【妄想小説】過保護な櫻井先輩は(14) | 彼方からの手紙

彼方からの手紙

ラブレターフロム彼方 日々のお手紙です

認めたくない。

認めたくないけど。

 

朝からずっと、

涙で視界はぼやけてて。

 

鼻がぐずぐず苦しくて、

ノドの奥は痛くて。

 

頭の中も、

ベールがかかったみたいに、

ぼんやり。

 

あ、あ、あ、

どうしよう、また、

 

「…くしゅっ」

 

今日何度目かわからない

小さなくしゃみをしたわたしに、

後ろから元気な声。

 

「ねぇもしかして!?

花粉症デビュー??」

 

「あ、相葉さん。

おはようございま…くしゅっ」

 

「うわーそれ絶対花粉症だよ。

とうとうなっちゃったんだねー?

ようこそ、こちらの世界へ!」

 

ぴかぴかの笑顔の相葉さんが

さらにニコニコ、わたしの顔を

覗き込んで笑う。

 

認めたくなかったけどやっぱり、

これは花粉症だよなぁ。

 

「今日ひどくないですか?

朝からくしゃみ止まらなくて」

 

ちょうひどいよね。

オレも起きた瞬間からすげー辛い」

 

すげー辛い、といいつつ、

どこか嬉しそうな相葉さんが続ける。

 

「でも仲間がいると、

乗り切れる気がするから不思議だよね!」

 

「ふふふ…そうですね。笑

よろしくお願いします先輩!」

 

「デビューおめでとう、

なんでも聞いてよ!」

 

「はい。笑

あ、あっ……くしゅっ」

 

「ちょっと今のくしゃみ?

ちょうかわいんですけど。笑」

 

「全然かわいくなんか…しゅっ!」

 

「しゅっ!ってなに??

まさかそれもくしゃみ?笑」

 

相葉さんにからかわれながら、

会社までの道を歩く。

 

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

 

ふーーー…

 

給湯室で、

ちょっとだけ目をつぶって、

呼吸を整える。


くしゃみは止まったし

鼻が辛いのもなくなったけど、

目はまだちょっとじんじんするかなー…

 

「平気?」

 

「わっ!櫻井さん。

びっくりしました。笑」

 

給湯室の入口から

ひょっこりはんみたいに

顔だけ出してこっちを見てる

かわいい姿。

 

「どう?少しは良くなった?」

 

「はい。お薬飲んだら

かなり良くなってきました」

 

出先からの帰りに、

翔さんが買ってきてくれた

青いパッケージの飲み薬。

 

「あれよく効くらしいから。

1日1錠でいいし、

眠くなりにくいんだって」

 

「そうなんですね、

ありがとうございます」

 

わたしのために、

わざわざ買ってきてくれたこと、

嬉しくて嬉しくて胸がキュン。

 

「すみません、

もう戻るところだったんですけど」

 

「や、こっちは全然大丈夫」

 

言いながらするっと

体を滑り込ませて

狭い給湯室に入ってくるから。

 

肩がぶつかっちゃいそうなくらい

グレーのスーツが近くなる。

 

「ずっと辛そうにしてたから。

すげー心配で」

 

小さくつぶやく、低い声。

 

「櫻井さん、」

 

「今誰もいないから。

”櫻井さん”じゃなくていいし」

 

「…翔さん」

 

狭い給湯室で向かい合って、

ふたりだけの時の呼び方で

大好きな名前を小さく呼んだら、

 

ど、どうしよう…

 

心臓が、ドキドキドキ。

 

社内では

滅多にこんな距離にならないから

すごくドキドキしちゃうよ。

 

至近距離で見上げたら、

ちょっと困ったみたいに

まゆを下げてる表情。

 

「翔さん…?」

 

見つめたままのわたしに、

さらに困ったように笑う翔さんが、

わたしの目の下をすっと撫でる。

 

「今日はずっと、

なんていうか……目がさ」

 

「あ、赤くなっちゃってますか?」

 

「赤くはなってないよ。大丈夫。

それは大丈夫なんだけど…」

 

大好きな長い指がもう一度、

頬を優しく撫でるから、

思わず肩をすくめちゃう。

 

「目がすげー潤んでて、

ずっとうるうるしてるからさ、

 

「ちょっと、たまんないっつーか」

 

「?」

 

「ちょっと……エロいっつーか」

 

「ええっ?」

 

エ、エロい??

 

そんなこと言われたら、

急に恥ずかしい!!!

 

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

 

「まだ辛い?平気?」

 

「もう全然大丈夫です」

 

薬の効果か、

夜になったせいなのか、

あんなに苦しかったのが嘘みたい。

 

すっかりいつも通りのわたしに

翔さんがちゅっと

甘い甘いキスを落とす。

 

「ん…しょうさ、」

 

ちゅっ、ちゅっと

柔らかいキス。

 

ふっくらしたくちびるの感触。

 

ソファの上、

ぎゅっと抱き寄せられて、

思わずキュンがあふれちゃう。

 

「明日休みで良かった。笑」

 

くすくす笑いながら、

また甘い甘いキス。

 

いつもなら週末まで

こんな時間はお預けだけど。

 

明日は祝日、

お休みだから、今日は特別。

 

だからって

翔さんの家に帰ってきてすぐ、

こんな状況になっちゃってるのは

ちょっと恥ずかしいけど…

 

「昼間はマジで、

煩悩と戦ってました」

 

セクシーな瞳、

ソファにぐっと体を押し付けられて、

ドキドキが止まらない。

 

「よからぬ想像かき立てられてさ…

やばかった、マジで」

 

よからぬ想像、なんて…

 

ぎゅっと抱きしめてくれる

翔さんのたくましい背中に

きゅっと小さく腕を回す。

 

きれいな長い指、

ひとつひとつ外される、

ブラウスのボタン。

 

「ん、……っ」

 

あらわになった肌の上に、

ぎゅううっと強く、

熱い舌が、くちびるが、触れる感触。

 

鎖骨の下に、肩に、谷間に、

柔らかいふくらみに、

何度も何度も赤い痕がつけられて。

 

「あ、…ん、あっ」

 

荒くなる呼吸と一緒に、

甘い声が止まらなくて…

恥ずかしい。

 

チリチリと熱い痛みに、

ドキドキしすぎて涙が出そうで。

大きな瞳を、必死で見つめる。

 

「翔さん、」

 

「目、潤んでる」

 

昼間と同じように、

そっと目の下を撫でる、

翔さんの長い指。

 

「こんな顔、

誰にも見せたくねーな…」

 

切なくつぶやく小さな声と、

熱い熱いキスが、

わたしの上に、落ちてきた。

 

 

過保護な櫻井先輩は(2019春)

 

 

(初出:2019.3.20)

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読んでいただき

ありがとうございます(^^)/

 

元々のお話では

花粉症の先輩相葉さんから

紫のパッケージのお薬(アレーグラー)を

もらう設定だったんだけど、

今は翔さんもCMやってるのでね、

クラリチンver.にRebornしてみました。

 

なんだかんだと、

過保護な櫻井先輩も残りあと数話。

振り返るとたくさん書いたなあ…しみじみ。

 

連載はいつもと同じく、

金曜更新予定です。

またどうぞよろしくお願いします。

 

今日も最後までどうもありがとう!

水曜日おつかれさま(^^)