「あーきっつい」

kが叫んだ

緩めの石が段違いに並んだ階段を2人で登って行った

息遣いが荒くなる

「最近全然運動もしないからなぁ」

私も笑いながら上がっていた

いつの間にかkが前を歩いていた

「もう少しだよ」

何かとてつもなく素晴らしいものが待っている様に期待を込めて一段ずつ上がった

急に視界が開けて一面に海上が広がった

平らに整備された緩やかな傾斜の頂上


「着いたよー」私は叫んだ

kも「あー着いたー」と両腕を上げて叫んだ


「もうちょっとで沈むね…広い」

そう言ったkの横顔を眺める

私の中の好きなフィールドの中に入る表情横顔だと思った

「なんか感動するーあの辺りに落ちていくのかな」
指差しながらkは言った

気持ち良い風も吹いている

なんて清々しい空間と時間

可愛い男子と海と風と太陽が私の近くにある

至福の時

私「太陽が落ちていくとこ見たことある?」

k「んーないなぁ」

私「好きな人と今度は一緒に来なよ」

「…」

k「好きな人が出来たらね」

ふっとkは笑った


しばらく黙ったまま2人で海を見つめた

やがて小さくオレンジに光る太陽が沈んでいく


「あー沈んじゃう」大きくkが笑いながら叫んだ


「ねぇちょっとこっち向いて」私が呟く

「ん?」

kがこちらに体と顔を向けた瞬間に彼の首に両腕を回したぶら下がる様に

そしてきょとんとした顔のkの唇に唇を重ねた

短いキスだった

「今度好きな人と来た時の練習ね」

私はkに微笑んだ

少し呆然と照れた表情のkが可笑しかった。

ほんとにあどけない
もう大人の男に近づいている年齢なのに

強引に唇も奪える勘違いの特権を2人でここまて登ってきた事で得られたと思っていた

親愛の気持ちが湧いた様なキス

kはまだ少し呆然としていた楽しげに

「もー俺の唇奪う?突然…悪女だ笑」

「悪女に奪われた唇、可愛い〜」私が笑った

「ふいのちゅうだー」とkが叫ぶ

そして2人で笑い合った


 やや時間をおいて

「あっ瞬間見れなかったじゃん」て

「本当だごめーん」

そう言ってまた笑った


可愛いコ、どんな女のこを好きになるのだろう

想像してみる
kに似合うきっと綺麗な歳相応の女子を捕まえるのだろうな

「さっ行こうっか」

私はもと来た道の方を向いて歩こうとした

歩き出そうとした時

後ろから急に重さがかかった

両肩からkの腕が伸びてきた
そして後ろから抱き締められた

強い腕の力とkが私の髪に頬擦りするのを感じた

言葉がすぐには出なかった

抱き締められた腕を触りながら

「ねぇ私の髪、焼き肉くさくない?」

「あ、焼き肉の匂いする」

たくさんBBQの煙りを浴びた後だった

答えたkの方へ笑いながら振り向くとkの顔が近づいてきてわたしの頭を右手で包み左手は頬を触りながら唇を重ねて来た

長いキスだった
息が止まるかと思うくらい唇も体も熱かった

そしてしばらく抱き締められていた

夏が始まる時の青い草の様な少し汗ばんだでも落ち着く香り

華奢だと思っていた体はやはり細いけれどしなやかで不思議と強さがあった

腕の中からkの顔を眺めた

ねぇ何でそんなに…可愛いの?

少しだけ垂れたまん丸の目が私を見ている

「キスしちゃったね」kが呟く



もう大人なのに何か子供が悪い事をした時みたいに

「キスしちゃった、」
もう1度呟いた

「ねぇ俺とキスしたかったの?」

「襲われたから襲われ返した」

早口で言葉を畳み掛ける

「そうじゃないでしょ、ねーこの場面てロマンチックーなんだよ」


そう言って2人で笑い合った

まるで他人事みたいに

なんて明るいキスなんだろう

衝動的でしたいからしたキス

kの唇がずっと好きだったんだ

抱かれたいと思う人はいても
キスしたいなんて思う人今迄1人もいなかった

「さ戻ろう」

私も呟くとさっき来た道を2人で下りて行った

「また来たい、今度はちゃんと沈む所見たーい」

kは笑いながらちょっと照れながら叫んでいた。

私も笑いながらまた一緒にいつか来ようと心の中で思った