〇大正8年全生庵発行。これは昭和38年に復刻されたものです。大正8年当時には山岡にかかわった人たちも多数存命の時期で貴重な文献です。

 

〇現代口語文に近い形になおしました。

〇鉄舟本の多くが引用している部分がありますがそのまま載

せます。

 

●が七月に入ると、病勢とみに減退したから、居士はかえって末期の近きを知り、その八日において、撃剣門人を招集し、一人残らず最後の指南をされた。これより二三日後のこと、松岡氏が見舞いに来たので、夫人は鉄舟もあの通りですから、もはや長くはありますまいといわれると、松岡氏はソハ大変だといって慌ただしく去っていった。

 

●がその深夜いずこより忍び込んだものか、ひそかに居士の病室にいたり、だしぬけにムンズと居士に組み付く、時に居士は蚊帳に安座しておられたが、組み付きかかる松岡氏をヒョイと抱き上げ、松岡さんどうしたんだといわれる。

 

●松岡氏は抱え上げられながら、大声でヤァ大丈夫、大丈夫と叫び、それより夫人に向かい先生は大丈夫ですから御安心召されといって一人安心して帰った。

 

〇危篤前の小康というべきものでしょうか。松岡を持ち上げた話はよく引用されています。