「ここで魔法使いを待ってた時。
 もしも魔法使いが本当に助けに来てくれたら
 ずっと、ずーっと、いい子でいようって思ってました。
 それは、魔法使いとずっと、ずーっと一緒にいたかったからです」


「先生は、自分は魔法使いじゃないって僕に言いました。 
 先生はお医者さんで、魔法使いじゃないし、魔法なんて使えないって言うけど、
 僕にとって先生は、出会った時からずっと魔法使いでした」


「先生は僕にたくさん魔法をかけてくれました。
 痛くなくなる魔法。
 お腹がいっぱいになる魔法。
 字が読めるようになる魔法。
 寂しくならない魔法。
 幸せになる魔法。
 それから、それから、うんとたくさんの魔法をかけてくれました。
 そんなの魔法じゃないって先生は言うかもしれないけど、
 僕にとって、先生のくれたもの全部が魔法みたいでした」

ゆっくりとした詩音の心のこもった言葉を聞きながら、
何度否定しても私を魔法使いだと信じて疑わなかったのは、
詩音にとっては私との暮らしの中にあるごく普通の事ですら
特別なものだったからなのかと、今になって気付かされる。


詩音が本当に欲しかったのは、必要としていたのは
あの絵本の中の魔法使いが使う魔法ではなく
ただの平凡な家族だったのだと、
私が望むものと同じだったのだと、安心すると共に
これまでどこか持てなかった自信が沸いて来るのを感じた。



「先生は、僕の魔法使いです。
 これからもずっと、僕だけの魔法使いでいてください」」
 
月明りに照らされた詩音の頬に光るものを見て
不覚にも目の奥が熱くなる。


そしてその熱は目から喉、胸へを徐々に広がっていく。


出会った頃と同じ、真っ直ぐに私だけを見つめ答えを待つ詩音に、
気を付けなければ上擦ってしまいそうな声を振り絞り
何とか「ああ」とだけ答えた。


 

私は今、初めて自分を誇りに思う。

大切な命を救う術を持っている自分を。

この世で一番愛しくて、大切な命を救えた自分を。

そして詩音に出会い、詩音と共に生きることを選んだ自分を。



私は魔法使いではない。



それは変わらず譲る気はないが
詩音が思う魔法使いに少しでも近付ける日が来ればいいと私は願っている。




これから先、共に生きて行く時間の中で。







                    ぼくのまほうつかい



                            Fin


*****

完結までめっさ長い時間がかかりましたが、最後まで読んで下さりありがとうございました\(^o^)/

三上先生と詩音のお話はバッドエンドがお約束だったのですが、長い時間この二人の物語を書いていくうちに、「ぼくのまほうつかい」に限ってはハッピーエンドの方がしっくりくるのではないだろうかと思い始めこのような結末になりました\(^o^)/

(下書きでは思いっきりバッドエンドでしたww)

 

「ぼくのまほうつかい」はちべた店長さんにコミカライズしていただいたおかげで、たくさんの読者様の目に触れることとなり、私自身思ってもみなかった展開を迎えることができました。

下手でも自己満足でも続けていれば何か形になって残るんだなあ、と

今日まで変態妄想を続けてきてヨカッター\(^o^)/と思いました。

 

最後まで読んで下さった皆さま、店長さん、ホンマにありがとうございます\(^o^)/愛してます♡

 

エブリスタの方で、稜太と詩音が再会する話(特に何も事件的なものは起こらないほのぼの系の話です)ぽつぽつ連載中です。

あちらで完結したらまたこちらに転載しますね☆