【妄想小説】過保護な櫻井先輩は(12) | 彼方からの手紙

彼方からの手紙

ラブレターフロム彼方 日々のお手紙です

「今日もお疲れー」

 

毎日。

どんなに忙しくても毎日、

夜寝る前にこうやって

電話くれるのすごく嬉しい。

 

毎日ちょっとでも、

わたしとの時間を

ちゃんと作ってくれる翔さんが

大好きでたまらない。

 

「今日もオレらほぼほぼ、

会話阻止されてたよね。笑」

 

自嘲気味に笑う低めの声。

 

「部長の”おーい櫻井”の声、

もう聞き飽きたでしょ」

 

翔さんの長期海外出張。

いよいよ目前に迫ってるから。

 

不在の間のもろもろ、

前倒しになってるせいで

もうずっと鬼のようなスケジュール。

 

忙しい毎日をこなす翔さんは、

大変そうだけどどこか楽しそうで、

 

出張楽しみにしてるんだろうなって

話す雰囲気から伝わってくる。

 

「覚悟はしてたけどやっぱ出発前が

いっちばん時間キツいんだよなー」

 

「そうですよね…

でも、あと少しですから」

 

「ここんとこ、

ランチも全然一緒に行けてないけど

ちゃんと食ってる?すげー心配」

 

…もう。

 

翔さんだって

ゆっくりお昼食べる時間ないのに

わたしのこと心配、なんて。

 

嬉しすぎて胸がぎゅっと痛い。

 

「大丈夫ですよ?

ちゃんと食べてます」

 

ほんとはちょっと…

食欲がなくて

あんまり食べてないけど。

なるべく明るく答える。

 

「翔さんこそ、

ちゃんと睡眠取ってますか?」

 

「寝てる寝てる。大丈夫」

 

大丈夫、の声は明るいけど

ここのところずっと

目の下にクマが見えてるから。

 

きっと寝る間を惜しんで

資料に目を通してるんだろうな。

 

「今日もお疲れさまでした」

 

ほんとのほんとを言えば、

電話じゃなくて直接顔を見て…

言えたらなとは思うけど。

 

わがまま言いたくないし。

 

毎日大変な翔さんが

電話の時間を作ってくれるだけで

すごく嬉しいから。

 

「もう寝てくださいね。

おやすみなさい」

 

気持ちをぎゅっと閉じ込めて。

なるべく明るく、電話を切って。

 

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

 

「おーい櫻井」

 

「はい!」

 

今日も朝から

あちこち忙しく動き回ってる翔さん。

 

いよいよ明日出発なのに

やっぱりなかなか話せないまま。

 

仕事以外の話、

できないのはしょうがないけど、

仕事の話はちゃんとしないと…

 

一瞬席に戻ってきたタイミングで

何か言おうとしてる翔さんを

遮って続ける。

 

「あのさ、」

 

「すみません櫻井さん、

領収書、今日までの分もしあったら」

 

「あっ!やっべ」

 

眉間にしわを寄せて

お財布ごそごそしてる翔さんが

すごくすごくかわいくてキュン。

 

「あっぶね。忘れてた。

マジで助かったわ。サンキュ」

 

手渡された領収書は

どれもこれもくしゃくしゃ…笑

 

「うーわごめん。

そのまま突っ込んでたから」

 

「全然大丈夫です。笑」

 

「あー…あのさ、」

 

「櫻井?会議いけるかー?」

 

「あっ、先行っててください、

すぐ行きます!」

 

「呼び止めてごめんなさい、

もう大丈夫ですから」

 

翔さんが心配しないように

笑顔を作らなきゃ。

 

ほんとはもう少し

いろいろ話したいけど…

 

「ちょっと。こっち」

 

「え?え…?」

 

「こっち来て」

 

少し強引に腕を引っ張られて。

 

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

 

キョロキョロキョロ

 

誰もいないのを確認した翔さんが

非常階段に続く扉をさっと開けて。

 

狭い狭い階段の踊り場。

 

なに…?

 

なにがなんだかわからないわたしを

いきなりぐっと引っ張る翔さんの腕。

 

そのままぎゅーーっと!

思いきり抱きしめられて。

 

びっくりしてびっくりしすぎて

かたまったまま動けない。

 

「ちょっとだけ」

 

「ちょっとだけ…こうしてて」

 

からだに直接響いてくる

大好きな翔さんの声。

 

どうしよう…

 

がっちりした腕の中に

ぎゅっと抱きしめられて

ドキドキしすぎて倒れそう。


びっくりしたけど

すごくすごく嬉しくて…

 

たくましい背中に

わたしもそっと、腕を回す。

 

「っあーーーっ…」

 

絞り出すみたいな

翔さんの声。

 

ドキドキドキ

 

「すっげー久しぶり」

 

つぶやく声が嬉しくて。

翔さんもこうしたいって

思ってくれてたのかな…

 

