スリージー・レインディア-110816_1614~01.jpg

本まほろ駅前多田便利軒
345ページ
三浦 しをん

瑛太の顔が好きって言ったら意外だと言われた、かっこいいよね
これは映画になったばかりのやつかな?
面白かったからサクサク読めました

便利屋を営む孤独な主人公と、帰る場所が無いため便利屋の事務所に居候することになった元同級生。
二人のお話が依頼主ごとに短編で幾つか入ってる

とにかく主人公の物の例えがちょっとシュールなんだけどツボ。
「行天は、道でひからびたミミズを見たときのような目をこちらに向けた、あまり感情のこもっていない、しかし愚かさを哀れんでいることだけは伝わってくる目だ」
あとの説明無いとよくわからないけど、なんか分かりやすい。笑

「波打つ茶色い髪に真っ赤なバラのコサージュを挿し、蛍光グリーンの薄っぺらいワンピースにはショッキングピンクの大きなチューリップ模様が散っていた。腕には礼儀正しくドアの外で脱いだらしい、フェイクファーの黄色いコートがあった。『ジャングルに棲息する毒を持つ大トカゲが、インコの化け物を捕獲した瞬間』みたいな姿だ」
めっちゃウケた。笑


あと厚化粧の途中の女性を見ながら
「つけまつげがまぶたの真ん中あたりについてるが、あそこまでが目だと言い張るつもりだろうか。いったいどうやって?」
これは声出して笑った。笑

前半はこんなかんじに面白い。後半は主人公の抱えた傷に触れていく展開。
前回読んだ「重力ピエロ」に続いて…こういう展開か。父親が違う子供。DNA鑑定。偶然だけどなんかヤだなこういうテーマが重なるの;


すごく絶妙な説明加減なんです、その気持ちの展開、すごく分かるわ…って。
こういう本、好き。

主人公が居候から言われる言葉
「黙っていれば、相手は自分にとって都合のいい理由を、勝手に想像してくれる」
この言葉、なんかすごく真理突いてるなって思った。
たいていの事は沈黙で乗り切ってきたとも言い切る居候にまんまと振り回される主人公も面白い。

でも逆に一人で過ごすマイペースな日々と違って、そうやって振り回される主人公は、優しい想像ができる人なのだし、自分の闇とか乗り越えたかった過去を居候との衝突で気づいていくから、有意義な日々になってくのも事実。いいコンビだと思うな。笑

「一人でいたい。だれかといるとさびしいから。しかしそんなことを思う時点で、俺はとっくにさびしいのかもしれない」
あー分かるわ…

「だれかに必要とされるってことは、だれかの希望になるってことだ」
だれかの希望になってることが自分にとっても希望になるのだという循環の中で生きたい。私には残念ながら欠けてる。


腹をたてながらも、気づくと少し依存してたり。それまで主人公が身を置いてた居心地の悪くないマイペースな日々は、良し悪し…波風たてられて葛藤するけど、乗り越えた姿を見ると清々しくて、そんな依存は羨ましくもありました。


★★★★☆