【妄想小説】甘い色(14) | 彼方からの手紙

彼方からの手紙

ラブレターフロム彼方 日々のお手紙です

<第14話>

このまま

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

(side潤)

 

「怒んなよ」

 
「…………」
 
「そんな怒んなって。笑」
 
うつむいたままのマコトに
何度も軽く声を掛けるけど、
 
ソファのとなり、
ちょこんと座ってるマコトからは
ものすごい怒りのオーラ。
 
「ひどい風邪じゃなかったし。
もうすっかり治ってるし」
 
「…声がまだヘン」
 
「声だけなんだよ。
風邪引いたらオレいっつも、
最後はノドだけって
マコトも知ってるだろ?笑」
 
「体はほら、全然元気。
ちょう元気。ほらほら。ほら」
 
軽くおどけて
チカラこぶ作って見せるけど。
 
チラッと見ただけのマコトは
クスッと小さくも笑わない。
 
「…………」
 
「せっかくの旅行前に、
心配させたくなかったからさ。
仕事も忙しかったし」
 
「…………」
 
「でももう忙しいのも今日で
だいたい目処ついたから、
夜には連絡しようと思ってたんだよ、
旅行のことも細かいこと話そうと…
え…?マコト?」
 
ポロポロポロ
 
大きな目から突然、
ポロポロこぼれ落ちてくる涙。
 
「…………、」
 
想定外のマコトの涙に、
キレイなその泣き顔に、
言葉が続かない。
 
「……ごめんなさい」
 
「え?」
 
「ごめん潤…ぐすっ」
 
「なんでマコトが謝んだよ。笑」
 
謝んなきゃなんないのは
こんな時に風邪なんてひいてる
オレの方。
 
オレの方こそ、
謝んなきゃなんないのに。
 
肩をそっと抱き寄せたら、
泣いてる顔を隠そうとするみたいに
マコトがぎゅっと胸に頬を寄せてくる。
 
「全然連絡くれないの、
なんで?ってずっともやもやしてた」
 
「ちょっとくらい
顔見に来てくれてもいいのに、
なんで来てくれないの?って
ずっとずっと思ってたの」
 
「マコト…」
 
それはごめんマジでごめん、って
言おうとしたところで聞こえてくる、
ひとりごとみたいな、小さな声。
 
「わたしから、
行けばよかったんだよね」
 
「……」
 
「わたしから潤に会いに行ってれば」
 
「そしたらちゃんと、
潤の体調に気がついたのに」
 
「マコト、」
 
「ヘンに考えてないで、
ヘンな意地張ってないで、
会いたいって思った時に素直に
ちゃんと会いにいってたら、
ちゃんと看病だってできたのに」
 
「マコト、」
 
「なんでもう…わたし、最悪」
 
「マコト…!」
 
ぎゅううっと、
その体を抱きしめる。
 
ひさびさに感じる甘い体温に
あり得ないくらいうるさい心臓の音。
 
小さな手のひらが
オレの背中に回って。
ぎゅっと必死に抱きつかれて
体が熱くなる。
 
「…会いたかった」
 
腕ん中でつぶやく、マコトの声。
 
「会いたかったよ……潤」
 
くぐもった涙声でそう言われて、
アタマじゃなくて体が動く。
 
ちゅっ
 
涙が伝ってる頬に、
潤んでる瞳に。
 
何度も何度も、
小さくキスを落とす。
 
「じゅ…、」
 
そのまま、くちびるに。
熱い熱いキス。
 
ひさしぶりの…マコトとのキス。
 
「んー…」
 
オレの舌の熱さを、
受け入れる柔らかい甘さ。
 
キスしたままで、両手は。
マコトのカラダを
確かめるように、撫でる。
 
腕を、肩を、首を、背中を。
這うように撫でるオレの手に
マコトの体の柔らかい感触。
 
やばい。
 
このままじゃまた、
あの夜と同じだろ…
 
思わずくちびるを離したら、
至近距離で目が合う。
 
ついさっきまでの熱いキス。
受け止めてたマコトの
あり得ないほど艶っぽい表情。
 
「潤、」
 
潤んだ瞳は、
まっすぐオレを見つめたまま、
何か言いたげにしてるから、
思わず問いかける。
 
「ん…?」
 
「………、」
 
「マコト?」
 
言い淀んでたくちびるが。
意を決したように、つぶやく。
 
「このまま…したい」
 
「…え?」
 
「……して欲しい、潤」
 
震えてる、マコトの手が。
オレのシャツをぎゅっと掴む。
 
 

<第14話>

このまま

 
(初出:2019.7.29)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 
読んでいただき、
ありがとうございます!
 
 
【小ネタメモ】
 
そう予定通りにはいかないってのが、
この2人っぽくていいなあと思いながら
ラストに向かって書いてました。
 
次が最終話、そのあとおまけがあって
完結となります(^^)/
 
今日使った写真は
10月に泊まったホテルの天井です、
困った時の天井写真…笑
なかなかねー、部屋の中の雰囲気、
いい感じだなーと思える写真が、
手持ちになくてむずかしい。
(でも制約ある中で考えるのは楽しい)
 
今日もおつきあいどうもありがとう。
次回もまた、よろしくです(^^)/