娘(高1)息子(中2)2児の母です。

習い事をきっかけに息子が小6で『PTSD』

診断。その後、二次障害で『強迫性障害』

発症。息子、小6秋から不登校に。

続いて娘も中3夏休み明けから

不登校になり、

2024年4月から通信制高校へ入学。



習い事のはじまり〜今までの

日常で辛かった事、子供たちとの関わりを

お話させていただいています。


子供たちがまた、心から笑って

 過ごせる日を願う母の日記です。


前回のお話

はじまりの続き その25『環境が変わったのに』



1番最初のお話

はじまり『あの頃は楽しかった』



 息子、小学6年生11月。



 息子には大きな目標があり、

 その目標に向かって、

 ひたすら頑張り続けてきた。


 その目標は

 『日本ジュニア強化選手になること』

 だった。



 そのためには

 全国大会で上位になる事が

 必要だった。


 小学4年生から全国大会に

 出場してきた息子も

 6年生になり、

 小学生として最後の全国大会では

 優勝候補の1人となっていた。


 ここまでの道のりは

 決して楽とは言えなかった…。


 結果を出せば出すほど

 指導者からの暴言、圧、脅し、人格否定が

 日に日に増えていった…。

 

 間違った愛情のかけ方により、

 息子は、いつの間にか

 今日も明日も明後日も…

 毎日必ずやってくる練習に、

 指導者への恐怖心が

 練習前の自分に入り込んでこないように

 練習に向かう車内では、

 楽しむわけでもなく、

 笑うわけでもなく……

 ただ、アニメ動画の画面の一点を

 ずっと見続けていた……。

 余分な感情が入り込まないように。

 

 

 『今の僕には、

 これが必要だから。』


 

 「今日の自分を守るために

 今日も、こうする事が僕には必要なの」

 という、

 息子のそんな一言が

 切なく、苦しく感じた。



 そんな息子にも

 心の限界がきた……。



 『もう、無理…。

 先生に言われるたびに

 自分を叩いちゃう…。

 自分が悪いんだ…。

 僕は、使えない駄目な選手なんだって…。』



 日本強化選手を賭けた

 全国大会を3ヶ月後に控えていた

 大事な時期だったが

 息子が、過去の選手のように

 これ以上潰されてしまわないように

 息子と話し合い

 移籍をする事にした。



 しかし、

 移籍をする条件として、

 息子が今まで努力をして

 勝ち取った先にある

 3ヶ月後の全国大会を

 棄権する事だと言われた。


 『このクラブを去るなら

 全国大会は棄権してください。』

 『このクラブを辞めたら

 後悔しますよ。』

 『移籍をするなら大会で会っても

 僕たちに挨拶して来ないでください。

 そのクラブにいる限り、関わりたくないから。』

 『裏切り者』

 『全国大会まで、このクラブでやって、

 その後、移籍するなりしてもらっても

 構わないから。』

 


 今まで

 弱音一つも吐かず

 それでも、先生を信じて

 頑張ってきた息子に向かって

 自分たちの非を認めず、

 最後の最後まで

 息子の心は傷つけられた……。 

 


 自分たちのクラブの名で

 結果を残す事を何よりも

 優先にする先生たちだからだ…。


 自分たちの思うようにしてくれれば

 選手も親も大切にされ、

 自分たちの思う通りに行動しなければ、

 手のひらを返すように

 冷たい態度、言葉で見捨て

 ゴミのように扱われる。

 

 『これからどんな時もお母さん、

 僕たちの味方でいてくださいね。

 小学生のうちは、子供は親の言う事を

 聞きますから。

 必ず強い選手にしますから。』

 と、

 息子が小学2年生の時に

 先生から言われた言葉だった。



 親までもが先生たちに洗脳されてしまい、

 保護者はいつしか、先生たちに

 声をかけることすら

 怯えるようになり、

 先生たちに伝える文章を

 何度も練習をするお母さん、

 保護者同士で、

 こんな事を聞いても大丈夫か?

 聞き方は間違ってないか?

 確認し合うようになっていた。

 

 先生

 『お前は、1番頑張ってたじゃねーか。

 全国大会出れなくていいのか?』



 息子

 『出れなくても……いい…です……。』



 あんなに頑張ってきた息子が、

 どんな気持ちで『出れなくてもいいです』

 って言ったか…。

 

 

 

 

 移籍後も

 移籍先のクラブと息子への

 嫌がらせな仕返しがあった。



 そんな中、

 前クラブから移籍先のクラブに

 電話があった。



 『◯◯(息子)が、移籍をする条件として

 全国大会を棄権させるって言いましたけど、

 もう僕のクラブの選手ではないから

 出てもいいので。勝手にしてください!』

 と、いう内容だった。



 つまり、

 全国で名の知れている息子が

 棄権をしたら、

 自分たちが悪者になってしまう事を

 恐れたからだ。

 『移籍をする条件として棄権した』

 そんな事実を全国の先生方、協会に

 知れ渡ってしまわぬようにするための

 連絡に過ぎない

 棄権解除連絡だった…。



 移籍後の息子は、

 指導者への恐怖心という

 本来なら抱えなくてもいい感情を

 抱く事なく

 このスポーツそのものを

 心から楽しみ、

 やり甲斐を感じていた。



 2年ぶりに見た息子の笑顔だった。


 嬉しかった!




