日本の会社の大多数は3月決算ですが、実際に期末の数値が出るのは4月以降。
3月はそれまでの損益の動きや固定資産・借入金等の大きな増減を把握したり、販売や購買等に係る内部統制を調べる期中監査が中心となります。

もちろん期末ほどではないのですが、期中監査といえどもなかなか楽ではありません。


実際、会社の業務の流れは想像以上に複雑ですし、メンバーの交代がきっかけで今まで余り気にしなかった箇所にスポットが当たり、新しい発見があることもままあります。

しかし最大の原因は、人手不足のようです。
僕の法人に限らず、昨今の監査業界は慢性的な人手不足が続いており、インチャージ・マネジャー以上ではスタッフ争奪戦の連続だったりします。
スケジュールにコンフリクト(重複)が生じれば当事者間で調整しなければならず、そのため日数も十分に確保できなくなることもあります。



さて、先日は期中監査の現場に続き雑用を事務所でこなし、また私用で区役所にも立ち寄った帰りのこと。
しかも運悪く、普段利用する地下鉄大江戸線はトラブルにより大幅に遅れてました。


ところがやっとホームに車両を見て、僕は「ちょっと待ってくれ」と思わずにいられませんでした。


全くの偶然とはいえ、その車両は「上海万博仕様」だったのです。
外にはマスコットキャラのステッカーが貼られ、中の吊り広告も豫園など上海一色でした。


初めに断っておきますが、僕個人は少なくとも現時点では、北京五輪にせよ上海万博にせよボイコットすべきとまでは考えていません。
また、中国語の老師や中央財経大の先生方をはじめ、僕には中国人の友人や恩人がたくさんいます。


しかし、このタイミングでこのような電車を走らせるのは、さすがにいかがなものかと思わずにいられません。

もちろん、契約の都合もあるでしょうし、口で言うほど簡単にできるとは限らないでしょう。

ですが、国際都市・東京であれば、チベット人がこうした電車に乗ることだって普通にあるはずですし、十分予測しえるはずです。
親族が犠牲になっているかもしれないのに、どうしてもこの電車に乗らなければいけないとして、そんな彼らの心境を万博の日本の事務局は察した上で走らせたのでしょうか?


何も空気を読むというのは、人間と人間との間の空気のことだけに限った事ではないのです。
人間に限らず、時代の空気というものだってあるはずです。

何も完全に白紙に戻さなくても、チベットの情勢の推移をもうしばらく観察してから、当の電車を走らせるか判断するぐらいは出来なかったのでしょうか。

万博を本当に良いものにしたいのであれば、そうした点には万博の日本の事務局には一層配慮して欲しかったです。


繰り返しますが、僕は決してアンチ中国ではありませんし、昨年の北京でも学生時代の長期旅行でも大勢の中国人に親切にしてもらいました。

ここで政治に関する話はしませんがしかし、中国も今までのように経済成長だけで世界中から持て囃されるのも、もはや限界と言わざるを得ないでしょう。
ITの発達に加え、国土も人口も膨大な中国が、果たして今後も情報を意図する通りにコントロールしていけるのか非常に疑問です。

こうした現状を理解しているのかいないのかはわかりませんが、中国政府はチベットに限らず他民族と真剣に向き合い、互いに分かり合う道を示すべきです。


歴史を紐解くと、地方やマイノリティを「アメとムチ」で支配するのが歴代王朝の手法でした。
その手法は、今も何ら変わりません。

しかし、それら歴代王朝は漢民族以外の力もあって繁栄しましたし、清王朝のように非漢族系の支配者層の下でも、漢民族が国の中枢で力を発揮したものです。


21世紀においては、経済的にも政治的にも、中国は世界全体でも相当の重いウェイトを占めることが予想されます。
それだけに中国も尚更、自国のエゴだけを押し通すままは、必ず無理が生じるでしょう。


以前ディスカバリーチャンネルで見たのですが、オリンピックをきっかけに英語の勉強に励む北京市民の姿を追った番組がありました。
中には80を超えた老人もいて、その上達度はもとより年齢を全く感じさせない溌剌とした姿が、ひと際印象に残っています。


国の威信も結構ですが、彼らのような一般の中国人を失望させないのも、中央政府の責務のはずです。