ギター君が大阪に行く日。


「起きろー!」



…起きない。




仕方ない。


私からホテルに電話をして、チェックアウトの時間を午後2時まで伸ばそう。


追加料金4000円。




すると、電話がかかってきた。




「メイ〜起きれない。

約束する、あと2時間後に起きる。

だから、宿泊料を一泊分追加で払っちゃった。」





「え!?いくら払ったの?」





「1万2000円くらい?わかんない。

もうちょっと寝る😂」


 


「チェックアウトを伸ばすだけなら追加料金4000円で済んだのに〜。

私に言ってよ。

差額で焼肉食べ放題にいけたじゃん。」

(↑差額分の計画がセコい。)





「ごめん😂」





それから。


「起きたよ!

メイ、まずは何駅いけばいい?」




「メイ、東京駅ついたよ!

どうすればいい?」




ギター君、ガチで


東海道新幹線、

のぞみ、ひかり、こだま、


何も知らない。


「のぞみに乗れ。」



「メイ、僕の訪日外国人専用新幹線パスはのぞみが対象外だって。どうすればいい?」




「じゃあ、ひかりに乗れ。」




「メイの言った通り、富士山が見えるEに乗った。Eは山の形に似ている、よく覚えてるでしょ?」


(↑たまにどうでもいいことは、一度で覚えている。)





「あ、それ指定席。

君のはグリーン席対象外のを予約させた、それは私も覚えてる!指定席も多分、ダメだから自由席に移動しな。」


(↑私は何でも覚えているのに。)





「僕、関西でメイがいなかったらどうしよ。」





「英語版ガイドブックをAmazonで買って、大阪のホテルに送るわ。」





「いや、ガイドブックはいらない、重いから。

僕はわからないことがあったらメイに聞くよ。」





「私のことはSiriと呼べ。Sillyではなく。」





「メイ、京都だけは高級ホテルに泊まりたい!

予算は1泊5万円〜7万円。

2泊泊まりたい。」





「ホテルは私が決めるから。

また余計なことするなよ。」





「僕が泊まりたい感じのホテルわかる?」




「わかるよ、traditional なホテルでしょ。」




「こんなホテルに泊まりたい。」



「それは清水寺だ。

とにかくホテルに関しては、これ以上、余計なことをするなよ。」



 

「僕、メイがいなかったらどうなってたんだろ😂」




 

↓この会話は旅で沢山あった。



「僕、メイがいなかったらどうなってんだろ。」


 

「私のことはSiriと呼べ、Silly じゃなく。

良い子にしてろよ、私の弟!」


ガチで一日中、

「メイ、聞いて。」


「メイ、どうしよ。」


地下街で迷子になった、

スイカが改札を通らない、

ホテルの部屋番号を忘れた、

コインランドリーのやり方を教えて、

(↑コインランドリーなんて私も使ったことなく、ビデオ通話しながら指示したら、「洗剤入れ忘れた!開けろ!」と騒いだ私。ちなみに最近のコインランドリーは洗剤は自動注入される。知らんがな。)




だったのだが、ある日。






「起きろ!

今日は京都観光です!」


(↑ギター君の関西旅行のスケジュール、私が牛耳っていた。

ギター君には任せられないことが判明。

…ええ、ギター君のひとり旅ですけど、なにか?)





「メイ、今日は、ニンテンドーランドに行きたい!」





「ニンテンドーショップ

東京に戻ったら連れてってやる。」





「行きたい。」 





「ギター君は子供だな。」


むしろアメリカから来た甥っ子を面倒みている気分になった笑い泣き




その日はギター君、


おとなしかった。


毎分メールしてきた男が。




ランチに

「アメリカ料理店に入ったのに、こんなのだった😑

そういやこれ、アメリカの高校の給食に似てるな😂」


とメッセージがきたのみ。




まさか東京で一緒にいる時より、離れてギター君ひとりで関西にいる時の方が手がかかると思わなかったけど笑い泣き



すると、3時間ほどおとなしかったギター君が



「メイ、助けて。

タクシーに乗ったら、運転手さん、何も答えてくれなくて、


GPSで見たら、大周りされている。」





「どこからどこまで乗るの?」



「ユニバーサルスタジオから、

僕のホテル。」



タクシー料金検索をしてみたら、

3900円前後。



しかしGPSで見る限り、まだ3分の1ほどの距離で確かに大周りしている。


タクシー料金はすでに3000円超え。





「運転手さんに電話変わって。」





「いや、日本語で『すみません』と言っても、無視されている。」





「あ!じゃあ運転手さんの顔写真を写メして。」






運転手さんの顔写真の下にはタクシー会社の名前。



私はタクシー会社に電話をした。


わたくしどもの大事なお客様が今、御社のタクシーに乗っておられるのですが、」





ギター君を、

会社の要人みたいな言い方で、

クレームを言った。




タクシー会社の方は、

「ああ、申し訳ございません!

