夏休みはだいたい42日間あると言われている。その42日間で、”相棒”と”主任”が下校指導を手伝ってくれたのは、それぞれたった2~3日だった。しかも、私がやっているのに一緒についてきただけだった。


”相棒”のように、学校にいるのに全く知らん顔をして、定時で帰るのもどうかとは思うのだけど、”主任”は私の神経を逆なでするような行動をよく取っていて、それはさらにうざったかった。


まず、休暇や自宅勤務ばかりで学校に来ない。(これは”相棒”も同じ) たまに出勤したかと思うと、午後だけ休暇を取ったり、謎の理由で帰ったりすることが多かった。フルで5時まで勤務する日は、謎の理由で見回りをしなかったり、おかしな時間に見回りと称した”廊下散歩”をするのだった。


最初にこの”廊下散歩”をしたのは、7月下旬、夏休みが始まって10日弱たった頃だったと思う。”主任”は、5時少し前に、私のところに来てこう言った。


Jさん、まだいる?俺、ざっと見回りしたから帰るけどさ、あとお願いしていい?


私は”主任”の意図していることがわからなくてぽかんとしていた。


まず、「俺、ざっと見回りしたから」は、ただ回っただけだ。下校指導ではない。そもそも4時45分、時には4時40分に見回りをして、誰が帰る支度をするだろうか?5時に終えて15分までに学校を出ればいいのだから、もっとやっていくだろう。その証拠に、私が見回りをして初めて片付け始める生徒が多かった。



それから、「お願いしていい?」も何も、それまでの1週間ちょっと、”主任”がちゃんと見回りをしたことなどなかった。廊下を歩いただけ、生徒に下校を呼びかけるわけではない。すごく素直でおとなしい生徒に、ちょっと声をかけることがたまにあるくらいだ。しかもこの程度の行動ですら、夏休みの最初の2週間弱で1~2回やったか、くらいの回数で、毎日やってくれたわけではなかった。


それに「まだいる?」も何も、私は5時に見回りをし、5時15分に下校状況を確認してからでないと退勤しないのだから、5時ちょっと前に「まだいる?」とわかり切ったことを聞くことの意図がわからなかった。


更に「お願いしていい?」も何も、会議で分担をしてくれなかったから、出勤している日は私が全部やると言ったのだ。だから”主任”にこんな風にお願いされるのはおかしい。こんなことを言うのなら、最初から分担をしてくれればよかっただけの話だ。


私はこの発言の意味が分からずに、ただ「下校指導はちゃんとやりますよ」とだけ返事をした。”主任”はそれだけ確認出来たら満足だったのか、「じゃぁ、よろしくお願いしますね。お先に」と言って帰っていった。私は全然分担してくれなかったくせに「よろしくお願いします」と言われることで、神経を逆なでされた気持ちになるのだった。


この行動はその後何度もあった。言われるたびに「なんでいちいちあんなこと言うんだろう?」と、怒りの気持ちを強くしていったのだが、最終的に私はこの行動をこう分析している。


私に全ての見回りを押し付けていることが、学年以外の人にばれると(特にあきさんにばれると)いけないので、あたかも自分たちがちゃんと分担をしているかのように、職員室内ではふるまう。他の人(特にあきさん)が、「G期は、見回りをJさんだけがやっていますよ」と校長に言いつけたら、自分の残留に黄色信号がともる。だから、仕事はしたくないけど、しているように装うことだけをしたのだろう、と。


でも、私が今所属している学年の学年主任は、この状況に気づいていた。夏休みも後半に差し掛かったある日、「Jさん、お休み取れてます?いっつも俺が出勤すると必ずJさんいるし、しかも見回りも1人でやってない?なんで分担しないの?」と声をかけてきたことがあった。私が「あぁ、子育て世代の人はやっぱり家のことで忙しいでしょうから、いいんですよ。私、家も近いし」と言うようなことを言うと、「いや、それは関係ないでしょう?学年なんだからさ、分担してやるべきだと思うよ。手伝えることがあったら言ってよ」と言ってくれた。


学年外のTKさんといい、この学年主任といい、こうやって私の負担を気遣ってくれる人はいたのだが、私にはまだ怖くてこういう人たちに聞けないことがある。それは


その私の負担は、”主任”のせいで増しているのだということが分かっているか?


ということだ。気づいてくれているように感じる時もある。しかし、あの正義感の強いTKさんなら、本当に気づいていれば”主任”に話してくれているように思う。そう考えると、『誰もわかってくれない』と言う気持ちが強くなるのだ。


残念ながら、この”主任”の行動を謎だと思ってくれる人は、いまだにいないようだ。ただ、これとは別の謎行動を共有してくれた人は1人いた。私が以前、KTさんだけは”主任”の愚痴をこぼせる相手かもしれないとどこかに書いた理由の1つはこれだ。