私の地元のショッピングモールの近くの公園で、小さな夏祭りをやっていた。



全く有名ではない、地元民しかいない小さな夏祭り。

  


「メイ、寄ってみたい!」




そうギター君が言うので、

そこで2人でカキ氷を食べ、

日本庭園を歩いて、

小さな動物エリアで、私たちの大好きな動物をさわった。




そしてギター君はお腹が空いて、屋台のご飯を食べたいと言い出した。




「浅草でおいしいものを食べなくてもいいの?」




「この屋台の食べ物がおいしそうだ。

すべて初めて見る。」

 



屋台の食べ物を買って、芝生の木陰エリアへ。





そこでは水遊びをする子供が沢山いた。



ギター君はそこで寝転んだ。




「今日はもう浅草に行く気ないでしょ?」




「僕はこの公園が好きだ。

小さな夏祭りも、動物も、日本庭園も、子供たちの水遊びも、落ち着く。」





「せっかく日本に来たのに、まだ観光地は東京タワーにしか行ってないよ。

ずっとこのガイドブックにも載っていない下町に留まっているね。」





「え?

僕は日本を楽しんでいるよ。

ガイドブックに載っている場所なんて、旅行者がさんざんネットにアップして、それを見ればいいじゃん。

ガイドブックに載っていない場所にいるなんて最高だ。

メイのおかげで、ガイドブックに載っていない素敵な街で過ごせている。


その国の本当に素敵な街は、家族が暮らすファミリーエリアだよ。」






「そうか、そんな考えもあるのか…。

私は海外旅行に行ったら、必ず観光地をメインに周る。

あ、でも確かに思い出に残っているのは、

エジプトのファミリーのお家で、エジプト人のお母さんと料理を作ったり、

イスラエル旅行の最終日に、イスラエル人とパレスチナ人と、ジープでパレスチナ自治区の名もなき街を走ったことかな。

夕日が綺麗で、思い出したら鳥肌が立つほど忘れられない。」



 



「ほら、そうでしょ。


ガイドブックに載っている場所は観光地化されて、外国人しかいないし、すべてが外国人化されている。


メイも僕の地元に来てほしい。

僕はメイをガイドブックに載っているつまらない観光地には連れて行かないよ。  


僕の実家のゲストルームは、専用バスルームもあるから、快適だ。


地元民しか知らない僕のお気に入りの川で、ウォーターアクティビティをしよう。


僕の実家には、大きなプールがあるから、僕のママとバーベキューをしよう。


僕の親友はでっかいレイクハウスを所有していて、ボートも持っているから、釣りをしよう。」




アメリカのレイクハウス、いいな。


日本って働いても働いても、こんな暮らしはできなくて、何が先進国だ。







それにしても、ギター君よ、

川、プール、湖…

水ばっかりやん笑い泣き



さすがアメリカ南部の休日。


  





「ありがとう、楽しみだよ。」



  


「ねえ、メイ、来る気ないでしょ?

でも少しは前向きに考えてよ。


僕の実家に泊まるんだから、必要なのは飛行機代だけだよ。

僕が車でどこにでも連れて行くし。


あ、もし砂漠に行きたければ、7時間で着くよ。

普通の人だと10時間かかるけど、

僕だと7時間で着くね。」


(↑こういうゆるい運転自慢は、アメリカ南部、特にテキサス人の特徴。)




※ちなみにテキサスは、

最高制限速度が世界で2番目に高い。






テキサス州の最高制限速度は…










 



85


↑え?


85キロ?


大したことなくね?




いいえ、

85マイル




キロに換算すると、


約140キロ






そしてアメリカ人、

最高制限速度をガチで、

最低制限速度と混同している。



Welcome to America 🇺🇸 笑い泣き





「メイ、

『二度とアメリカなんか行くか』

なんて思ってない?」





「そんなことないよ。

私はいつかグランド・キャニオンとモニュメント・バレーには戻りたいと思っている。

あとニューオーリンズも。」





「だから、そんな典型的な観光地より、絶対に僕の地元の方が楽しいから。

僕を信じて。」





アメリカ南部…

住んでたんだけどね。




ギター君とすっかり話しこんでしまった公園で、子供の親たちが芝生の木陰エリアで、ご飯を食べてピクニックをしていたり、ママ友同士でおしゃべりしたり、パパは寝転がって居眠りをしていた。



「すごいよね、子供たちが親から離れて自由に遊べて、危険がない。


アメリカのお祭りだと、見ず知らずの人があふれている場所はとても危険だから、子供と絶対に手が離せない。


公園もギャングの縄張り争いで、危なくて遊ばせられない。



こんなに沢山、子供や親が恐れることなく、過ごせるなんて、素晴らしい。」








「確かにね。




私がアメリカにいた頃、



私の友達の息子は殺された。



6歳だった。



小学生のお兄ちゃん、

お姉ちゃんの目の前で。







どこで殺されたのかわかる?


…自宅の庭だよ。




公園は、ギャングやドラッグが危険で遊ばせられないから、




安全な、

フェンスで囲まれた自宅の庭に

遊具を買って、遊ばせていたのに。






南部の米軍基地の街で、


中流階級の住む、

危険ではないエリアに住んでいたのにね。







多分、ギャングの流れ弾で死んだ。




でもよくわからないんだ、



犯人は捕まっていないからね。


大してニュースにもならなかったよ。」











「悲しいことに、僕には驚きがない。

なぜニュースにならないか、

それは僕の地元でもよくある話だ。


僕の友人も何人も銃やドラッグで死んだからね。


僕の実家は、中流より上の準・富裕層エリアだったけど、

それでも同級生は沢山、銃とドラッグで死んだ。


メイに送った、

僕の高校時代の写真、

あれに写っている友達は数人、もう銃とドラッグで死んだ。



子供が16歳になる前に

銃とドラッグで死ぬエリアなんてザラだ。」






だからね、

もうアメリカなんか行きたくないんだよ。


アメリカの楽しい思い出は、

全部、雲がかかっている。





でもそれはギター君には言わない。


大好きなギター君の

大事な街だから。


 




それからギター君は、

「子供たちが入っている、水遊び場、僕も入ったら変かな?

暑いし、水が気持ちよさそうだから入ってみたい。」





「変じゃないよ、お父さんたちも入ってるし。」




ギター君はショートパンツ、

私はクロップド・パンツだったので、足だけ少し水に入ったが、それでもやはり服は思った以上に濡れた。


でもとても暑い日だったので、気持ちが良かった。




ギター君は、

「ああ、今日はとても楽しい。

こんな穏やかな街で、銃やドラッグの恐怖がなく、家族が持てたら最高なんだろうな。」

と笑った。