 全国大会に出てもいい事を伝えたら

 息子には迷いはなかった。



 『出てもいいの?先生たちいいって?

 何て言ってた?出たいに決まってるよ!』

 と言い、

 移籍先のクラブで

 全国大会に出場できる事を

 心から喜んでいた。



 本当にほんとに良かったね!

 今までの辛かった事が報われた

 気持ちにもなった。




 しかし……

 やっと再出発できる!

 と思っていた息子に降りかかってきたのは

 PTSDによるフラッシュバック

         だった……。



 初めの症状は、

 『何か練習をしている時に

 胸の所がぎゅぅって締め付けられるように

 苦しくなって、このまま息が出来なくなって

 しまうんじゃないかっていう位、

 苦しくなるんだよ』

 と、いう症状だった。



 今まで努力してきた事が実となり、

 今度は花が咲くように

 環境を変え、再スタートし始めたのに、

 次第に息子の症状は悪化していった…。



 全国大会に向けての練習中、

 たとえ環境が変わっても

 息子の脳にある記憶が、

 息子を苦しめ始めてしまっていたのだ。

 

 

 私は、練習中の息子を見に行った。



 そこには、

 今までと同じように

 練習をしている息子の姿があった。



 しばらく見ていると

 息子の異変に気づいた…。



 練習をしようとするのだが、

 ずっと一点を見つめ、

 見つめてる一点からパッと目をそらし、

 何かから逃げるように

 急にその場を立ち去り、

 歩きながら

 自分を落ち着かせている

 息子の姿だった……。



 練習を見に来ている私に気づき

 息子は助けを求めるように

 私に言った。




 『◯◯先生の怒鳴り声が聞こえて

 思うように練習が出来ない……』

 


 

 

 私たちが想像する以上に

 今までの過酷な練習の記憶が

 環境を変え、進み出していた息子に

 襲いかかっていたのだ……。


 そんな事ってある?

 こんなに頑張ってきて、

 やっと楽しい気持ちを取り戻してきたのに…

 やるせない気持ちでいっぱいになった……。


 そんな症状が

 翌日も続き、そのまた翌日も続いた…。

 息子が

 『せっかくクラブを変えて頑張りたいのに

 練習をしていると◯◯先生が

 怒鳴ってくるんだよ!

 お前は、いらない選手!

 お前は、使えない駄目な選手!

 失敗してんじゃねーよ!

 バカかお前は?ふざけんなー!!って

 練習をやろうって思うと先生が

 ものすごい勢いで怒鳴ってくる……。』

 と、

 泣きながら

 思い通りに出来ない自分を

 悔やんでいた…。




 『何のために移籍したんだよー!!

 このスポーツが出来ないなら

 死んだ方がマシだよー!!』

 と、

 やるせない気持ちを

 泣き叫びながら

 吐き出していた…。



 

 その翌日も練習には行ったが

 症状は変わらなかった…。


 その日から息子は、

 夜も眠れなくなってしまった。



 そして、

 練習場だけでなく家の中でも

 前クラブの先生からの暴言が

 聞こえてくるようになってしまった…。

 

 空中の一点をじっと見つめ、


『先生に殺される…』


 『すみません…』


 と言ったり、



 『ブツブツブツブツ…いいどの…

 と、

 言う息子…。



 『いいどの』

 って何なのか?…

 この頃から、1日に数回

 息子が口にするようになった言葉だった。



 何日経っても

 口にする『いいどの』とは何なのか?

 心配になり、

 息子に聞いてみた。




 息子は言った。

 『頭の中で、僕が聞くと

 誰かが大丈夫だよ。

 いいんだよ。って

 言ってて、それが偉い御殿様なんだよね。』

 


 私は、

 普通に話をしてくれている息子の事が、

 心配を超える

 言葉では言い表せない

 気持ちになった……



 『いいどの』は


 『◯◯殿』なのか?



