それから私は、アルゼンチン君とビデオ通話をして寝落ちするようになってしまった。


アルゼンチン君の声が優しい。


私の冬休みは、アルゼンチン君の夏休みにあたる。



会話の途中で、私が寝落ちすると、

しばらくしてアルゼンチン君の優しい

「おやすみ、メイ。」

っていう声が聞こえる。




ある日、私はまた会話の途中で、ウトウトをし始めた。


すると、アルゼンチン君の声が聞こえた。





「メイ。」





「なに?」





「ひとつ聞いてもいいかな?」





「『寂しくないの?』でしょ?」





「え?」





「私が寝落ちするのって、寂しそう?」





「いや、メイ、僕が聞きたいのはね、

大事な話だよ。

僕は急いでないけど…

でもメイを僕の彼女にしたい。」





「…。」




ストレートできたな、

アルゼンチン人。


シャイな男性だと思っていたけど、

やはりイタリア系、やはり南米。




「僕はメイが好きだよ。」





「…。」






「…どうしよう、メイが黙ってしまった。」






「わかってる。(I know.)」


 




「メイも僕が好きだよね?

メイは僕の声が聞こえないと、眠れないんだよね。」





「わかってる。(I know.)」






「メイ…何でさっきから『I know』なの?笑い泣き






「わかってる。I know.」






「また『I know』しか言ってくれないね。」





そこでアルゼンチン君は、


とても優しい顔で笑った。



告白をかわされて、

そこで優しく笑うアルゼンチン君の余裕さが

素敵だった。




「前にも聞いたけど、

アルゼンチン君は怒ったり

イライラしたりしない?」




「しないよ。

特にメイにはね。

メイはかわいいから。」




それから急に日本語で、

「メイ、大好きだよ。

おやすみ。」


そして笑顔で、彼は電話を切った。



なめていた。


坂口憲二のような男性らしい私のタイプではない男性を。