世界が変わってしまったというしかない。
私にとってのそれは診察室を出て、実感のないまま寝て、翌朝出社した時に訪れた。
昨日までできていたことが、耐えられていたことが、できなくなっていた。
パソコンの画面の右下の、デジタル時計がなかなか進まない。デスクの下で、隠すように握りしめていた利き手の拳が、じわっと汗ばむ。
後頭部に、上司の訝しむような視線が、刺さっているような気がして、猫背を精一杯伸ばしながら…うつ病やね…という医者の言葉を思い出していた。
私の半生といえばありふれたものである。
中流家庭に生まれて、両親が離婚。
中途半端に頭が良かったせいで、真面目な学生生活を送り、大学で揺り返してグレる。
単位を蔑ろにバイトに追われ、バイト代は酒に消え、くだらない男に遊ばれて、なけなしの青春を浪費。
何を得るわけでもなく髪を黒に戻して、服を黒に染め、なんとなく就職。
なんとなく、辛くて。
なんとなく、馴染めなくて。
病院へ行ったら、うつだった。
精神科を受診しようと思ったのは、別の理由がある。
過食嘔吐が続いて、1年が経ったからだ。
もともと、食べるのが大好きだった。
物心ついたときから、太っている自覚があった。
そう気づいた最初の記憶は、小学校低学年の時に親友に、体重スゴいね、と言われたものだ。
その場は、笑うしかなかったけれど。
傷ついたけれど。
そこまで、太っている自覚もなくて、気がついたら大学生までそのままだった。おかげで彼氏もおらず、17歳。
しかし大学生になると、そこそこ色気付いてくるわけで。
人生ではじめて、ダイエットをした。
1年かけて、19キロ落とした。
ぽっちゃり(笑)からガリガリに。
モデル体型だね、細いね、と言われるのが快感だった。
過食嘔吐を初めて経験したのは、それから1年後だった。