日本から中国へ来て18年。
一杯のお茶から自分自身を見つける。
上海迎尚学校 中国茶講師、陰陽五行講師
資格:高級茶芸師、陰陽五行インストラクター
上海在住18年以上。大学時代、生涯発達心理学を専攻(心とイメージ画に関する研究)。上海人の夫と結婚後、上海にて広告、教育関係の仕事に従事。多くの方と出会い、上海の変化を見続ける。2児の母。
今から18年前。上海へ移住してきた1年目に、紹興市のお茶畑を訪れたことがありました。そこのお茶畑は、上海出身の夫の母親の故郷であり、上海から電車とバスで6時間かけて、当時1歳と4歳の娘と義母と一緒に遊びに行ったのです。上海とはまるで別世界。山地にある村なので窓を開けると雲が下に漂っています。
茶農家の人達はみんな温かく、お茶を淹れて迎入れてくれました。摘み立てのお茶の香り、山の清流で淹れた、香り高いお茶。
このシンプルで気取らない、そしてとても温かな笑顔と美味しいお茶の香りが、上海に着たばかりで緊張していた私の心をゆるくほぐしてくれました。いつの時代になっても変わることのない、脈々と受け継がれてきた交流がここにはあり、そしてきっと、この人たちは何十年経っても、このようにお茶を淹れてもてなしてくれる事だろう。
そのことに感動した、お茶の出会いとなったのですが、
上海へ戻って、それからの日々の生活となると、仕事と子育てに追われて、私の生活からお茶が遠のいてしまいました。
そんな追われるように過ごしてきた上海生活。当時3号線までしかなかった地下鉄も家の近くに12号線まで開通する様になりました。
勢いのある上海で生活する事ができて貴重な経験もできましたが、順調な事ばかりではなくて、仕事や上海生活に悩むこともありました。
日中の間に挟まれることが多くて、解決策が見えない。日本の方たちが実際にこちらで生活を初めて、楽しめる人もいればノイローゼになってしまう人もいる。中国が嫌いになって帰っていく人たちも居る。本当は、面白いことに目を向けると魅力もあるのに、なんだか無念に感じてしまうと、何気ない一言を仕事でお世話になっていたカウンセリングの先生に口にしたのです。
すると、先生が、何を柴田さんが面白いと思うのかぜひに聞きたいと。
その時にぽろっと自ら出た言葉が、中国茶だったのです。まだ本格的にお茶を学ぶ前だったのですが、中国に来て初めて訪れた懐かしいお茶畑の風景が蘇ってきた瞬間でした。
そこから、仕事が終わってから毎週現地の文化教室で中国茶芸を習い、国家試験も受けて高級茶芸師の資格を取得して、こうしてお茶教室まで開講する事に至りました。
随分と回り道してしまったような気もしますが、人生の折り返し地点に立ったからこそ見えて来た事もあります。
お茶は日中文化においてもまた世界への歴史においても深い歴史と関わりがあります。
会社員時代は日中の違いばかりに目が行き、無理に遠慮したり、はたまた主張する事で消耗しておりました。それが、お茶に向き合う事で中国と日本の文化の違いとそれぞれの魅力を肌で感じられるようになりました。
心から面白いと思うことを始めること、そこから世界が広がり楽しさが繋がっていくということ、
そしてその楽しさを人に伝える喜びがあるということを、今お茶を通して感じています。