今回も引き続き、前回から始まった卒論について書いていきます。

 第2節 第6次エネルギー基本計画―野心的な目標とは―

 (1)エネルギー基本計画の目標

令和3年10月22日に経済産業省より、第6次エネルギー基本計画が閣議決定されました。この計画の内容は二つの重要テーマがあり、まず一つ目は、「2050年でカーボンニュートラル達成、2030年のCO₂等の温室効果ガスの46%削減、さらに50%の高みを目指して挑戦を続ける新たな削減目標の実現に向けたエネルギー政策の道筋を示すこと」。二つ目は、「日本のエネルギー需給構造が抱える課題を克服すること」である。「安全性の確保を大前提に、気候変動対策を進める中でも、安定供給の確保やエネルギーコストの低減(S+3E)に向けた取り組みを進める」としています。

(2)それぞれのエネルギー源の位置づけ

  • 再エネ:「S+3Eを大前提に、再エネの主力電源化を徹底し、再エネに最優先の原則で取り組み、国民負担の抑制と地域との共生を図りながら最大限の導入を促す。改正地球温暖化対策推進法に基づく再エネ促進区域の設定による太陽光・陸上風力の導入拡大、洋上風力の案件形成加速の取り組みを行う。」としています。

 

  • 火力発電:「安定供給を大前提に、再エネの瞬時的・継続的な発電電力量の低下にも対応可能な供給力を持つ形で設備容量を確保しつつ、以下を踏まえ、できる限り電源構成に占める火力発電比率を引き下げ」るとしています。

 

  • 原子力発電:「安全を最優先し、再エネの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する。」と書いていますが、次のページには「日本の厳しい規制水準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める。」としています。一見矛盾しているような文言である。経産省が原子力発電再稼働に対して細心の注意を払っていることが見て取れます。原子力は「燃料投入量に対するエネルギー出力が圧倒的に大きく、数年にわたって国内保有燃料だけで生産が維持できる低炭素の準国産エネルギー源として、優れた安定供給性と効率性を有しており、運転コストが低廉で変動も少なく、運転時には温室効果ガスの排出もないことから、安全性の確保を大前提に、長期的なエネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源である。」と基本計画にメリットが記載されているのです。日本は一次エネルギー供給の約4割を石油で賄っているが、昨今では原油価格が高騰しているなど海外からの輸入にかなり頼っている日本のエネルギー供給は脆弱だといえる。だから、少ない燃料で大きなエネルギーを生み出し(費用対効果がよい)、また二酸化炭素もほとんど排出しない原子力はまともに使えるエネルギーの中では環境に優しいエネルギーなのです。しかし、日本は東日本大震災で福島第1原発事故を経験している。その大きなショックで原発再稼働に対して反対や慎重な意見が多い。しかし、原子力発電以外にも風力発電、太陽光発電、特にメガソーラーによる弊害は日本全国各地で起きている。原発反対運動がよく報道で取り上げられるが、住民によるメガソーラー設置反対運動も各地で起きています。この問題がメディアで大きく取り上げられていないことが不思議です。

 今回はここまでとなります。前回かなり長い文章だったので、細かく分けることにしました。

ご覧いただきありがとうございます!

 

※原子力発電は「発電時」に二酸化炭素を排出せず、地球温暖化対策の観点からは優れたエネルギーだといえる。また、原子力はほかの発電所と比較しても圧倒的に発電効率が優れている。しかし、核のゴミ(高レベル放射性廃棄物)の処理方法という問題を抱えている。現段階では、地中(300mより深い位置)に核のゴミを埋める方法が有力としているが、ゴミを埋める場所が何処でもいいわけではない。特に日本は火山や活断層が多いため、決まっていない状況である。また処理する費用もかなりかかることになる。この核のゴミ問題をどうやって処理するのかは今後も政府が積極的に投資し、安全で環境負担が少ない処理方法を検討していく必要がある。だからと言って原子力を0にするのは非現実的であり、費用対効果のいい新しい再エネや核融合が現実的に利用できるようになるまでは活用していくしかない。

 

 「エネルギー基本計画の概要」経済産業省2021.10 20211022005-1.pdf (meti.go.jp)
 

 S+3E:「安全性(Safety)、エネルギーの安定供給(Energy Security)、最小の経済負担(Economic Efficiency)、エネルギー供給に伴って発生する環境負荷(Environment)の可能な限りの抑制」を表す。