今、すぐ運転手に電話しますわ!」




それから。


「大変申し訳ございませんでした、

運転手にメーターは止めさせました。

きちんと最後までお送りします。」






しかししばらくしてギター君はまた、


「メイ、助けて。

ホテルの前に着いたのに、下ろしてくれない。」





「運転手さんに電話変わって。」





「お客さん、5000円札しか持っておらず、

お釣りないんですわ。」





「じゃあどうすれば良いですか?」





「コンビニの前に行きますから、何か買ってください。」





「メイ、もういいよ。

僕、お釣りいらない。

これは『チップくれ』って意味でしょ。」





「いや、チップは日本ではいらないよ。」





それなのに、


「コンビニが見つからない。」


と言いながら、どんどんホテルから離れるタクシー。




「すみません、もう下ろしてください。


わたくしどもの大事なお客様なんです、

このままではシンポジウムに遅れます。


◯◯ホテルに宿泊されていますから、

お釣りの1700円をお持ちになって再度、お訪ねください。」





会社の要人が、

Tシャツ来て、

タトゥーあって、

ユニバーサルスタジオから一人で出てきて、

なんばのビジネスホテルから、

シンポジウムに行くか?


と思ったけど、



その設定を押し通した。






そしてようやくタクシーから解放されたアメリカ君。


「僕、5000円は両替して待ってるよ。」




 


「いや、運転手さんに1700円を持ってきてください、と言ったから大丈夫。


…そういえば、私、運転手さんにうっかり部屋番号を言うの忘れたな、ギター君の苗字も。

本当にわざとじゃないけど。


…っていうか、聞いてこなかった運転手さんも悪いよね。


多分、いくらビジネスホテルでも、

『ここに泊まっている白人さんにタクシー料金払ってもらわなあかんのですわ』では、フロントも対応はしないだろうな。


ちょっとかわいそうたけど笑い泣き







「もう大丈夫だよ😊


それよりも、昨夜、70歳くらいのおじいちゃんの友達ができた!


寝る前に一服してたら、

ホテルの掃除係のおじいちゃんがゴミ集めをしていて、 

僕がお手伝いをしたんだ。


『え?どうして手伝ってくれるの?』と言われて、そこから1〜2時間も話したよ。


おじいちゃんは英語が堪能で、

アメリカの政治に興味があるんだ。   


メールアドレスも教えてもらったよ!」



(↑ギター君、私にはタバコはコロナ前にやめたと言ってやがったのに笑い泣き





 

「良かったね。

だから言ったじゃん、

日本人はギター君のことが好きだよ。」





「アメリカ人は、みんな他人を手伝うよ。

州によって違うかもしれないけど。」






「特にアメリカ南部の人は、

あったかくて優しいからね。」

  





アメリカ南部の人は、

人懐っこくて優しい。


「サザン・ホスピタリティ」

(Southern hospitality)と呼ばれています。


南部の温暖で晴天が多い気候と、

のんびりした田舎と海の町、

またヒスパニック系も多く、ラテンで明るく親切な人が多い。







「タクシー運転手さんは基本良い人が多いけど、ノルマとかの関係で、ああいう人もいるんだね。

確かに外国人なら、騙してもバレないと思ったんだね。

私も残念だ。かわいそうに。



元気だしな!


…ところで今日、ニンテンドー・ショップじゃなくて、

ユニバーサルスタジオに行ったの?」






「ニンテンドー・ランドだよ、ユニバーサルスタジオの中にある。」



 


「ああ、マリオのとこか!

ニンテンドー・ランドって、ユニバーサルスタジオのことだったのね。


ギター君の『日本でやりたいことリスト』の中に、『秋葉原で古いゲームを探したい』とあったから、その一環かと。」




※正式名称は、「ニンテンドー・ワールド」でした。

カタカナを読み間違えたまま会話をする中年はいるけど、英語圏にもスペルを読み間違えたまま会話をし続ける中年はここに2人いました。

 




「僕、今日は一日、メイに頼らないでおこうと思ったんだ。

ユニバーサルスタジオなら、アメリカの遊園地だし、メイに頼ることなく頑張れると思ったのに。

でも結局、電車に乗れなくて、タクシーに乗ったから、メイに迷惑かけたね。」





「私、迷惑してないよ?


多分、私は世話好きなんだと再認識した。

あとは私自身がケチだから、

むしろギター君が条件の悪いホテルに高額を払ったり、無駄にタクシーに乗るのが、もったいなくて、


それなら私がやりたいんだよね。」






「ありがとう。」






「ところでニンテンドー・ランドは楽しかった?」






「それがさ…スタッフのお姉さんに言われてアプリを登録しなきゃいけなかったみたいだけど、

僕のiPhone の国コードがアメリカになっていて、Apple Storeでダウンロードできなかったのか、


ユニバーサル・スタジオには入れたけど、

目的のニンテンドー・ランドには入れなかった。


残念だけど、

またニンテンドー・ランドに行くために、日本に戻ってくるよ☺️」






「え😭そうなの?

私もユニバーサル・スタジオには詳しくなくて。」






「…と思ったら、

僕、アプリは必要なかったみたい!

チケット持ってた!」





「Oh no!

かわいそう!😭」





「大丈夫だよ😂

僕の日本語の理解力が悪いんだから。」






いつもギター君、

毎分ごとにメールや電話をしてくるのに。


さんざんだったね。





でもタクシー運転手さんの代わりに

ホテルの掃除係の優しいおじいちゃんの友達ができたから良し、


ユニバーサル・スタジオのスーパーマリオは、また日本に戻る目標にするから良しなんだって。