大人子ども。《キヘ》 | あおいバラ*superjuniorのあの子たち*

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主ウネでいこうと思っていますが、他はどんへ受のものを書きます(∞*>∀<*艸)
自由気ままにな小説ブログです。









生意気で、腹黒い年下の男子がいる。
俺の働くさほど大きくない、パン屋に最近バイトくんがひとり入った。甘いマスクであどけない笑顔と仕事をきちんとこなす、十代後半の子で、印象は良く真面目でいい子だと思っていた。でも、それは徐々に薄れていった。学校終わりにここにくるから夕方に彼はやってくる。昼間より夕方の方が人が来ないから、家庭やらなにやらで早々と帰る従業員いるが、そこそこ売れるため、彼の存在はとても助かっている。助かっているのだが…。

「こんにちは、ドンヘさん」

と店の制服をぴっちり着た青年――キム・キボムはにこりと微笑んだ。彼のキラースマイルは言葉通り見るものすべてを虜にしていまうほどのものだった。けれども、俺はそのキラースマイルの裏に潜む黒いものを知っているため、俺は片方の口角をひくりとさせ半歩後ろに後退った。そんな俺を見て、キラースマイルは黒さを滲ませた。

「ドンヘさん年下があいさつしてるのに大のおとながしないってどういうことなの」
「…敬語は」

やけに下に見る言い方に、そう言うと、そんなドンヘさんにはいらないよ。とストレートに言われた。ここで抗論をすればいいのだが、相手に圧勝されるから、ぐっと口を結んで我慢した。

「本当、生意気」
「あなたは子どもだ」
「俺はもうアラサーだってば!子ども扱いされるなんて…しかも子どもに」

「子ども、なあ」そういうとキボムは俺の頬をさらりと撫でて、顎を持った。そんな行動に頭が付いていけなくて、少しだけ固まったけど、キボムが距離を縮めたからはっとしてから急いで後ずさりをした。

「なにするんだ。もういやがらせには乗らないから」

じとーっと睨むと、くはっと噴き出したように笑った。「いやがらせだと思う?」と聞いてきたから当たり前に「それ以外お前はしないだろ!」と言ってやった。ほかに何があるって言うんだ。

「…なあ、ドンヘ」

いつもより静かな口調で俺の名前を呼ぶからドキリとした。今度は何かとドキマギしていると、キボムは目を細めた。薄く笑っているような、そうでもないような微妙なものに、俺はずきりとした。そんなの見たことなくて、キボムが読み取れなくて、茫然としてしまっていると、店の扉についている鐘がカラン、という音がやけに響いて耳に届いた。するとキボムの笑顔はいつものものに戻っていた。

「俺レジ行ってきます」

「あ、えと、」という消えるような声が出た。引き留めようとしたのか、なんなのか、しかしその声はキボムに届いていなかったらしく、そういうとそそくさと行ってしまった。ぽかんとしたままの俺は、なにも考えられない状態でしばらくいた。

少しすれば、買い出しに行っていた同僚が戻ってきて、いつもの仕事状況にすっかりさっきのことを忘れていた。他の人より行動が早くはない俺は、他の人のてきぱきと働く姿を横目にいつものようマイペースに仕事をしていたら、気がつけば閉店の時間になっていた。

先輩やかわいい後輩くんは先に帰り、のろのろと制服から着替えていると更衣室のドアが開く音が聞こえた。誰だろうと目を向けるといつもならさっさと帰ってしまう、キボムがそこにいた。チェックのシャツのボタンをとめながら「忘れ物でもした?」と聞くと、なにも言わず、俺にずんずんと歩み寄ってきた。急なことに戸惑って、反射的に後ずさりをすると、足元にあったものに気付かず、躓いて尻餅をついてしまった。そんな俺にお構いなしにキボムはとうとう俺の真ん前にたどり着き、目線を合わせるようにしゃがみこんだ。

「キ、キボム…?忘れ物じゃないの…?」
「まあ、忘れ物といえば忘れ物」

なのに何故こんな状況なのかチンプンカンプンで、パチパチと瞬きをしていると、キボムの手が頭の上に乗った。それから髪を梳くように撫でた。おれがなんだかむず痒いのと行動の不理解さでよくわからなくなって、どもりながらキボムの名前を呼ぶと、キボムは被せるように言葉を話した。

「どこも隙だらけ。あぶなっかしい」

何を言うかと思えばそんなことで「い、いやみを言いに来たわけ?」と言うと顔の距離をぐっと縮められた。

「なあ、ドンへ」
「な、に…」
「俺が大人なら、いい?」

訳がわからず、へ?と間抜けな声を出すとにこりと、キラースマイルをした。こんなに近くで見たことないから、やけに心臓がうるさい。

「大人なら、俺を好きになってくれる?」

キボムの言葉をすぐに理解するのは俺には無理だったらしく、何度か頭のなかで同じ言葉を繰り返していく内に、ようやく、理解できた。とたんに顔が火照ってまともに目を合わせられなくなった。

「な、何言って…っ。まっ、えっ?キボムって俺のこと…」
「ああ、好きだよ」

作り物みたいに綺麗なキラースマイルが視界にチラついて、それがなんだかいやで、うつむいた。でも、すぐに、キボムの手は俺の頬を包んで上を向かせた。俺を捕らえて離さない瞳を見て、確信するものが芽生えた。

「俺さ、ドンヘさんが認めるような大人になるから、待ってて。そうしたら、俺のこと、好きになってね」

近付く顔に反射的にきゅっと目をつぶれば、額に温かくやわらかな感触が当たった。そんな感触が離れると同時にキボムは見ると、にかっと明るい笑顔だった。

「期待しちゃった?」

くすくすと笑うキボムにいつもの調子に腹をたてて反論してやりたかったけど、もうそんなの無理で、ただただ顔が火照るばかり。なにも言わずキボムを見つめる俺に何を思ったか、しょうがないなあ、とつぶやくと自分の唇に人差し指にキスをして、俺の唇に押し当てた。

「これで勘弁ね。ドンヘさんがきちんと俺を大人扱いしてくれないとしてやんない」

キザすぎる行動なのにも関わらず、鼓動なんか高鳴らせて馬鹿みたいだ。なにも言えず、ばか…とだけ思ったより小さな声で言ってやると、にこりと満足そうに笑って立ち上がった。

「じゃあお先に、ドンヘ」

綺麗な笑顔をして、更衣室を後にしたキボム。呼び捨てとか、なんて考えてる暇なんてなくて、急いでキボムの後を追いかけてやることにした。

――ホント、生意気なやつ。

後ろから抱き付いたら、なんて反応するかな、なんて考えて走ってキボムを追いかけた。





















end.


リクエストでキヘをいただいたので、学生キボムと社会人ドンヘ。遅れてすみません。
キボムはちょっと生意気なくらいが丁度いい。