【米機の新型爆弾による攻撃に対する抗議文】

 今月六日、米国航空機は、広島市の市街地区に対し新型爆弾を投下し、瞬時にして多数の市民を殺傷し同市の大半を潰滅させました。
広島市は、何ら特殊の軍事的防衛機能や、そのための施設を施していない普通の一地方都市です。
同市全体を、ひとつの軍事目標にするような性質を持つ町ではありません。

 本件爆撃に関する声明において、米国トルーマン大統領は、
「われらは船渠(せんきょ)工場および交通施設を破壊した」と言っています。
しかしこの爆弾は、落下傘を付けて投下され、空中で炸裂し、極めて広い範囲への破壊的効力を及ぼすものです。
つまり、この爆弾で、この投下方法を用いるとき、攻撃の効果を右のような特定目標に限定することは、物理的に全然不可能なことは明白です。
そして本件爆弾が、どのような性能を持つものであるかは、米国側は、すでに承知しているものです。

 実際の被害状況は、広範囲にわたって交戦者、非交戦者の別なく、男女老幼を問わず、すべて爆風および幅射熱によって無差別に殺傷されました。
その被害範囲は広く、かつ甚大であるだけでなく、個々の傷害状況を見ても、「惨虐」なるものです。

 およそ交戦者は、害敵手段の選択について、無制限の権利を有するものではありません。
不必要の苦痛を与えるような兵器、投射物その他を使用してはならないことは、戦時国際法の根本原則です。
そのことは、戦時国際法であるハーグ陸戦条約規則第二十二条、及び第二十三条(ホ)号に明定されています。

 米国政府はこのたびの世界大戦勃発以来、再三にわたって、
「毒ガスその他の非人道的戦争方法の使用は文明社会の世論によって不法であり、相手国が先に使用しない限り、これを使用することはない」と声明しています。
しかし、米国が今回使用した本件爆弾は、その性能の無差別かつ惨虐性において、従来かかる性能を有するが故に使用を禁止せられをる毒ガスその他の兵器よりも、はるかに凌駕するものです。

 米国は国際法および人道の根本原則を無視して、すでに広範囲にわたって日本の大都市に対して、無差別爆撃を実施しています。
多数の老幼婦女子を殺傷しています。
神社や仏閣、学校や病院、一般の民家などを倒壊または焼失させています。
そしてさらにいま、新奇にして、かつ従来のいかなる兵器、投射物とも比べ物にならない無差別性、惨虐性をもつ本件爆弾を使用したのです。
これは、人類文化に対する新たな罪悪です。

 日本政府は、ここに自からの名において、かつまた、全人類、および文明の名において、米国政府を糾弾します。そして即時、かかる非人道的兵器の使用を放棄すべきことを厳重に要求します。

昭和二十年八月十一日

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抗議文にあるように、「交戦者は、害敵手段の選択について、無制限の権利を有するものではありません。」
では、戦時国際法を無視した害敵手段を行った場合は、どうなるのでしょうか。

戦争には、戦時国際法というルールがあります。
そのルールを無視したら、プロレスでいったら場外乱闘です。
実際の戦争では、それはすでに戦争の範疇を超えた、ただの国家規模の虐殺になります。

ルールがあるのが戦争です。
ルールを無視した虐殺行為は、戦争ではなく、犯罪行為です。

伊五十八潜水艦は、昭和20年11月に佐世保に回航、翌昭和21年4月1日、五島列島沖で米軍の実艦標的として海没処分になりました。

戦闘は終わりました。
けれど戦争は、実はまだ続いています。

戦争の終わりにはプロセスがあります。
それは以下の順に行われます。
1 戦闘行為の集結
2 停戦協定調印
3 平和条約締結
4 占領軍の撤収
日本は、昭和20年8月15日に戦闘行為を終わらせ、同年9月2日に停戦協定に調印をしました。
そして昭和26年にサンフランシスコ平和条約に調印し、翌昭和27年4月28日に、同条約発効によって主権を回復し独立国家への道を歩み始めました。
けれど、同日付で日米行政協定が発効し、日本にはそのまま在日米軍基地が置かれることになって現在に至っています。

他国の軍事基地が自国の領域内に置かれているということは、事実上の占領状態にあることを意味します。
その意味で、日本は法形式上は平和条約発効によって独立国となっていますが、実態上は未だ占領下にあるといえます。

かつて東ドイツには、旧ソ連軍が駐留していましたが、ドイツ経済が崩壊し、東ドイツが平成2年に西ドイツに併合されると、その半年後の翌平成3年3月からソ連軍の撤収を進め、その年の12月に旧ソ連が崩壊しました。

そしていま、日本の真の独立の日が、だんだんと近づいています。


※この記事は2022年8月の記事のリニューアルです。