けておきますので」
メイ「まーお(ワレ、アホか。まだ動いとるやろ、虫の息やけどな、虫だけにww)」
まぼ「・・・寝ますわ。朝片付けます」
メイ「まーお(起きたついでや、ちゅーるもってこんかい、気がきかンのう、ワレ)」
 
何か無性に腹が立ったので放置して床についた。
あいつは明日飯抜きだ。
 
Fin.