アメリカ合衆国(以後アメリカ)で最も信者が多いのはユダヤ教とキリスト教です。しかし、アメリカは移民が多い国なので、それに伴って多くの宗教信者が存在します。仏教・イスラム教・ヒンドゥー教・カトリックなどなど。アメリカ政府はそれらを尊重しています。つまり、信仰の自由を保障し、すべての宗教を尊重しています。これが、宗教に対するアメリカの表向きの立場です。
しかし、アメリカはユダヤ教徒とキリスト教徒が多いので、その信条や考え方の大勢がその宗教の価値観に基づいています。表向きは他宗教を尊重し、信仰の自由を認めてはいますが、やはり、自分たちと価値観が違う人々とは、微妙な関係になるのは仕方ないと思います。また、同じキリスト教徒でも、保守派とリベラル派がいて、価値観に多少の違いがあり、同性愛についても、絶対認めないという信条を持った人々から、認めて保護しようという信条の人々もいます。

次に、キリスト教と同性愛の関係ですが、同性婚問題を考えると分かりやすいかも知れません。同性愛は表向きは認められ、差別を禁じられていますが、同性愛者は一歩進んで、同性婚を法的に認めるように運動をしています。そして、一部の州の裁判所で、同性婚を法的に認め、法的に保護する判決が出ています。司法関係者の間では同性愛を肯定する信条の人が多いようです。さらに連邦裁判所は、各州に同性婚を認めるように求める判決を出しました。これによって、アメリカは実質的に同性婚を認める形となっています。女同士の結婚、男同士の結婚であっても、普通の夫婦と同じように法的な権利を持っています。

しかし、同性愛に対する反感は根強く残っていて、反対派の抵抗は今でも続いている。同性愛自体は個人の自由なので尊重すべきだが、それを法的に認めて保護する、あるいは法的な権利を持たせいることに反対しているのだ。

このように、多人種・他宗教の国、アメリカでは、理性や信条や感情が入り混じって、中絶や同性愛をめぐって、様々な論争が続いています。現在は肯定派が表向きは多数を占めていますが、感情的には反対派が多数を占めています。とても複雑な現状なので、一言では言えないということです。