「あの……会議、」

 

「大丈夫。

まだ開始まで時間あるから。

部長いっつも早いんだよ。笑」

 

 

ドキドキドキ

 

 

「あの…誰か来たら、」

 

「大丈夫。

ここ全然人来ないって相葉くんが」

 

「え?相葉さん?」

 

熱い腕の中から

翔さんを見上げたら、

ちょっと切ないように笑う顔。

 

 

「大丈夫だから。

だからちょっと…充電させて」

 

 

翔さんのからだに

ぎゅっとすっぽり包み込まれて、

からだ全部が心臓になったみたい。

 

ひゅうっと少し冷たい風が

わたしの髪を揺らす。

 

「………」

「………」

 

目を閉じて、

翔さんを感じる。

 

帰ってくるまで

こんな時間もうないと思ってたから、

嬉しくて嬉しくて泣いちゃいそう。

 

せっかくの時間だから、

ちゃんと伝えたい。

 

「翔さん」

 

「ん?」

 

「日本で待ってます」

 

「気をつけて…いってらっしゃい」

 

「……」

 

やっぱり少し、

声が震えちゃったけど。

 

伝えられて良かった。

 

「…いやあのさ、」

 

「え?」

 

「こんな直前しか時間とれなくて。

っつーかむしろ直前だからこそ

一番時間がとれるっつーかで…」

 

頬を撫でてくれる

翔さんの大きな手。

 

「空港の近くにホテルとったから」

 

まっすぐな目。

まっすぐな声。

 

「今夜。一緒にいたい」

 

「…え?」

 

「朝、見送りしてくれる?」

 

びっくりしすぎて言葉が出ない。

 

「明日は午前休でって、

もう部長に申請してあるからさ。笑」

 

「え?わたしのお休みですか?

ほんとに?」

 

「すいません用意周到で」

 

右の口角、

少しだけ上げて笑う翔さんの

大好きないたずらな笑顔。

 

「翔さん…!!」

 

嬉しくて嬉しくて、

広い胸にぎゅっと抱きついたら。

 

ぐっとわたしを

強く受け止めてくれる熱い熱い腕。

 

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

 

「ん…翔さん…」

 

至近距離でまっすぐ見つめたら

思わず涙がひと粒こぼれる。

 

困ったみたいに笑う

大好きな翔さんの笑顔。

 

涙を優しく、

拭ってくれる親指。

 

ちゅっと降ってくる

優しいキス。

 

今一緒に過ごせてることが

嬉しくて嬉しくて。

夢みたいに幸せで。

 

でも少しさみしくて。

 

やっぱりどうしても

さみしい気持ちが溢れてしまって…

目の前のがっちりした肌に

そっとおでこを寄せたら。

 

ぎゅっと包み込んでくれる

たくましい腕。

 

ぐっと抱きしめてくれる

大好きな翔さんの手。

 

わたしの不安を

拭ってくれるみたいに

何度も何度も

深く重なるくちびる。

 

安心する香り。肌の匂い。

熱い熱い温度。

 

ありがとう翔さん。

思いがけずもらった幸せな時間。

 

嬉しくて幸せで。

優しい腕の中でそっと目を閉じる。

 

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

 

出発の朝は快晴。

青い青い空。

 

ホテルから空港までの道を

ゆっくり歩く。

「向こうはとっても寒いみたいですから、

風邪に気をつけてくださいね」

 

「ちゃんと食べて、

ちゃんと休んでくださいね」

 

「ふはは。

それはオレも言いたいセリフよ?

お前昼ぜんっぜん食ってねーだろ」

 

…やっぱりバレてた。

 

「帰ってきたら、また温泉行こ」

 

「…はい」

 

「今度は混浴で?」

 

「ふふっ…ほんとに?笑」

 

さみしい気持ちに

未来の約束をありがとう翔さん。

 

朝の光の中で。

 

旅立つ前の翔さんの

柔らかくて優しい笑顔。

 

不安ないろいろは

心の中でそっと祈る。

 

無事に旅を終えられますように。

 

「翔さん、いってらっしゃい」

 

笑顔で声にしたら。

 

「はい。いってきます!」

 

もっともっと

大きな笑顔の翔さんが

きれいな声で応えてくれた。

 

 

過保護な櫻井先輩は(2018冬)

 

(初出:2018.2.7)

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

m(_ _ )m

 

読んでいただき

ありがとうございます(^^)/

 

リピート配信が終わって、

なんだか今がいちばん

ココロがスンとなってるんで、

櫻井先輩にご登場いただきました。

楽しんでもらえたらとっても嬉しい。

 

ちょうどオリンピックの取材で

翔くんが平昌に行く時期だったので、

重ねあわせて書いてみた回です、3年前だね。

 

時系列としてはこの後に

温泉旅行の回が続きます♡

 

 

今週もちょっとずつ、

共にがんばってゆきましょうね、

お付き合い感謝です!