【妄想小説】高校生の櫻井くんの場合② | 彼方からの手紙

彼方からの手紙

ラブレターフロム彼方 日々のお手紙です

高校生翔くんの

その後のストーリーです(^^)

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

いいな。

学校からの帰り道、
わたしたちの少し前を歩いてる相葉くんたち。

その後ろ姿は誰がどう見ても、
仲良しカップルそのもの!って感じで。

相葉くんの左手は

彼女の右手をしっかりと握ってる。

手だけじゃなくて腕のあたりまで
ぴったりくっついてるみたく見える。

ふたりでなにか、楽しそうに話しながら、
歩くたびに腕が、肩が、
くっついてちょっと離れて
それまでよりまた近くなってくっついて。

誰がどう見ても

仲良しカップルそのもの!な後ろ姿。


いいな。
いいないいな。


ふー…ってつい、
ちょっとため息。


「あれ雅紀たちだよな?

すげーなあいつら。笑」


となりを歩くわたしの恋人は。


「オレぜってー無理!無理だわー」


七夕の日、「お前が好き」なんて

ストレートに告白してくれた
ずっとずっと大好きだった人は。


友だちカップルの

ラブラブな後ろ姿を見ながら、
こっちが恥ずかしくね?って笑ってる。


恋人同士になっても
関係が劇的に変わることもなく、
なんならつきあう前の方が
仲良かったんじゃない?ってくらい
今まで通りなわたしたち。

あっさりそっけない帰り道。


「翔」

あ、名前の呼び方は特別になったけど。


「ん?」

ちらっ、とわたしを見てくれる
大きくてきれいな目が大好き。


「…やっぱりなんでもない」


手をつなぎたい。

そのひと言が、言えない。


“人前でつなぐとかない!恥ずかしい”


これは付き合う前から、

翔がよく口にしてたこと。
ヘンなとこで硬派というかなんというか、
翔は異常にそういうの嫌がる。


翔の両手は今日も、
制服のズボンのポケットに入ってる。
翔の歩くときのクセだし、
肘の角度とか親指は出てるとことか
それはそれで大好きなんだけど。


手、つなぎたい。
翔と手をつないで歩きたいよ。


「それでニノがさー…」


二宮くんが、

学祭さぼったときの話をしてるけど。
わたしはほとんどうわの空。

恋人になったのに、
恋人になれたのに全然、
なんにも変わってない、わたしたち。
いつもの帰り道とおんなじ、わたしたち。

「あちー。今日まじ暑いな!
のど乾いたー。うち寄ってくだろ?」


ちょっと前を歩いてた翔が振り向いて、
にこっ、って笑う。

なんてきれいなキラースマイル。

「うん」

まだバイバイじゃないんだと思うと

単純にうれしくて、
わたしも笑ってうなずく。

「じゃコンビニ寄ろ。オレ炭酸飲みてー」

さんさんさん
おてんとさまさまさまー♪

呪文みたいにウルフルズを歌いながら、
翔がコンビニに入ってく。


*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆


「あっちー!」


翔の部屋に入ると、
閉め切ってた部屋独特のもわっとした空気。
西日が差し込んでて、眩しいくらい。

さっとリモコンで冷房をつけた彼は


「ちょっとまってて」


わたしをひとり残して、
足早に部屋を出ていった。


ふー。


静かな部屋で、
とりあえずベッドに腰かける。
買ってきたジュース、
ビニール袋から出したりして。


さっきの相葉くんたちをちょっと思い出す。


…贅沢になっちゃうんだなー。
つきあえるだけで幸せだったのに。
毎日毎日、どんどん欲張りになってる気がする。


ほんとは翔といるだけで、うれしいのに。


翔がいつも生活してる部屋の中にいたら、
なんだか急に、
そんなしおらしい気持ちになったりして。


*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆


「おまたせーい」

バタン、とけっこう大き目の音をさせて
ドアを開けた翔は、
迷彩のハーフパンツとTシャツに着替えてた。


「着替えたの?」

「うん。すっげー汗かいてたし」


手には氷を入れたグラスがふたつ。

「飲もうぜ飲もうぜーい」


しゅわしゅわと

炭酸がはじけて氷の上を跳ねる。


窓からの西日、キラキラの光を浴びて、
しゅわしゅわがぴかぴか飛び跳ねて見える。

 

 

 

「うまっ。メッツコーラうまっ!」


目をおっきくさせて、
ペットボトルのラベル、

 

