米レミントン RLP-199-20

チャイコフスキー 提琴協奏曲ニ長調

ミシェル・オークレール(提琴)

クルト・ヴェス指揮 オーストリア交響樂團

(1950年 初出)

レミントンは最初期の「赤小レーベル時代」から音質がよい。近めの音でバランスも上。エネスコのバッハ無伴奏(PL-1-149)など「おそろしいほどの緊張感のある音」だし、このチャイコフスキー「RLP-199-20」にしても協奏曲録音として理想的な感がある。

 

演奏は即興的自主性が容易に聽きとれるもので、力感と情の濃さがよい。また、全曲を聽きをへたときに繊細さも印象にのこる不思議な魅力のあるものだ。ジャック・ティボーもオークレールの師のひとりである。 多くの提琴家が録音した名曲の數すくない名盤のひとつ、としてよいとおもふ。

 

米レミントン R-199-127

ブルッフ 提琴協奏曲ト短調、「コル・ニドライ」

ミシェル・オークレール(提琴)

ウィルヘルム・ロイブナー指揮 オーストリア交響樂團

(1952年 初出)

うへの「赤小レーベル」から當盤の「金黑」にかはるが、その最初が何番からなのかしらべてゐない。「赤小」の近めの音から、幾分とほめの感があるがバランスはよい。厚く重い盤である。のちに

の「金黑」にかはるが、これは薄く輕い盤にかはつてしまつた。音も「近さ」はきえてしまつた。

 

演奏はチャイコフスキーのときと同じで燃焼度のたかい、即興的なものを感じさせる秀演奏だ。第二章、終章がとくによい。 この盤での白眉は「コル・ニドライ」だらう。提琴で、よくぞここまで説得的結果を出せたものだ・・・とおもふ。

 

提琴といふ樂器にいのちを吹きこんだ血のかよつた演奏であり、昨今の提琴家は・・・ほとんど聽くことがないから比較はできぬが・・・

異質と化してゐないか・・・。提琴といふ楽器にどんな音をもとめてゐるのか、究極的には、昨今の提琴家はいつたい何をするために提琴といふ樂器をいぢつてゐるのか、さはつてゐるのか・・・(笑)

 

演奏表現藝術の分野は、ながい歴史を俯瞰したとき、今、下降線のさなかにないか。