僕は今日、夕日を見たよ
今日の終わりを包み込む
夜が染みてきた橙(だいだい)の空を
昔は好きだったんだ
夕闇の匂いを感じたその瞬間
もう他には何もいらないと思うくらい
満ち足りた気持ちになったんだ
でも今はもう何も感じない
辛い事を感じなくなる代わりに
楽しいことも感じなくなる
いつからだろう、心が無くなったのは
喜びも悲しみも無く
味覚も嗅覚も感覚も無く
空気の味もわからなくなった
目の前の光景に現実味が無い世界で
目の前の光に反応して
既定の行動を繰り返すだけの
空っぽの人生
それは
個の生命を守るための脳の進化
種としての退化