 

 息子の頭の中で、

 先生の暴言から息子を救ってくれている

 存在があったのだ……。



 息子は言った。

 『小学4年生の時からあったんだよ。

 その時はまだ何もなくて、

 すぐ無くなったんだけどね…』


 

 私は息を呑んだ…。

 

 

 そんな前から存在していたのかという

 驚きと、

 そんな存在が出来てしまうほどの

 私の想像を超える

 辛い恐怖を味わっていたんだと

 目の前にいる息子に

 もっと早くに気づいてあげれなかなった

 罪悪感と、

 言葉では言い表せない

 恐怖と不安が

 私を襲ってきた。

 


 小学4年生といえば

 まだ、息子の隣にはエースの彼がいて

 共に全国大会に出場し、

 共に練習を頑張っていたあの頃だ。


 エースの彼は、

 クラブ1の実力があり

 全国からも注目をされるほどだったが、

 先生からの暴言、圧、人格否定により

 精神的に崩れてしまい

 この年に

 クラブを去ってしまった

 1人だった…。

 そんな彼と先生との様子を息子は、

 いつも見ていた。

 

 息子は言った。

 『僕たちが全国大会に出場するようになった

 4年生の時から先生の目つきが変わった』

 と。


 

 移籍後、

 症状が出始めた

 この頃から息子は、

 次第に、学校にも行けなくなってしまった。



 学校には行けなくなってしまったが

 全国大会に出場をし、

 個人総合優勝する思いは、

 まだ変わらず

 息子の心の中に生き続けていたため、

 習い事には毎日休みなく

 通い続けていた。



 しかし、

 症状は変わらずだった……。

 むしろ悪化する一方だった。

 


 練習のやり始めは大丈夫なのだが、

 やっていくうちに急に

 前クラブの先生の暴言が

 覆いかぶさるように

 『ちゃんとやれよ!失敗すんじゃねー!』

 『使えない選手だな、お前は!』

 『お前に教える価値すらない!』

 次から次へと

 聞こえてきてしまい、

 しまいには、

 『先生があっちの方で僕を見てる』と言い

 再出発をあれだけ喜んでいた息子から、

 練習を続ける事までもが

 奪われてしまっていた。


 学校に行けなくなってしまった息子は、

 昼間、ゆっくり時間を過ごしていたが

 急に

 『今、先生の怒鳴り声が聞こえた。』


 『誰かがドアの隙間から見てるよ。』


 『ブツブツブツブツいいどの。


 昼間、

 おばあちゃんが家にいてくれている間に

 私が急いで買い物に行っている間の20分間、

 息子からの着信は8回ほど

 買い物をする度にあった。


 電話に出ると息子が

 『ブツブツブツブツ…大丈夫だよね?


 私

 『大丈夫だよ。安心してもいいよ。』


 息子

 『分かった。』 

 

 ガチャンっ。


 この繰り返しだった。

 何かに怯えているように

 私からの

 『大丈夫だよ』を

 求めているようだった。


 

 夜になると、

 その症状は悪化した。


 布団に入り、天井を見ながら急に

 布団を顔に被せ怯えていた。


 『誰かが見てくる気がする』


 『先生が怒鳴ってくるよ!』


 『もう、練習が出来ないなら

 死んだ方がマシだ!』


 『何のために移籍したんだよ!

 練習したいのに!!』


 『………………ブツブツブツブツいいどの。

 

 毎晩、

 息子が落ち着いて眠りにつくのは

 朝方の4時くらいだった。



 ずっとこんな日々が続いた……

 



 再出発をしてからの2週間後、

 息子は、

 全国大会を棄権する

 苦渋な決断をしたのだった……。

 


 それからも

 というより、

 それからの方が更に

 息子は、苦しんだ。



 自分が出たくなく棄権したのではなく、

 長年かけて頑張り続けてきた

 小学生最後の全国大会。

 もう、来年にはない最後の大会。

 『日本ジュニア強化選手』になれる

 可能性があった大事な大会。

 この日のために頑張ってきたのに……


 本当は、出場したかった大会に

 出れなくなってしまった無念さ、悔しさに

 彼はもがき苦しんでいた。



 言葉では

 『まだ、この先には中体連があるからね。

 そこでまた、挽回すればいいよ!』

 と、前向きな言葉を口にはしていたが、

 どんどん止まる事なく悪化していく症状が

 息子の本音を語っているように感じた。



 失敗は成功へのチャンス精神を持つ息子だが、

 いつものように弱音を吐かず

 前向きに進もうとしても

 過去の記憶が

 それからも

 息子を思う通りにはさせてくれなかった。



 息子は、

 逃げ場のない空間も次第に

 恐怖を感じてしまうようになってしまった。


 車、電車など。

 

 車に乗っていると5分もしないうちに

 『息が苦しいよ…。

 早く、早く、いいから車から降りたい…。』

 と言って

 顔を手で覆い下を向いていた。

 『ブツブツブツブツ…いいどの…。』

 と、

 逃げ道のない空間にいる自分に

 言っていた…。


 テレビもそうだった。

 ドラえもんが後ろで手を組んでいるだけで、

 『手首を紐で縛られて逃げれない』

 という

 妄想をしてしまうようになってしまい、

 怯えながら

 『怖いから早くテレビ消して!!』

 と言い

 テレビすら見れなくなってしまったのだ。



 

 そんな日々を過ごしながら、

 以前から予約をしていた子供専門精神科を

 受診する日が来た。

 

  

 


最後まで読んでくださりありがとうございました。