お久しぶりです。前回の卒論ブログが2月と6か月以上長い間更新してこなかったことまことに申し訳ございません。仕事が忙しくなったなどいろいろありますが言い訳無用ですね。 今後の更新もどうなるか正直わかりません。ですが少しづつでも上げていければと思っております。今後もよろしくお願いします!

第2章 メガソーラーが引き起こす悪影響と要因

メガソーラーが急激に設置されたことによってさまざまな問題が全国各地で多く発生している。住宅用パネルの悪質訪問販売や景観被害、反射光問題などいろんな形で問題が顕在化している。この章では、いくつかの地方のメガソーラー事業によって発生した災害の例を挙げながら問題点を指摘していく。

第1節 地方のメガソーラー事業の実態

(1)熱海市の土砂流の原因

熱海の土砂流は盛り土が原因となって起こった災害とされている。近くにあったメガソーラーは直接的な要因とはなっていないが、今回の土砂流災害はメガソーラー事業にも大きく関連している。業者と行政の2つの視点からこの問題を詳しく論じていく。

まずはこの問題の時系列を追っていく。産経新聞[1]によると、静岡県熱海市で7月、大きな被害を引き起こした大規模土石流で、被害を甚大化させたとされる起点の盛り土をめぐり、県と熱海市が10年前の平成23年3月、事業者側に、県条例に基づき工事停止を命じる「停止命令」などの発出を検討していたことが18日、分かった。同日、県が当時の公文書をホームページ上に公表した。だがその後、命令は出されておらず、県と市は同日午後にそれぞれ開催する記者会見で、一連の行政対応の調査結果についてこれら文書に基づき説明した。

命令は「県土採取等規制条例」に規定。工事に伴う土砂の崩壊や流出などの災害発生を防止する「緊急の必要」があると県側が認めるときは、業者に停止を命じることができるとする。

平成23年3月、県と熱海市の関係部局が集まった際の記録文書によると、この盛り土について「計画通りの施工がされないまま中断状態である上、違法に近い行為が行われている」として対応を協議。18年に土地を購入し19年に市へ盛り土造成計画を届け出たのち、土に産業廃棄物を混入させるなど法令違反を繰り返していた神奈川県小田原市の不動産管理会社(清算)に対し、「条例に基づく停止(中止)命令を考えている」と記されていた。

土石流後の県の発表によると、盛り土はこの直前の23年1月末時点で、高さが少なくとも35メートルと、市に提出された計画(15m)の2倍以上に達していた。

協議では、産廃混入などへの行政指導を行っている最中に土砂搬入が行われるなど「指導を行っても是正される様子はない」として、命令に移る段階にあるとの認識が示された。「土砂の流出、崩落等の危険性があるため、緊急の是正を行わせる必要がある」「行政代執行を行う覚悟も必要ではないか」との発言もあった。条例は「非常に弱い効力しか持たない」とし、関係する他法令での処分も議題にあがった。

一方で、この土地は所有権が協議直前の23年2月、現在の所有者である別の個人に移っており、県と市は「問題が複雑になっている」と苦慮していた様子もみられる。

他方、25年1月付の別の公開文書によると、現所有者が県側に提出した文書で、現場の工事が「放置状態」にあるとし、現所有者として「問題案件処理に善意を持って解決する覚悟」と記載。工事計画概要として「土砂崩壊による二次災害防止の安全工事を施工する」と明記されていた。

被災者70人が計約32億円の損害賠償を求める民事裁判を起こしている。12月6日には、静岡県熱海市の大規模な土石流を巡り、盛り土の造成に関わったとされる土地所有者らに対する殺人容疑の告訴を静岡県警が正式に受理した。今回、告訴状を提出したのは、7月に発生した静岡県熱海市伊豆山地区の土石流災害で家族などを亡くした遺族5人。

告訴状では、土石流の起点となった盛り土を造成した当時の土地所有者と現在の土地所有者は、盛り土を放置すれば土砂崩壊が発生し、住民が死亡する可能性が高いと認識していたのに必要な安全対策を講じてこなかったため、殺人罪が成立すると訴えている。

熱海の土砂流で重要な問題点となるのは、①行政が業者に指導をしても業者が従うとは限らないこと。②規制の法律がバラバラで複雑であり現状の法律だけでは対応できないこと(縦割行政の弊害)。③自治体が行政代執行できない理由の以上の3点である。①については、「行政指導」[2]とは、一定の行政目的を達成するために、助言、指導、勧告等の非権力的な手段を行使することにより、国民を行政庁の意図する方向へ誘導する事実的行為のことをいう。要するに行政指導には、法的拘束力はないのである。人に命にかかわるような危険な土砂災害警戒区域の宅地造成は慎重で厳格に自治体がチェックしなければならない。②の規制の法律についてだが、盛り土などは県外から運ばれていることも多いため、県の条例の内容がバラバラになってしまい対処することができなくなっていること。また、義務者の補足が困難な問題もある。今回の宅地造成も土地の所有権が別の個人に移っているため、誰が責任を取らなければいけないのか不明確である。盛り土の廃棄費用を払いたくないためにその土地をほかの人に売却して雲隠れするなど無責任な事業者も少なからず存在する。これはソーラーパネル廃棄問題にも大きくかかわってくる。③の理由は結論から言うと、自治体が廃棄費用を全額負担するからお金がかかるためである。そもそも、盛り土の処分費用はその業者が支払うべきであるが、その費用を払いたくないため雲隠れしてしまい、そうなると費用は自治体が負担することになるからである。そのお金は地元の方々が納税した税金から支払わなくてはならない。これでは住民の方々は税金の使い方に納得するだろうか。

 以上のことから地方自治体だけの条例だけでの規制では対処しきれないことが分かった。今回の熱海の土砂流については宅地造成業者の悪質でずさんな維持管理の問題だったが、太陽光発電業者についてもほとんど同じことが言える。現状の法律では業者が法律の穴をかいくぐられてしまう。今後必ず起こるソーラーパネル廃棄問題や危険な場所でのメガソーラー開発によって引き起こされる土砂災害などなど多くの問題がある。

 

北村弁護士のメガソーラーについての解説動画です。是非ご覧ください! 今回は以上となります。ご精読ありがとうございました!

 

 


[1] 産経Biz産経デジタル2021.10.18「熱海土石流10年前『盛り土』に停止命令一時検討県と市が危険言及も実現せず」

https://www.sankeibiz.jp/workstyle/news/211018/cpd2110181930004-n1.htm

 

[2] 行政手続法 「行政指導に携わる者は、行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意し、相手方が行政指導に従わなかったことを理由とする不利益な取扱い(別の場面で許認可等を行う場合に意図的に差別的な扱いをするなど)をしてはならない」(第32条)。