ホメーロスの「オデッセイア」は文句無く面白い | 名著のすゝめ

ホメーロスの「オデッセイア」は文句無く面白い

最古期の古代ギリシアの吟遊詩人が語り伝えた「イーリアス」


と並んで大傑作の双璧が「オデッセイア」。前者が短期間に起きた


出来事を一気呵成に、ドラマティックに描ききっているのに対し


こちらは長い年月にわたる波乱万丈の冒険物語を、トロイ戦争の英雄


オデッセイアに託して描いた一大叙事詩であります。


一種の貴種流離譚であり、奇想天外な着想も含め読者を退屈させない


一大エンターテインメント作品ですが、そのサービス精神たるや


これ以上は無いというほどの大盤振る舞い。最初にこれほどの興味尽きない


娯楽作品をものされては、このあとどの様な天才がいかなる豊かな才能を


傾け尽くしたとしても、とても勝負にはなりませんね、実際の話が。


歴史とは面白いもので、始めに最も素晴らしい完成品を示して、後の世の


進歩・発展をまるであざ笑うかのような有様。皮肉といえばこれ程の


皮肉も無いでしょう。この傑作が語られ、また文字化されて伝承されるようになってから


当時の知識階級はギリシア神話と共に、「イーリアス」と「オデッセイア」


の二作品は全員が熟知するものだった、とか。教養などと言うよりは


もっと端的に「文句無く面白い傑作」だったからに相違ありませんね、きっと。


それにしても古代ギリシア人の素晴らしさは言語に絶するものがある。


時あたかも、ヨーロッパ経済圏ではギリシアの経済的破綻が大きな問題と化し


隔世の感を強くします。文明が勃興し、繁栄し、やがて衰退に向かう。また


新しい文化・文明が芽吹き、隆盛期を誇り、また凋落する。歴史の


持つ必然でありましょうが、ちっぽけな個人の立場からすれば感慨深いものが


あり、人間の力を遥かに超えて作用している偉大なる影響力に思いを馳せざるを


得ませんが、その大きな力を古代ギリシア人たちは「神々の所業」と


見做していたわけですから、今日に生きる私たちも素直にこの奇跡の人類たちに


見習うべき点は、見習うべきなのでしょう。どうでしょうか、みなさん……。