これも変わった生徒だった。
とても頭がいいのに,何だか愛嬌のあるキャラで,いつも何かを楽しんでいるような雰囲気を持っていた。
毎回,教える度に何かしら新たな法則を見つけ出して,それが正しいかどうかを確認するのがパターンになっていた。
宿題に取り組むときにも,普通のやり方ではなく,自分独自の解き方を見つけ,授業の際に自分からそれを説明して自慢するという,本当に変な奴なので,毎回教えるのが楽しかった。
下手をすると,こちらが唸らされてしまうことだってあった。
そんなヤツなので,高校入試に関しても,対策授業で使っていたかなり難しいレベルの問題の方が楽しいらしく,毎回目を輝かせながら問題に取り組んでいたのだ。
こちらとしては,楽しいけれど,その解法が本当に正しいかどうかを考えなければいけないという手間がかかり,手のかかる授業の一つになっていた。
結局,自分の第一志望の学校にスルっと合格してしまい,中学まででイガスはやめてしまったのだが,こういうタイプの生徒の方が,間違いなく受験には強いと感じるような,そんなヤツだった。