ヨルダン君と初めてのビデオ通話が接続された。





…ビックリした。

本当にビックリした!





写真よりも全然カッコいい。


そんなことってある?

 


言語交換サイトのプロフィール写真の彼は、

マリンウェアを着ていて、筋肉質で背が高く、

若干遠目のアングルから笑顔で写っている。


遠目の笑顔の写真でも、充分イケメンとはわかるが、

実物の方がここまでカッコいいとは。



目の前の彼は、

濃すぎない、美しい彫刻のような目をして、

鼻も高いアラブ人。


眉毛は繋がっていない。




写真より実物の方が、

更に「アルマゲドン」のベン・アフレックをアラビア寄りにした感じ。


「アルマゲドン」のベン・アフレックは本当にカッコよかったな。




私は、アラビア語で挨拶をした。


ヨルダン君は、私のアラビア語に優しく微笑んで、彼もアラビア語で、私が聞き取りやすいように、ゆっくり答えてくれた。


時々フフッと笑って、

「アクセントがかわいい」と言いながら、私のアラビア語のアクセントを優しく直してくれた。



そしてアラビア語で、

「あなたはとても美しい。

本当だよ、とても美しい。」

と言ってくれた。


彼がアラブ人であることは確定した。

このルックスなら詐欺師でもいい。


ちなみに私のアラビア語は、会話の開始2分で限界に達する為、英語に移行した。



「アラビア語は書ける?」

と言われ、

私はペンで書こうとしたら、



ヨルダン君は、

「あれ、その君のペンに描かれている猫、ここにもあるよ!

ちょっと待ってね。」

と立ち上がり、すぐに戻ってきて、ピンクのハローキティのコップを見せてきた。



…あやしい。

何でピンクのハローキティのコップを持っているんだ。ピンクですよ?



と、思いながらも、

「その猫、日本のキャラクターだよ。」

と伝えたら、




「本当に?

…でも、ここにメイドイン・チャイナと書いてあるよ!

こっちのはニセモノの方だね!」

と、カップの裏にある中国製の文字を私に見せてきて、2人で笑った。




そして、

「今日は遅れてごめんね。

家でネットに接続しようとしたら繋がらなくて、急いでオフィスに来たんだよ。」

と謝ってくれた。




「そこがあなたのオフィスなの?」

と聞いたら、



「見る?」

と立ち上がり、ラップトップを持ち上げて、歩きながら部屋全体を見せて説明をしてくれた。


ヨーロッパ風のオシャレなインテリアのオフィスだった。


オフィスというより、

比較的、裕福な家のリビングをオフィスに改造しているという感じがした。




私はエジプトで、エジプト人のエリート層の友人が数人いたが、彼らのオフィスはいわゆるアラビア風だった。

ヨルダン君のオフィスは、インテリアもヨーロッパ風でスタイリッシュだ。



「右側に映っているものは何?」

と聞くと、


「ん?どれ?これ?」

とカメラを動かしながらそれを手に取り、答えてくれる。



「僕も日本語で返したいな。

まずはこれは覚えたよ。」

とわざわざ立ち上がって、お辞儀をしてくれた。



これは絶対にフェイク動画ではない。


表情や動きも、とってもクリアで、正真正銘の彼だ。



「君にアラビア語を教えた代わりに、

日本語で、『君は美しい』を教えて。

今日から僕、毎日この言葉が必要になるから。」


かなりの女たらしだが、イケメンだから気分が良い。


それにナンパなイタリア人と違い、ヨルダンに近い、超保守派ではないエジプト人は基本、外国人女性にはナンパな会話をするものの、自国のイスラム教徒の女性とは会話どころか目を合わせることすらできない為、

女遊びをしたことがない、または本当に女遊びをしようとまでは思っていない無害の女たらしで、意外と安全だったりする。


エジプト人もイタリア男並みに外国人女性に対してグイグイ来るが、本当に手を出そうとしてくる人はいなかった。


だからヨルダン人もそうなのだろう。




私は、日本語で「いただきます」「ごちそうさま」を教えた。

素晴らしい意味だと思うから。




すると咄嗟に彼も言った。

「ビックリした。

ムスリムも『いただきます』と『ごちそうさま』の意味のある言語を使うよ!」


↑↑実は私はそれも知っていて話を振ったので、やはり彼はイスラム教徒だ。




そして彼は、日本語で「いただきます」と言って何故かお辞儀をした。

それがかわいくて、つい日本語で「かわいい」と笑ったら、


「今、何て言ったの?」と聞かれた。

So cute!と教えてあげたら、




「それそれ、その言葉を知りたかった。」 

とペンを取り、




「さすがにペンまではハローキティじゃないけどね(笑)」

と言って黒のペンを見せて笑い、

アラビア語特有の、右から左に文字を書いていた。



そしてこちらを向き、日本語で、

「メイ、カワイイ」

と笑顔で言ってくれた。




そこから楽しく会話が弾み、気づいたらZoomの制限時間40分が近づいていた。



彼は、

「40分じゃ足りないよ。

君と毎日話したい。

スナップチャットをダウンロードしてくれる?」と。



私は「明日までにしとくね」と伝えた。



Zoom通話が切れてしまった後も、彼から、

「もう寝ちゃうの?」

「明日も話せる?」

「お願い、スナップチャットをダウンロードして。Zoomだと足りないよ。」

とメッセージが届いた。



素敵な人だ。

私のタイプのイケメンだし、筋肉質だし、何よりも会話がとても楽しい。


 


ちなみに彼のZoomのアカウントの写真は、

彼のビジネススーツ姿の写真であり、


エジプト人の友達の証明写真のアングルが正面ではなく斜め横顔だったように、

彼の写真のアングルも斜め横顔だった。


そういえば以前観たパレスチナの映画でも、証明写真を斜め横から撮影していた。


あの証明写真のアングルは、アラブ圏の常識なのかもしれない。


Zoomのアカウントの写真の彼は、おそらく少し前に撮られたビジネス用の証明写真のもので、今より若干、若く見えるが完全に彼だった。


またZoomアカウントの氏名は、最初に彼が教えてくれた氏名と一致していた。



本当にビジネス用の彼のZoomアカウントのようだ。




本当に素敵な人だな。

そう思って寝た。




…しかし、ところどころに、少〜しだけ違和感があることに、私は後ほど少しずつ気づいた。



そして「アルマゲドン」から20年後、

二日酔いの競走馬みたいになってしまった現在のベン・アフレック。残念だ。