【妄想小説】パレード(後編) | 彼方からの手紙

彼方からの手紙

ラブレターフロム彼方 日々のお手紙です

高校生二宮くんの後編です。
前編はこちらからどうぞ。

 

 

 


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「かき氷いかがっすかーー!!」

学祭当日。

輝く笑顔の相葉が呼びこみしてる。
今日は暑いから
かき氷もたくさん売れてるみたい。

腕時計を確認。
あと1時間。

女子は浴衣で!って誰かが言いだして
教室内にいる女子はみんな
浴衣を着てる中わたしだけ制服で。

手持ち無沙汰なのもあるし
これから抜け出すと思うと
落ち着かなくて…そわそわ。

トイレでもいこっかな、
って思ってドアをあけると
入ってこようとした櫻井とぶつかった。

「あ、ごめん!…あれ?」

なんで浴衣じゃないの?
って思ってるであろう、
きょとんとした櫻井の顔。

でもすぐ、
あっ、こいつニノと抜け出すんだって
一瞬で思い出した顔になって。

「………」

櫻井がなにも言わず、

 

うん、って頷くから。
わたしもうん、って頷き返す。

「オレもいちごー!」

ふっ、てちょっと笑った櫻井は、
さっさと教室に入っていった。

何にも言わないでいてくれるの、

ありがたい。

二宮が心を許してる友達は
相葉といい櫻井といい、いい奴だな。

12時。
人混みにまぎれて、そっと校門を出る。
どきどきどきどき。


学校の近くのバス停、
二宮はまだ来ていない。

ふー。
ベンチに腰かけて
向かい側をぼーっと見てたら。

「!」

急に視界が暗くなる。
なに?なに?なに??

えっ目隠しされてる??

ぱっ、と手が離されたと思ったら
至近距離でわたしを見つめる
二宮の薄茶色の瞳と目があった。

「緊張してんの?」

ありえないほど近くから、

小さな低い声。
ありえないほど近いとこにある、

きれいな顔。

き、急になに…!!

びっくりしすぎて
固まってるわたしのことなんておかまいなしに
二宮がよっこらしょ、ってとなりに腰かけて。

「うまく抜け出せたね」

んふふ、って柔らかく笑う。

どきどきどきどきどき。
どきどきどきどきどき。

このどきどきは。

ただ、急に目隠しされて、

びっくりしたから。

まぶたのあたりに
二宮の指の感触が残ってるから。

そうだよそうに決まってる。
誰に言い訳してるのかわからないけど、
とにかく気持ちを落ち着かせるのに
必死なのに、それなのに。

「なーんかデートみたいじゃない?」

わたしの顔を覗きこんで、
余裕に笑う憎たらしい笑顔。



*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆



「着いたー…!」

高速バスで1時間半、
大きな大きな湖のほとり。
 

ここで…
この広い広い空の下で、
たくさんのファンの前で、
演奏するんだなー…。

ずっとずっと大好きだったバンド、
彼らの晴れ舞台に立ち会えること、
あらためて実感して、じんとする。

「…ちょっと感動すんね」

二宮がぽそっとつぶやいた言葉。

わたしも今、
まさに言いたかったその言葉を
二宮が言ってくれたのがうれしくて、
うんうん、って何度も答える。


ひとりじゃきっと、
無理だった。

ひとりじゃきっと、
こんなとこまで来れなかった。

もし来れたとしても…

ひとりじゃきっと、
こんな幸せな気持ちに
なれなかったって思う。


少し陽が傾きかけた
夕焼けがキレイな空の下。

ワーッ…!!

大きな歓声。
ライブが始まった。

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

ノリのいい曲は

 

それぞれ勝手に盛り上がって。
懐かしい曲のイントロには、
ふたり顔を見合わせて笑って。

たくさんのオーディエンスより少しうしろ、
ちょっと小高い芝生の上で二宮とふたり、
大好きな音楽に身をゆだねてる。

なんて幸せな時間なのかな…。

ふんわり包まれてるみたいな
幸せで不思議な気持ち。

「なんかさ」

「ん?」

「今すげー幸せ」

「…うん」

また。
また二宮が、

わたしとおんなじ気持ちを
言葉にしてくれる。

胸がじんわり熱くなる。

あたりがすっかり暗くなると、
遠くステージから届くスポットライトの光が
二宮の顔を照らして。

きれい。
白い肌、思わずみとれちゃう。

「なに?」

「!!べつに」

不意に視線があってしまって焦ったら。
んふ、って二宮が小さく笑った。

ヴヴヴ…

ポケットの中のスマホ。
あ。LINE。

学祭、今終わりました!
先生にもばれなかったよ!
こちらは大丈夫です(^^)
一瞬ピンチになったけど、
櫻井くんと相葉くんが助けてくれました。


メグちゃんからのLINE。
律儀なその文章に
思わず顔がほころぶ。

櫻井と相葉、

助けてくれたんだ…。

抜け出すって聞いたときはびっくりしたけど、
わたしを頼ってくれてうれしかった。
帰ってきたらライブの感想きかせてね!