まじまじ見てるその顔がすごくかわいくて。
ふふ、って思わず笑っちゃう。


「なんか聴く?」


コンポの電源を入れた翔が

棚の中のCDを物色してる。

これかな、あーこれだな、
なんてひとりごと言いながらセットしたら、

部屋に流れ始める、
ちょっとけだるいような、柔らかいメロディ。


「これいいね。…けっこう好きかも」

「まーじで?うーわ うれっしー。
これはー、イギリスのアデルっていうー…」



CDジャケットを手に、

目の前でくるくる表情を変えながら
説明してくれる整った笑顔。

コンポからは、女の人の
ちょっと低めの優しい歌声。


「暑くない?」

 

 

言いながら、
わたしのとなりにぽすん、と腰を下ろすけど。


「…うん、だいじょぶ」

「そ」


近い。
距離がかなり…近い。


さっきの相葉くんたちより

もっと、近い距離。


教室では、

帰り道ではありえないこの距離感に
かなりドキドキして。


着替えてきた翔の白いTシャツからは、
柔軟剤の柔らかい匂い。


Tシャツの袖、
いつもみたいにまくってるから
翔のたくましい腕が
わたしの制服越しにくっついてる。


肩、腕…
わたしの右側にぴったりくっついてる。



カラン



翔が持ってるグラスの中の氷が音を立てたから
反射的に翔の方を見たら。



ちゅっ



ふいに感じる
ふっくらしたくちびるの感触。


!!!



びっくりして、
うつむいたまま顔が上げられない。


か…顔、赤くなっちゃってる気がする。


だってだってだって、
こんな、こんな不意打ちなキスなんて…!!


すごくすごく、
ドキドキしてるけど。

でもすごくすごくうれしくて、
なんだかくすぐったくて。


さっきまで、

テンション高くおしゃべりしてた翔が、
なんにも言わないのがすごくすごく

くすぐったくて。

 


思わず彼の肩にコテンって

寄りかかって顔を隠す。



髪に、耳に、頬に、
翔の体温。

熱い熱い、彼の体温。


ドキドキが聞こえちゃうんじゃないか心配で
肩に寄せた顔を上げられずにいたら。


触れあってる腕、
その先にある翔の大きくてきれいな左手が
わたしの右手をすっぽり包んで。


ぎゅっ、って
ちょっと力強くにぎってくれた。



触れあう肌の感覚。
翔の熱い体温の感覚。

くらくらする。


でも急に、
素直に甘えたいような気持ちになって。


「翔」

「んー?」


「手、つなぎたかったの」


ずっと思ってたこと、
思わず声に出したら。


「…今じゃだめ?」


ぎゅっぎゅっ、って手を包みながら
うかがうようなかわいい丸い瞳が
わたしの顔をのぞきこんだ。


だめなわけないよ…


ふるふる、って首を横に振る。

翔を感じられるだけで、いい。
今こんなに優しく包んでくれる、
それだけでもう…


それだけでこんなに…
幸せだもん。


ちょっと心配そうだった翔の瞳は
いつのまにかまっすぐに
男らしい強さを放ってて。


「…もっかいしていい?」


大好きな声。
男っぽいのに、優しい声。


ドキドキドキドキ。
心臓が痛いよ。


翔の香り。
目を閉じた翔のきれいな顔が、
だんだんと近づいてきて。


そっと、瞳を閉じたら。


ふっくら柔らかい彼のくちびるが
優しく、優しく、少しずつ深く。

わたしのくちびるに、触れた。

 

 

(初出:2015.8.10)
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すっごく蒸し暑かった日にアデル聴いてて、
あー暑い日のアデルの声って

なんかエロいわーって思って、
浮かんだ物語でした。

 


アデル姉さん21歳のときのやつ

 

高校生翔くん、

今日ちゅー決める気だったから。

アデルなんてかけちゃってエロいなー!
こんにゃろー!
…っていう、そういう妄想でした。笑

 

 

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【2020.8.10追記】

 

アデル姉さんのアルバムの1曲目が

「Rolling in the deep」という曲で、

ふたりが初めてキスする時に流れてた曲として

イメージしてたのですけど、

このお話を書いた2ヶ月後に発売されたアルバム、

翔くんのソロ曲が

「Rolling Days」のタイトルだったのが

なんだか嬉しい偶然でした(^^)

 

高校生シリーズ:翔くんのターンは

これで終わりです。

ちょっとでもキュン♡で

気分転換していただけてたらこれ幸い。

 

お付き合いありがとーう(^^)♪