【妄想小説】Sweet Steps(2) | 彼方からの手紙

彼方からの手紙

ラブレターフロム彼方 日々のお手紙です

「そういうかわいいこと

言われちゃうともうさ…」

 

大きくて、きれいな目が

困ったみたいな色をしてる。

 

「ん、」

 

重なるくちびる。

 

翔さんがくれるキスは

いつだってとっても甘くて、

どんなキスだってとっても甘くて、

いつも胸がトクンと高鳴って。

 

ほんの少しくちびるを撫でる

柔らかい舌先を

追い掛けようとした瞬間。

 

ふと、離れちゃう気配。

 

え?…やめちゃうの?

 

「あのさ、」

 

何かを言い淀んでる表情。

ドキドキ胸が音を立てる。

 

「………」

 

「翔さん?」

 

「あーのー…」

 

「?」

「なんかオレ…

すげーがっついてない?笑」

「最初にここ来た時からさ」


誤解が解けた、あの夏の夜。

ぎゅううっと強く抱きしめられて。

涙を優しく、拭ってくれたあと。

ちょっと強引に
ぽすんとソファに押し倒されて、

性急なキスを
必死に受け止めてそのまま、

 

そのまま、ソファで…

 

思い出したら少し恥ずかしい。

「なんつーか、

最初のときから毎回、その…」

 

小さな声だけど

翔さんの低いトーンは

きれいに響く。

 

「気づいたらオレ、

押し倒しちゃってるからさ。笑」

 

右の口角、

ちょっと上げて笑う顔、

 

初めて見るセクシーな笑顔に

ドキドキドキ。

 

「こいつがっつきすぎって、」


「イヤだったりするかなーって、

ちょっと心配になったり?」

 

つぶやく小さな声。
ちらっと上目づかいな目線。

 

「翔さん、」

 

言われた言葉にも

目の前の表情にも

胸がいっぱいになって、

 

思わずその広い胸の中に飛び込んで、

ぎゅっと翔さんを抱きしめる。

 

頬に感じる熱い体温。

 

手のひらに感じる

しなやかな背中。

 

「イヤわけない」

 

「イヤなわけないよ…だってずっと」

 

わたしのからだを、

優しく抱きしめ返してくれる

たくましい腕。

 

ぴったりくっついてる

胸から伝わる声、振動。

 

「………」

 

「ずっと、なに?」

 

ドキドキドキドキ

 

「ずっと、翔さんのことが」

 

「初めて会った時から

櫻井さんのことが好きで、」

 

「………」

 

「ずっとずっと、好きで」

 

”櫻井さん”

 

久しぶりにそう呼んだら、

あの時の気持ちを思い出して

胸がぐっと痛くなる。

 

好きになっちゃダメって

忘れなきゃダメって、

必死だった気持ち。

 

「翔さん…好き」

 

わたしを見つめる

甘いまなざし。

 

まっすぐ見つめる瞳、

翔さんのまなざしはすごく…熱い。

 

「ん、」

 

勢いよく塞がれるくちびる、

まるであの日みたいに性急な…

 

想いをいっぱい

届けてくれるみたいな、

熱くて甘いキス。

 

大きな手のひらが

背中側から入り込んで、

素肌に触れられたら

 

ドキドキしてちょっと

身を捩っちゃうけど、

 

すごくすごく、幸せ。

 

「明るいけど…このまま、」

 

「がっついちゃってもいい?」

 

いたずらな笑顔に

艶っぽい瞳。

 

「脱がせちゃってもいいっすか?笑」

 

男の子みたいな

その表情にキュンとなる。

 

こくん、と頷いたら。

 

とろりとこぼれる

甘い甘い空気。

 

はじまりは

はにかんで笑いあう

柔らかい雰囲気。

 

でもすぐに、

 

熱い瞳で

見つめられたらすぐに、

溢れちゃう気持ち。

 

しっとりと汗が滲んで

くちびるに、指に、目に。

翔さんのくれる全部に夢中になる。

 

どこまでも深く深く

溶かされて。

 

これ以上無理って思うのに

もっともっと…って何度も、何度も。

 

からだいっぱいに

特別な肌の匂い。

 

ぎゅっと閉じてたまぶたに

大好きなくちびるを感じて、

そっと目を開けたら、

 

朝の光と、

大好きな甘い甘い笑顔。

 

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

 

ベッドルームに続く扉をそっと開けたら、

朝方よりもさらに、

思いっきり豪快な寝相の翔さん。

 

掛け布団、完全に抱きまくら状態で

ぎゅっとしてるのすごくかわいいけど、

 

うちのベッドは、やっぱり狭いよね…

 

