≪俺≫



「このトマト持って帰ってもいいか?」


お袋に声をかけた。


午後7時過ぎ。
いつものように殆どの野菜が売り切れた。

最後の最後まで売れ残ってしまった野菜は、お袋が自宅用に持ち帰る。
今日は、プチトマトのパックが一つと、玉ねぎが二袋だけ売れ残った。


「いいよ」


玉ねぎの袋を二袋、自分の手提げバッグに入れながらお袋が返事をする。

親父とお袋と共に、売り上げの清算をして、店内を軽く掃除をして、いつものように二人を先に帰し、店の照明を全て消してシャッターを閉じると、いつも通り時刻は午後8時だった。

店の裏にある小さな階段を登り、通路を歩き一番奥のドアに鍵を差し込んで開ける。
手探りで部屋のスイッチを入れ、真っ暗だった部屋に明かりを灯す。


住み始めてからそろそろ一年が経つこの部屋は、単身者用のワンルーム。二階建ての建物で、一階は俺達家族が経営する青果店で、二階には全部で5つの部屋があり、全ての部屋は俺と同様に単身者の男が住んでいた。


売れ残りのプチトマトのパックを冷蔵庫に放り込み、とりあえずシャワーを浴びようと思いジーンズのポケットから財布と携帯を取り出すと、メール着信を知らせるランプが点滅している事に気づく。

メールの送信者の名前を見て大きく溜息をつき、メールを見ずに携帯をベッドに投げて、浴室へ行った。


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