〇大正8年全生庵発行。これは昭和38年に復刻されたものです。大正8年当時には山岡にかかわった人たちも多数存命の時期で貴重な文献です。
〇現代口語文に近い形になおしました。
〇鉄舟本の多くが引用している部分がありますがそのまま載
せます。
●しかるに、午前九時にいたり、千葉氏に暫時人払いをしてくれといわれる。千葉氏いかがなさいますかと聞くと、居士はナニ昼寝の邪魔になるからといわれる。千葉氏は一同を別の部屋に遠慮させた。
●すると居士は静かに身を起こして寝具を離れ、皇城に座禅しすぐに右手を差し出される。千葉氏その真意を察しそばにあった対馬祭りの団扇をささげる。居士これを取り瞑目しつつその柄で左の手のひらに何か字を書いて居られたが、急に気息切迫の様子であるから、千葉氏はすぐに薬を勧めた。
●が、もはやこれを服する余地なく、ついに九時十五分を以て薨去された。享年五十三である。時に勝氏は前日来二階に詰め切っておられたが、ここに至って
凡俗頻りに君を煩わす
看破す塵世の群
我を抛って何処へか去る
精霊紫雲に入る
〇原文は漢文
●の詩を賦し、直ちに自邸に帰り、部屋にこもって哀悼された。
〇鉄舟の団扇を持った臨終の様子はその場に立ち会った人の描いたで絵が残っています。