ぐっすりと眠ってる横顔、

起こすの申し訳ないなと思いつつ。

 

「翔さん、おはよう」

 

近づいて声を掛けても、

目の前の翔さんは

くーくーかわいい寝顔。

 

「………」

 

「翔さん、起きて?」

 

ゆさゆさゆさ。

 

肩を揺らしたら少し、

眉間にしわ。

 

「翔さーん」

 

「んー…」

 

「朝ごはんできてますよー?」

 

ゆさゆさゆさ。

 

「オムレツですよー」

 

「……まじー?笑」

 

まだまどろみの中にいる翔さんの、

甘い甘い、かわいいお返事。

 

ああもうどうしよう。

 

目を閉じたまま、

ふんわり笑ってる顔に

ときめきが止まらないよ。

 

「…いい匂い」

 

バターの香り、

届いてるのかな?

 

「ああー…」

 

「ん?」

 

「……せ」

 

「え?なに?」

 

小さな声が聞こえなくて、

口元に耳を寄せたら。

 

「すげー幸せー」

 

目を閉じたまま、

ぽつりとつぶやかれた言葉に、

トクンと胸が音を立てる。

 

すげー幸せ、なんて

嬉しくてもう胸がいっぱいだよ…

 

「おはよ」

 

からだを起こした翔さんに、

ふわんとふんわり抱きしめられて。

 

ちゅっと音を立てて降ってくる

おはようの小さなキス。

 

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

 

「うっっっまっっっ!!」

 

今朝もやっぱり、

おいしそうに食べてくれる

翔さんにキュン。

 

リスみたいに膨らんでるほっぺ。

かわいくて大好き。

 

「あーもうすっげーうまいっす」

 

「…ありがとうございます」

 

恥ずかしくて、

思わず敬語に戻っちゃう。

 

「やっぱさあ、一刻も早く、

うちでも料理してもらえる環境を整えたいわ」

 

「ふふっ。笑」

 

「いやマジで」

 

翔さんのおうち、

ほとんど使ってる形跡のない

がらんとしたキッチンには、

 

かろうじて

炊飯器(新品未使用)はあったけど、

フライパンもお鍋も包丁も、

ひとつもなかったことを思い出す。


「だって今まで、

必要なかったからさあ」

 

「そうだ、そういえば」

 

「ん?」

 

「リョウ先輩の家も、

最初なんにもなくて」

 

「ご飯作りましょうって

おうちに行ったんだけど、

果物ナイフしかなくて。笑」

 

”だって必要なかったもん”

 

「翔さんとおんなじこと言ってたよ。笑」

 

「でも今やあいつんちの台所、

めちゃめちゃ充実してるよね?」

 

「ちょっとずつ揃えたの。東急ハンズで」

 

「東急ハンズ?」

 

「キッチン用品売り場の店員さんがね、

すごくいい人で、おすすめ上手で。

いち時期、毎週のようにリョウ先輩と

買い物に行ってて」

 

「へー」

 

「しかも先輩、

デザインだけで”これ欲しい!”って、

ほとんど使わないようなグッズまで

すぐ買っちゃったりして。笑」

 

「ふははは。想像つくわ。笑」

 

カップを持つ翔さんの

大きな、きれいな手。

 

淹れたてのコーヒーの、いい匂い。

 

 

「じゃあ、来週の土曜日。

一緒に行こ。東急ハンズ」

 

「必要なもの全部揃えてさ、

夜はそのまま、うちに泊まって」

 

どうしよう。

すごくすごく嬉しいな。

 

「ごはん、なに作ろう?

翔さん食べたいものリクエストある?」

 

「マジ??あーー何がいいかな。

何にしよう……ちょっと待って。

1週間マジで考えるわ」

 

「ええ?そんなに?笑」

 

向かい合って笑いあう、

とんでもなく幸せな休日。

 

 

(初出:2017.11.2)

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

読んでいただき

ありがとうございます(^^)/

 

【小ネタメモ】

 

②と③をくっつけて、

後半わりと加筆修正してます。

朝のシーンは今読むとまだまだ、

書き方がういういしいなー。笑

 

SSの翔さんは、

年上なんだけど男の子っぽい、

そんなイメージがあって。

 

前の年に「過保護な櫻井先輩は」

を書きはじめてたんで、

櫻井先輩とはまた違う翔さんを

書けたらなーと思ってた気がします。

 

次回、第3話は

ハンズでお買い物デートです(^^)

 

今週もお付き合いありがとう、

楽しんでもらえてたらとっても嬉しい。

 

木曜日おつかれさまでした。

落ち着かない日々だけど、

共に乗り切っていきましょう。