彼の温度。
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精神不安定かも。




12月8日に退院してからずっと精神不安定な感じ。


理由は1つ。

赤ちゃん。








いろいろ考えてしまう。

『例えば?』


平ちゃんに聞かれた。






うまく答えられない。




いっぱいありすぎるし…本当に細かいこととかで…どうしてもうまく言えない。







それに出産とかって、やっぱり男と女じゃ気持ちが違う。





理解しあえない難しい部分だよ。














平ちゃんのことが大好きなんだよ。

好きだから辛いのかもしれない。

すっごく信頼してる。





でも……
時々思う。


同情・責任


そんな感情で平ちゃんはめぐといるんじゃないかって。



平ちゃんは違う。

そんなことない。

ちゃんと好きでいてくれてる。








1人になると怖くなる。

不安になって苦しくて辛くて、どうしたらいいのかわからなくなる。


つまんないことで嫉妬したり。

平ちゃんがバイトに行ってる間が一番しんどい。






ワガママ言ったり強がってみたり。





そんなことして平ちゃんを困らせてる自分は大っ嫌い。

だからさらに落ち込む。



急に涙が出てきて止まらなくなったり。












平ちゃん…………

もう病院行きたくないの。
だって……辛いんだもん。
めぐは強くない。
もっと平気だと思ってたけどダメだった。

病院に行くと幸せそうにお腹を撫でる妊婦さんがいる。
仲良さそうにするカップルがいる。
同じように中絶希望をして泣いてる女の人がいる。
見ると………全てがめぐには辛い。



そして………

あの子を思い出す。












1人で過ごす夜は特に辛い。

平ちゃんがバイトしてる時間。



不安な気持ち、切ない気持ち、辛い気持ちに負ける。







ボロボロになって振られても良いって思ったりもする。


平ちゃんはめぐを幸せにしてくれる。

けど、めぐは平ちゃんを幸せにできない気がする。








いっぱいいっぱい考えるの。

今すごく苦しい。

ごめんね。平ちゃん。







ただ………

一緒にいてほしい。

めぐを1人置いていかないで。











なんて…………
言えないけどね………。

12月4日。





朝10時ちょっとに分娩室に移動して陣痛促進剤を投与し始めた。


30分もすると少しずつ腹部に痛みがはしる。






少しずつ痛みが強くなって間隔も短くなる。





平ちゃんが来る前に出てきて。


待たせるの悪いし。



1人で耐えるって決めたから。











痛みが強くなってきて息が苦しくなってきた。

眠くもなってきちゃって『きついな』って思った。


時計を見ると14時45分。


平ちゃんが来るまでに産まれなかった。

嫌だな…………。












ウトウトしかけた時、誰かに肩を叩かれた。



目を開けると………

『平ちゃん………』

『来たよ。大丈夫?』

『平ちゃん早い』

『ちょっと早めにあがったから』




まだ来ないと思ってたのに……
すごく嬉しかった。
平ちゃんの顔を見てほっとした。


平ちゃんは横に座ってずっと手を握っててくれた。
髪を撫でてくれた。


16時をすぎた頃


『平ちゃんご飯まだでしょ?食べてきて。……まだかかると思うから』






平ちゃんがいなくなって少ししてから陣痛がさらに強くなってきて……どんどん苦しくなってきた。





もう限界かも………

って思った瞬間、平ちゃんが戻って来てくれた。

本当に………いつもすごいタイミングで現れる。




ずっと腰をさすってくれてた。





産まれるギリギリの時までいてくれた。















産まれた瞬間、普通のベッドで産んだせいか、赤ちゃんの足がめぐの太ももにあたった。


その感覚は今だに残ってる…。









胎盤も出してベッドをキレイにしてもらってから箱に入れられた赤ちゃんを見せてもらった。







キレイな赤ちゃんだった。






身長25cm、体重380g。




涙が止まらなかった。



ちゃんと産みたかった。






平ちゃんが部屋に入って来た。








『平ちゃん……見なくていいんだよ。見ない方がいい』

『何で?平気だよ』




平ちゃんはめぐよりもしっかり見ていた。


まだ生きていたのか、時々少しだけだけど……動いた。
平ちゃんはそれもしっかり見ていた。






『よく頑張ったね。ごめんな。ありがとう』













今までいろんな人とつきあってきた……。


こんなに大事にされたことはなかった。


口では優しいことを言っても実行してくれる人はいない。






この人は大丈夫。

そう思えた。

心の底から。











12月4日17時53分。

めぐと平ちゃんの間に男の子が産まれた。






いっぱい悩んだ。

いっぱい泣いた。

いっぱい苦しんだ。

後悔してないかと言われたら……している。



大好きな平ちゃんの子供。
ちゃんと産んでちゃんと育てたかった。







赤ちゃん……ごめんね。

ありがとう。









平ちゃんとの絆が深まったよ。






2人が育てる環境を作れた時、もう一度戻って来てね。

12月3日。

入院の日。



11月27日に入院の日が決まってからずっと不安だった。

それに………
本当に殺してしまっていいのか、迷いが消えなかった。

本当は産みたい。
産んで育てたい。

胎動を感じるまでになっていた。
殺したくない。







無理だってわかってた。

みんなに迷惑がかかるだけ。
誰も許してくれない。

自分1人で育てられるわけがない。







苦しくて苦しくて……
だからこそ平ちゃんにいつもそばにいてほしかった。
バイトに行かれるのも正直嫌だった。

イライラしたりもした。



どうしたらいいのかわからなくなっていた。




毎日、1人でいる時間はほとんど泣いて過ごした。






気がつくと………
いつの間にか涙が流れていた。


















12月3日。

平ちゃんが寝ている間に部屋を出ようと思った。


『病院まで送って』
そんなわがままなセリフが出てしまいそうだから。

前日、バイトで帰りが遅かった。
今日もバイト。
しかも、めぐのシフトの穴を埋める為。


わがままなんて言えない。







平ちゃんを起こさないように静かに部屋を出た。

でも、玄関で靴を履いている時
急に部屋の扉が開いた。





すごいタイミングで起きてくるな……。
涙腺が弱いめぐ。
我慢しようとしても涙が……………。





『バイト終わったら行くから』

『疲れちゃうし、無理しなくて良いよぉ』


嘘…………
だって本当はずっとそばにいてほしい。




必死に笑顔を作って

『行ってきます。またね』

玄関の扉を閉めた。

















病院についてすぐに病室に案内された。

パジャマに着替えて少しすると、看護士さんが呼びにきた。




さっそく子宮口を広げる処置が始まった。


もう………
逃げられない。

やっと覚悟ができた気がした。







17時にバイトを終えて18時頃に病院に来てくれた。


メールで『明日の処置の時付き添いが必要なんだって。赤ちゃんが産まれた時いれば良いみたいなんだけど…来れる?』って送っていたので


『明日14時までにしてもらったから』とまず始めに言ってきた。



子宮口を広げる処置をした話をすると

『痛い?』って心配してくれた。

『ごめんな』って……。







『大丈夫だよ』

笑顔で見送った。





陣痛がどれだけ痛くて苦しいかよく知っている。
経験済みだから。



怖くて不安だった。




できることなら平ちゃんの手を離したくなかった。