ポロポロポロ

自分でもびっくりするくらい
涙がこぼれてくる。

メグちゃん…。
メグちゃん…。
 

”あなたつまんなそーにしてるもんね”
 
”なに勝手に決めつけてんの?”
 
”…がんばったじゃん”

思い出す、
二宮の言葉。

ポロポロ、ポロポロ、
涙がただただ、頬を伝う。


”かき氷いかがっすかー!”
相葉の呼び込みの声。

うん、って頷いた櫻井の顔。

紺ののれん。
白い絵の具。
メグちゃん。

浮かんで、浮かんで、消える。

”な?言ってよかっただろ?”

二宮の言葉。
理科室のドア。

涙が次々あふれて止まらない。


あんな学校、って
ずっとずっと思ってた。

つまんないクラス、って
わたしずっとずっと、
そう思ってたんだよ、二宮。


二宮はたぶん、
わたしが泣いてるのに気づいてる。
でもきっと、気づかないフリしてくれてる。

ありがとう。
ありがとう。

 

くだらないって、憂鬱だって

思い込んでたわたしの世界。

きれいな色があるって
教えてくれてありがとう。
 

わたしの世界に色をつけてくれて
ありがとう…二宮。

その時、

バーーン!!と

ひときわ大きな音が響いて。


真っ暗な夜空に

大きな大きな花火が打ち上がる。

 

 


「おっ、すげー!」

ちら、ともこっちを見ない二宮。
すん、てわたしの鼻をすする音。


今日を忘れないように。
この音を、花火を、二宮を。
忘れないように。

必死に涙を拭って空を見上げた。

バーーン!
バーーン!
バーーン!


赤、緑、黄色。
色とりどりのきれいな花火。

ぱっと打ちあがって
ぱっと……消えていく。


”最後の曲です”


花火が終わると同時に、
わたしたちの大好きなバンドが

 

奏でた音は。


あの日二宮が
「オレがいちばん好きな曲」って
教えてくれた、あの曲。

星が降るみたいな
キラキラなメロディが

たくさんの歓声と
たくさんの光と共に流れてくる。

ポロ、ってまた、
涙がひとつぶこぼれたら。

ふわっ

 


頭の上に。
手が触れる感覚。

いつかみたいに、
優しく頭を撫でてくれる、
二宮の手。

優しくて、あったかくて、
涙が全然止まらないよ。

「…泣きすぎでしょ」

頭の上にあったはずの彼の手のひらは
わたしの肩をつつんで。

ふわっと
その腕の中に抱きしめられる。

恥ずかしい、とか。
どきどきする、とか。

そんな気持ちよりもただ。

あったかくて、ほっとして、
すごく安心した気持ちになって。

そっとTシャツの背中に腕を回す。

♪~

遠くから聴こえてくる演奏。

でもわたしの右耳には。

小さな小さな声で歌う、
二宮のキレイな声が聴こえてる。

耳のすぐそばに寄せられてる
彼のくちびるから。

ハミングみたいな優しい歌声が
小さく小さく、届いてる。

とくとく鳴ってる心臓の音。

目を閉じて。
ぎゅって包んでくれてる腕の中で
小さな歌声を、鼓動を、聴いてたら。

「好きだよ」

わたしとおんなじ気持ちが
そのくちびるから届けられた。



(終わり)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


前後編の長い物語、読んでいただき
ほんとにほんとにありがとうございました。

主人公ちゃんのモデルは、
まんま高校時代のわたしです。笑

書いててなんか、
あの日のわたしが救われたよ。
ありがとう二宮くん。

 


(初出:2015.7.17)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

【2020.8.1追記】

 

2人の好きなバンドは

SEKAI NO OWARI をイメージしてて、

最後の曲は「スターライトパレード」で。

タイトルの『パレード』はそこからつけました(^^)

 

学校祭のクラスの出し物が

甘い関係(わな)という名前の

かき氷屋さんだったこと、

その学祭をぶっちぎって

野外コンサートに行ったこと、

わたしの実話です。

(高校3年間、学祭はぶっちぎった笑)

 

 

夏の物語、思い出深いお話を

Rebornできて良かったです(^^)

 

お付き合い感謝!

読んでくれてどうもありがとーーう!!