「準備はばっちりです。みんなも揃いました。
 後は先生と詩音くんが来ればOKです!」

吉田看護師からの報告メールで、そのメールには画像が添付されていた。

クリスマス仕様のサンタの乗った白い大きなホールケーキと
ハッピーバースデーの文字が書かれたチョコのプレートが乗った
フルーツがたくさん乗ったタルトらしきケーキ。
そしてその後ろでプレゼントを抱えた皆の姿が映っている。


プレゼントにケーキ。

多分初めて祝われる誕生日。


きっと詩音は驚き、極上の笑顔で喜んでくれるだろう。

こんなにも先の未来を楽しみに思った経験はなかっただろうと
いい歳をして心を弾ませている自分が滑稽にも思えるが、こんな自分も悪くないと思っているのも否めない。
 

私も詩音への誕生日プレゼントは勿論用意しているが
クリスマスプレゼントも結局は用意した。

詩音はクリスマスプレゼントはいらないと言ったが、私からではなくサンタからの贈り物だと枕元に置いておくつもりだ。

何を贈れば喜ぶだろうか。

これまで誰かにプレゼントなど贈ったことのない私は、散々頭を悩まし
師長や佐倉くん、岩見にまで相談して、それでも決められなかったプレゼントは
結局以前何かのついでに買った物と同じ色鉛筆。

そして15歳の男の子にはどうかとも思ったが、大きなテディベアを買ってしまった。
これは明らかに衝動買いだったが。

詩音にとても似合うと思った。


朝、プレゼントを見つけた時、詩音はどんな顔をするのだろう。

喜ぶだろうか。

驚くだろうか。


キラキラと光る幾つもの電飾の光を、尊いものでも眺めるように見つめる詩音の横顔に、次はどんな嬉しい笑顔が浮かぶのだろうかと考えながら歩き、詩音のそばまで近付いたとき、そろそろ行くぞと声を掛けようとした。



その時。


「三上……!」


背後から誰かに呼ばれた気がして足を止め振り返る。

その先、人混みから私の方を見ている男がいることに気付き、思わず視線を向けた瞬間その仄暗い目と目が合った。

その男の顔を見て、愕然とする。

「本田さん……?」



痩せて歪んだ顔。

記憶にあるその風貌よりもずっと老いて見えたが、間違いなくあの男だった。