昔のアナログレコードの時代は、収録できる時間が短かったから、売り出す目的で曲を作るには3分ぐらいに収めるしかなかったからで、
これが今もメジャーで売り出すための曲の長さとして基準になっていて、
A面B面っていうのもアナログレコードの名残で、
アルバムっていうのは本当に昔、LPより前のSPを蓄音機で再生する時代ですね、この時は曲をいっぱい入れようと思ったら、本当にアルバムみたいに何枚組とか平気でなったので、その名残。

ということを最近やっと知った。

録音技術が発明される前にも庶民の間で歌われて聴かれてきた音楽はどんな文化圏にもあったはずだけど、それぞれはどれぐらいの長さだったんだろう…


ところで、概して長い音楽というと、アート系、というかクラシックが思いつくでしょうけど、別にアートを追求した結果長くなるものもあるだけの話で、この分類はざっくりしすぎなので。
目的が違えば長さも変わるでしょ。環境音楽なんて、ダラダラと変化のない音が続くことに意味があるわけで、作る目的が違うのだから当然。

アート系で長い曲というと、実用性を無視したものならば、
エリック・サティが、かなりの鬱旋律に更に840回の繰り返しを指定して18時間耐久させたり、
ジョン・ケージが、一音をできるだけ引き伸ばして600年以上かかって演奏させる曲を作ってたりもう何でもありなわけで、
そりゃ楽譜に「このフレーズを300年間続ける」「1000万回続ける」て書けばもうそういう曲になっちゃうわけで、キリがないのです。

それでもそういう極端なのは除いて実用性のある、人間が演奏可能なものだけに絞っても、近現代では数時間の曲なんて平気で作られるようになってきてますからね。


しかし!こんなポストモダンな時代になってさえ、未だに「冗長な曲」を書く人の代表格としてあげられる歴史上の作曲家は

18世紀生まれのあの
フランツ・シューベルト(1797-1828)
なんですわ…

2分ぐらいで終わる歌曲やピアノ小品などを得意として、31歳で死んじゃったのにえげつなく多作で、そういう短い曲が山ほどあるのに、

この人が大作に挑戦するとだいたい残念なことになります。

彼はベートーヴェンに憧れていたので、とにかく理論的にカッチリした壮大な曲を作ってみたかったのです。
それで、一応は交響曲とかピアノソナタとかも結構作っちゃってるけど、残念ながら殆どの曲はとてもぎこちない。

やはり元々歌の人なので、どうしても楽器でメロディを長々と奏でてしまうようで、その結果全体の構成はかなり悪いし、
理論的に作ろうとしても、いかにもやりましたみたいなわざとらしいものばかりで、しかも無駄に長い。

最後に作ったピアノソナタは第一楽章だけで20分を超える長さなのに、それ以降の楽章は数分で終わるというアンバランスさがひどいし、
最後の交響曲は、シューマンが発見したことで知られるが、演奏時間1時間ほどあり、シューマン自身が「天国的な長さ」と評したことは有名。

皮肉にも彼のこの手の作品では「未完成」と呼ばれているあの書きかけの断片が一番評価が高いのです。

「冗長」とか「無駄に長い」というのはまさにこの人の曲のようなものを言うのです。
べつに長くても必然性があって、どこも省けないような完成度の高いものは、それは長大な素晴らしい作品ということになります。


長い曲というのは、時間が長いか云々ではなく、内容がそれに見合ってるか見合ってないかということで判断されるべきであるのです。

つまりは
「無駄がない」
ということがかなり重要な要素なのです。

たとえば、
ミュージカル一本は約90分の尺で書かれることが慣例となっています。
私が過去に関わった演出さんは、全部通した時点で90分を超えそうだと判断したら容赦なくセリフやシーンをカットしまくってました。脚本を自分で書いたかどうかも関係ありません。鬼のように自分の作品を削っていきました。

その影響は作曲家にまで及び、せっかくできてたのにカット版を書き直しさせられたり、ひどい時は曲がシーンごとまるまるカットされます。_| ̄|○ il||li

同じような意味のセリフが続いてたら、とにかくバンバン切ってました。

ミュージカルは、とにかく90分の尺ギリギリで切り詰めることで、あの無駄のないスピード感のある表現が生まれるわけなのです。


私の経験則では、
「足りないところを書き足す」よりも
「無駄なところを削る」方が圧倒的にできる作品の質は高いと思います。

しかし私はというと、書いてるうちにどんどんあれもやりたいこれもやりたいとかなっていって、歌1曲で8分9分とどんどん長くなっていく一方で、別に内容が伴っていて必然性があればよいのですが、(「異物」は書いてから書き加えたのですが、あれは足すことで物語性や構成がよりカッチリしました。)!

ただ、「ダラダラと長い」「いらないことをしている」のではと思うと、どうしても「これではダメだ…」と思ってしまいます。。
これを逆の方向にいけないものかと思います

全部書いた後に、
これいらないこれもいらない!てどんどん削って、結果ちょうどいい尺とバランスの曲ができる、みたいな。こういうのが理想。



自分で書いた音を自分で捨てる勇気!

これがひつよう。

これが身につけばもう一皮剥けると思うのに…