会報は毎月発行するため、僕たち文芸部は常に作品を書いていかないといけない。その上で学業もやっていかないといけない。定期的に試合がある運動部と違い、毎月月末には締め切りがある。
「こうちゃん!作品を大量に作るにはどうすればいいですか?」
美奈から質問が来る。
文芸部には現在、新人さんは守と進の二人に加え、美奈も新人と言う立場である。守と進は瑠璃と玻璃と仲が良く、そっちで作品を作っている。
なので、僕としては美奈の担当に集中することができる。4人組のルート修正は瑠奈編集長に任せよう。
「作品というのはすぐに作れるものではないです。」
「えー・・・なんかコツないの?」
「コツというと、妄想を具現化するってのがありますが、妄想を作るってのも大変です。想像力に依存するため、常に想像をしていないといけないのです。また、具現化すると言っても僕たちの場合は文章なので、どうしても難しいところがあるのです。」
美奈は今回の会報で苦労した。4月の会報は川柳でなんとかしのいだものの、5月はしっかりとした作品を出す必要があった。小説は川柳と違い、一つの長い物語なのだ。17文字、31文字で書く世界と原稿用紙数枚の世界は、共通点こそあれど、全く違う。
「うーん、文章を書くのも難しいし、それを作るのも難しいね。」
「とくにこの学校の文芸部は積極的に活動しています。なので、毎月会報があるんですよね。」
「何かいっぱい作品が作れるコツってないの?」
「妄想以外ですと・・・・いろんな作品を見ることですかね。いろんな作品を見ていると、その情景が手に取るように思い付き、妄想の足しになります。また、「こんな作品を書いてみたい」という思いから、色々手を出すことになります。」
「なるほど。なんでも良いの?」
「はい、なんでもいいです。小説でもアニメでも。もちろん漫画でもゲームでも。とにかく、いろんな作品を見ることですね。」
「・・・・・気になったので良いの?」
「はい。最近の若い人は何かと失敗を恐れ、面白くない作品を見ないようにしているそうですが、面白くない作品には面白くない原因があります。それを知ることも勉強になるので、気になった作品を好きなだけ見ることをオススメします。すべてが作品に活かされるのです。」
「おぉー!名言。」
素直で輝いている目を僕に向ける美奈。実は、瑠奈編集長の受け売りですけどね。
しかし、面白くない作品を見るのも勉強。すべてが作品に活かされる。事実、僕は結構提出が早い。確かにすべての作品が活かされている。
「はーい、みんなちゅーもーく!」
ふと、瑠奈編集長が奥のホワイトボードのところに行き、みんなを呼んだ。
「こうちゃんと相談して決めたんだけど、今後のことも考えて交流会を定期的に開きます。ぶっちゃけ、月初めくらいに会報に載せた作品を回し読みする会を開きます。」
「へんしゅうちょー!回し読みって、みんなですか?」
瑠璃が発言をする。それに瑠奈編集長は答える。
「そう、みんなよ。ここにいる文芸部員全員の作品を回し読みします。」
沈黙が流れる。僕以外の5人は顔を見合わせる。そして一斉に叫ぶ。
『はずかしいー!!!』
まぁ、そうなるわな。目の前で感想言われるのって恥ずかしいよな・・・。