あとがき



みなさんにとって「蜘蛛」は、どんな存在ですか。

足がたくさんあって、気持ち悪いもの?それとも、害虫を食べてくれるありがたい昆虫?

私は、後者です。

蜘蛛は、こちらが悪さをしなければ、人間には何も危害を与えません。

もちろん、毒蜘蛛など例外はありますけどね。

(私も、さすがに毒蜘蛛は無理!)

また、蜘蛛は糸を出せば風に乗ってどこまでも飛んでいけるというエピソードは、テレビで放送していた情報を参考にしました。


以前、手洗い場にいた蜘蛛に手を近づけると、その蜘蛛は私の手に乗ってきました。

しかし、私は不思議と恐怖を感じませんでした。

むしろ、かわいさを感じたほどです。

今回、そんな愛らしい蜘蛛の姿を主人公にしてみました。

愉しんでいただけましたか?


舞台の旅館『山の屋』は、どこかの田舎にある、いたって普通の古い旅館をイメージしました。

主人公の幸一(幸八)は、そこの跡取り息子。

生まれつき身体が弱く、室内で過ごすことが多かった幸一の唯一の趣味は、読書でした。

『山の屋』では、ほとんど体力を必要としない書架の管理を任されました。

学生時代に、後に今の『山の屋』女将になる節子と出逢い、結婚します。

文中に出てくる『星の館ミュージアム』は、幸一と節子が新婚旅行で訪れたという設定で、架空の施設をつくりました。

館内の様子も、全て頭の中に浮かんだイメージを文章にしました。うまくできていたでしょうか?

もしも、みなさんが実際にそこに行ったような臨場感を感じてもらえたら、作者としてはとても嬉しいです。


幸一は、病のため早世してしまいますが、床に伏せていた時に見た蜘蛛の姿に憧れ、亡くなった後に神様との交渉で、一時的に蜘蛛の化身になる力を授かります。

そして時を経て、愛する妻・節子に会うため、雲沢幸八という客に扮して、『山の屋』を訪れます。

そう、やり残したことを消化するために。


そして、文中で幸一が食べていた「昆虫ミックス素揚げ 塩味」というのは、一部本当にあるものを参考にし、一部(塩味のところ)は、食べやすさというところで、想像して書きました。


私の母のふるさと長野では、昔からイナゴを栄養食として食べていたと、事あるごとに母から聞かされていました。(私は、未だに気味が悪くて、食べたいと思いませんけどね)

今後、世界が食糧難に見舞われるようになったら、昆虫食も当たり前のように食卓にのぼってくるのでしょう。(それだけは、避けたい!)

実際、土地によっては日常で昆虫食を食べていたり、コオロギの粉末を食材に混ぜて販売しているところも

あると聞いたことがあります。


登場人物の設定は、一番最初に仲居頭の東郷美千子が浮かびました。

彼女のモデルは、刑事ドラマ「100の資格を持つ女」の主人公・西郷美千花を演じた渡辺えりさん。

気のいいおばちゃんっぷりが、美千子役にぴったりだと思い、勝手に配役させていただきました。

えりさん、ありがとう!


次に浮かんだのは、女将の鈴森節子。

彼女のモデルは、私の大好きな大好きな、推し女優・浅野ゆう子さんです。

数々のドラマで着物姿の女性を演じたゆう子さんは、とても美しい!

SNSで、正月の着物姿を披露していたゆう子さんの写真を見て、(これは使える!)と思い、女将役に設定させていただきました。

ゆう子さん、ありがとう!


そして、『山の屋』の常連客・神永長治郎(長治郎という名は、後半になって思いついた)のイメージは頑固で、宿の従業員たちにいつもワガママを言って困らせているという設定から、俳優の笹野高史さんが浮かびました。

笹野さんは、数々のドラマに出演されていて、その作品を観ていた時の記憶から、神永の言動の参考にさせていただきました。

実際、ドラマでは渡辺えりさんと共演されていることもあり、今回の美千子と神永のやりとりも、自然な感じになったと思います。(どうですか?)


この物語は、ほとんどが私の空想です。

私も幸一同様、子どもの頃から本を読むのが好きでした。

もちろん、小学生の頃の夢は「小説家」。

たくさん本を読めば読むほど、語彙が豊富になったり、頭の中にいろんなイメージを広げることが出来るようになりました。


この作品は、私の記念すべき第一作です。

実際「小説家」にはなれなかったけど、趣味の一環として、これからも時々こうして、思いついた物語を気軽に執筆していこうと思いますので、みなさんもぜひ、気負わず気楽な気持ちで、愉しんでもらえたら幸いです。


みなさんの心の中に、いつまでも幸一たちの姿や、旅館『山の屋』、『星の館ミュージアム』が素敵な想い出として、記憶に残りますように。


読了、ありがとうございました。