ゴールデンウィーク前。新入生確保のために部活勧誘が行われる。日本では年々、部活をする人が少なくなっているが、来るところには来る。野球部などの運動部は言わずもがな、吹奏楽や軽音部のようなキラキラした部活には人がよく来る。
対して、かなり地味な部活の代表である我が文芸部。黄金期こそあれど、イメージが地味すぎて、人がまったくこない。今回も1ページ同人誌を数多く用意したが、文字を読む人というのは貴重。同じ文系、さらに創作物の部活ならば大体は漫画研究会に向かう。
手に取る人はいるものの、文字という媒体のせいですぐに読むのをやめる人が多い。流石にこの状況を、瑠奈編集長の美貌だけでは乗り越えられない。可愛いや美人が揃っている我が文芸部も、文字が苦手という一般的な事実には勝てないのだ。
1週間の部活勧誘イベントを終え、成果は無し、かと思われた。しかし、予想外のところから入部希望者がやってきた。
峰岸守(みねぎしまもる)。おとなしいタイプの男の子で、瑠璃や玻璃と気が合いそうな雰囲気だ。今回、玻璃に誘われて文芸部の門を叩いた。
安室進(あむろすすむ)。守の保護者の男の子で、守とは幼馴染。瑠璃曰く、意外とドライな性格。今回、守が文芸部に入るからと一緒についてきた。
「おとーとくんです。」
「え!?え、っと・・・弟です。」
「いや、違いますよね?」
玻璃のペースに飲み込まれる守。
「玻璃のおとーとってことは、私のおとーとでもあります。」
「お、お姉ちゃんが二人出来ました!」
「守、落ち着いて。」
自分でもどういう状況か把握できていない守は、瑠璃や玻璃のペースに巻き込まれる。それをたしなめる保護者、進。観察している僕らは楽しめるが、当事者は大変だろうなぁ。
「ということで、新入生が二人入ってくれました!拍手ー。」
「ヘーイ!編集長!身長150cm台が5人になりマシタ!これは次の時代がキマース!」
瑠奈、168cm。ヒビキ、163cm、僕、166cm、、美奈155cm。瑠璃、154cm、玻璃、154cm、守、152cm、進、152cmらしい。
「とりあえず、近いうちに歓迎会ってことで、過去の小説朗読会を行おうかしらね。映画鑑賞会もいいわね。ヒビキ、許可取りお願いね。」
「そういえば荒木先輩。ここの顧問って誰ですか?」
「瑠奈でいいわよ。実はあまり知られていないんだけど、保健室の真鍋先生よ。ほとんど来ないから顧問が誰か知らない人も多いの。私も知らなかったし。」
「え?そうなの!?」
一番に反応したのは美奈。確かにここを紹介してくれた先生が顧問だとは思わないだろう。
「というより、僕も知らなかったんですが・・・。」
「私もデース!」
『わたしもー。』
「みんな知らなかったのね。」
とはいえ、新生文芸部、始動ってことかな。今年一年は結構大変そうだな。