日本国憲法の条文にも登場するこの熟語たち。
『指名』
『任命』
『認証』
ちゃんと区別できますか?
ざっくり簡単に言えば
- 指名=「君がやれ」と決定する。
- 任命=「(指名に基づき)君に任せた」と命じる。
- 認証=「(任命に基づき)君で良い」と認める。
たとえば日本の総理大臣は国会が「指名」します。
ではこの瞬間総理大臣になったのでしょうか?
厳密に言えば答えはNOです。
その後天皇に「任命」されることによって初めて総理大臣になるのです。
一方で、国務大臣(総理大臣以外の大臣)は、総理大臣が「任命」します。
しかし憲法では、その後に天皇による「認証」を得ることになっています。
天皇の立場は国民統合の象徴ですから政治権限はありません。
従って国会で決定した総理大臣の指名を覆すなどの拒否はできません。
しかし天皇としての権威は存在しています。だからこそ天皇が最終的に「目を通す」「確認する」といったプロセスが必要なのでしょう。
ただし、天皇が行う国事行為については「内閣の助言と承認」が必要になります。
これらを踏まえた上で、天皇の国事行為を確認してみましょう。
【日本国憲法】
第6条
①内閣総理大臣の任命
②最高裁判所長官の任命
いずれも「指名」ではないので注意。
※内閣総理大臣の指名は国会が行う
※最高裁判所長官の指名は内閣が行う
第7条
①憲法改正、法律、政令、条約の公布
②国会の召集
③衆議院の解散
④国会議員の総選挙の施行の公示
⑤国務大臣・官吏の任免および全権委任状、大使・公使の信任状の認証
⑥大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除・復権の認証
⑦栄典の授与
⑧批准書、外交文書の認証
⑨外国の公使および大使の接受
⑩儀式を行う
この中に「指名」「決定」の語句がないことを確認しましょう。
ただ生徒たちからよく質問されるのがこれ。
「衆議院の解散は内閣の仕事なのでは?」
確かに公民の教科書で衆議院の解散は「内閣の仕事」として学びますよね。
ところが日本国憲法にはどこにも
「内閣(総理大臣)が衆議院を解散できる」
ことの根拠が書かれていないのです。
解散について書いてあるのは憲法69条
「内閣不信任案が可決されたら、10日以内に衆議院が解散しなければ総辞職しなければならない」
じゃあ衆議院を解散するのは誰?
答えは憲法7条の通り、天皇なのです。
ただし天皇の国事行為は「内閣の助言と承認に基づき」行われます。
これがすなわち、内閣が衆議院を解散できる根拠となっているのです。
天皇の国事行為の全てを正確に把握する必要はないでしょう。
教科書で強調されるような部分を理解すれば大丈夫です。
しかし、指名、任命といった手続きについては正誤問題で迷ってしまうことがあります。
そこはきちんと把握しておく必要があります。