卒論テーマ第3回目になりました。投稿が遅くなってしまい申し訳ございません。

年始から卒論の最後の仕上げや2月頭には副鼻腔炎の手術のため1週間ほど入院しておりました。先日、無事に退院できましたのでこれからは投稿頻度を上げていきたいと思います。

これからもよろしくお願いします。

第3節 環境影響評価法(環境アセスメント法)改正の問題

 

2019年4月、中央環境審議会において、既に法対象となっている事業と同程度以上に環境影響が著しいと考えられる大規模な太陽電池発電所については、環境影響評価法の対象事業とすべきという答申がなされた。太陽電池発電所は、2020年4月より環境影響評価法(平成9年法律第 81号)の対象事業となった。しかし、大規模でなくとも、中小規模でも土砂災害や自然環境の悪化などの問題が起きないわけではない。ここでは、環境アセスの改正の内容と問題点について論じていく。

その前に環境アセスメント制度の概要を説明しておこう。環境省によると、「事業内容を決めるにあたって、環境にどのような影響を及ぼすのか、事業者自らが調査、予測、評価を実施する。その結果を住民、自治体に公表して、意見を聴き、それらを踏まえ、環境の保全の観点からよりよい事業計画を作ることを事業者に促す制度」である。この制度のポイントとなるのは、あくまでも事業者自らが調査、予測、評価を実施することである。

今回の改正で、対象が拡大されたのは、太陽光発電である。規模要件は、第1種事業で4万kW以上、第2種事業は3万kW以上(系統接続段階の発電出力)となった。指標は総出力(kW)を採用している。なぜ総出力を指標としたのか。環境省によると、「太陽光発電事業において、面積と総出力は概ね比例関係にあることから、電気事業法との整合性の観点、また、事業者及び行政当局が法の対象事業か否かを判断する上での簡便性の観点からすれば、太陽光発電事業に関する規模要件は、総出力(kW)を指標とすることが適当である。」となっている。

果たしてこの指標が適切なものなのだろうか。まず、総出力とあるが電気事業法は、電気安全の観点で出力の区分に応じた規制であり、事業区域の面積に着目した規制は行っていない。国立環境研究所によると、「日本全体の太陽光発電の66.36%を500kW~1000kWの中規模施設が占めていた。これは比較的小型の規模の施設が、累積的に自然環境を損なっていることを意味している。」さらに、「自然保護区に該当する場所でも、太陽光発電施設の建設が確認された(合計1027施設)。鳥獣保護区内では605施設、都道府県立自然公園内では245施設、国立公園内では101施設が確認された。これらのうち68.4%は中規模施設」との結果がでた。この研究結果からみても小中規模の発電所が6割以上を占めており、総出力だけの規模要件では自然環境を守ることができない。また、吉野ヶ里遺跡でのメガソーラー事業の計画がされていたことや古墳群の周辺(千葉県東金市極楽寺古墳群)など日本の重要な史跡周辺にソーラーパネルを設置するなど、日本の貴重な史跡を空き地があるからと言って景観を破壊ないがしろにしているなど、そこまでしてメガソーラーを設置しようとしている事例も見受けられる。

だから、総出力に加えて面積、自然保護区、史跡周辺、土砂災害警戒区域などの開発は開発を禁止、もしくは厳しい要件を設ける必要がある。

 また、2020年3月に「太陽光発電の環境配慮ガイドライン」が策定された。法律の対象にならない小規模の太陽光発電施設の立地検討・設計段階において、発電事業者を始め、太陽光発電施設の設置・運用に関わる様々な立場の方が、環境面での課題に気付くことを支援し、発電事業者等における自主的な環境配慮の取組を促すものである。このガイドラインで重要なポイントは事業者自身がチェックすることになっていることである。例えば、発電所設置する前に地域住民に事業計画について説明する必要がある。しかし、このガイドラインはあくまでもそのような取り組みを促すものであって、地域住民に説明しなくても法律的には何の問題もないことになっている。まさに絵に描いた餅だろう。筒抜け状態のガイドラインでは発電所周辺に悪影響をもたらす可能性が高い。

このような政府の取り組みを見ても、太陽光発電の普及をとにかく推進したいがために規制が緩い環境アセスメント改正やガイドラインを策定したと思えてならない。

 

 今回はここまでとなります。ご精読ありがとうございます!

 

 

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 「太陽光発電事業に関する環境影響評価法について」産業保安グループ電力安全課2019.7.1. p.2

 第1種事業は規模が大きく、環境に大きな影響を及ぼす恐れがある事業で、環境アセスメントの手続きを行う。第2種事業は第1種事業に準ずる事業で、都道府県知事の意見を交換しつつ経産大臣が環境アセスメントの手続の要否を判定する。

 環境省「太陽光発電の環境配慮ガイドライン」2020.3