【妄想小説】優しい雨(3) | 彼方からの手紙

彼方からの手紙

ラブレターフロム彼方 日々のお手紙です

<第3話>
恋は始まっている
 
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 
空はすっかり明るくて、
まぶしい光。
 
駅まで送るよって言ってくれた雅紀くんと
まだ誰もいない道を並んで歩く。
 
早朝の澄んだ空気、
生まれたての新しい世界に、
わたしと雅紀くんしか
存在してないみたいな朝。
 
光の中、
ふたりで歩いてるのが嬉しい。
 
 
雅紀くん。
背が高いな。
 
となりを歩く姿をついつい、
チラチラ盗み見。
 
パーツはオトコっぽいのに
身体はすらっと、すごく細い。
 
髪サラサラ…
 
陽射しを受けて光る髪、
さらに茶色く透けて見えるのが
すごく艶っぽくて、カッコいい。
 
「ここまっすぐ行けば駅だよね?
1人でも迷わないで帰れたのに」
 
「いやいや、オレが送りたかったからさ」
 
…優しいな。
 
さりげなく優しい雅紀くんに
もうずっと、ドキドキしてる。
 
雅紀くんはきっと、
すっごくすっごくモテるんだろうな。
 
顔を見るたびに、
話すたびに、そう思う。
 
ピロン!
 
「なんか鳴ってる。LINEじゃない?」
 
「あっ!そうだ…忘れてた」
 
スマホを取り出して確認したら、
案の定潤くんからのLINE。
 
潤:朝まで既読無視とはいい度胸だな
 
…彼氏?」
 
「違う違う!そんな人いないよ。笑」
 
慌てて答えながら
とりあえず潤くんには
”ごめんね”とだけ返信を打って、
さっとかばんにしまう。
 
「お兄ちゃんみたいな人なの、
幼なじみっていうか…」
 
「お兄ちゃんねー笑」
 
「ほんとほんと!」
 
誤解されたくなくて、
必死に弁解。
 
「実家が隣同士で、
生まれた時から知ってる人で、
全然、そういうんじゃなくて」
 
「生まれた時から…へー」
 
何か言いたげな、雅紀くんの瞳。
 
なんだかちょっと、
切ないような表情に…
 
ほの暗い瞳の色に、
ドキドキ胸が高鳴る。
 
「ほんとにお兄ちゃんなの。
横山さんとおんなじ感じで!」
 
「ふははっ。
ヨコもお兄ちゃんかー!
うん。なんかわかる気はするけど。笑」
 
「そうでしょ?横山さんいつも、
わたしのこと弟に似てるって言うし」
 
「ひゃはは!そーなの?笑」
 
楽しそうな大きな笑顔に
少しだけ安心する。
 
彼氏とかそういうんじゃないって、
ちゃんとわかってくれたかな。
 
ピロン!
 
「ん?今度は雅紀くんじゃない?」
 
「あ、ほんとだ、オレだ」
 
ジーンズの後ろポケットから
さっと取り出すiPhone、
LINEのトーク画面。
 
チラッと見えたアイコンは
どう見ても…女の人の横顔だった。
 
「…彼女?」
 
「あーー、うん」
 
「…………」
 
あっという間に胸が苦しくなって、
自分で自分にびっくりする。
 
文字を打ち込んでる長い指に、
画面を見てる雅紀くんの表情に、
 
こんなにも苦しくなるなんて。
 
彼女?なんて…
聞かなければ良かった。
 
 
*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆
 
 
まだ人の少ない静かな改札前で。
 
背の高い雅紀くんに、
ペコリと頭を下げる。
 
「送ってくれてありがとう」
 
「うん」
 
すごくすごく、別れがたくて。
必死になって、言葉を探す。
 
「今度…お店に行ってもいいかな」
 
「もちろん!いつでも来てよ」
 
”ここで働いてます”って
自己紹介の時にもらった名刺。
 
ダイニングバーの名前が書かれた
ショップカードみたいなオシャレな名刺は
お財布の中に大事にしまってある。
 
「普段は厨房にいるからさ、
来るときは連絡して」
 
「いいの?」
 
「特製チャーハンごちそうするから!
絶対連絡してきてよ?」
 
「特製チャーハン?ほんとに?笑」
 
「うん。メニューにないやつ、特別に作るし」
 
特別に、なんて。
 
そんなこと言われたら、
勘違いしちゃうのに。
 
 
「じゃあ…また。
今日はおじゃましました」
 
「気をつけて帰って」
 
「うん。…あ、」
 
「ん?」
 
「おやすみなさい。笑」
 
「ふっ…そうだね。
朝だけど、おやすみなさいだね。笑」
 
 
優しい目をした雅紀くんに
ふわっと、頭を撫でられて。
 
一瞬でぎゅっと、胸が苦しくなる。
 
甘い痛みが胸をつき刺して、
雅紀くんしか見えなくなる。
 
「またね」

「………」
 
「おやすみ」
 
「…おやすみなさい」
 
 
*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆
 
 
ガタンガタン
ガタンガタン
 
まぶたの裏に、眩しい光。
 
目を閉じて、
さっき別れたばかりの雅紀くんを
思い浮かべる。
 
”…彼氏?”
”お兄ちゃんねー笑”
 
直感、みたいなものを。
 
こんな時ばっかり、
都合よく信じちゃうけど。
 
わたしが今、感じてるみたいに。
 
雅紀くんもきっと、
わたしのこと、どこか特別に
想ってくれる気持ちあるのかなって、
 
勝手な思い込みかもしれないけど…
 
”いいよ、雅紀くんで”
 
”くん付けで呼ばれることないから
なんかドキドキする。笑”
 
 
ガタンガタン
ガタンガタン
 
”次はー、東松原~、東松原~”
 
 
「朝帰りだなぁ…」
 
小さくひとりごとを呟いたら、
きゅうに眠気が襲ってくる。
 
頭の中はぼんやりしてるのに、
やっぱり雅紀くんのことばかり、
考えてしまう。
 
”…彼女?”
”あーー、うん”
 
「………」
 
想う気持ちは、しょうがない。
 

恋の気持ち。
 
きっともう恋は、
始まってしまってる。
 
”またね”
”おやすみ”
 
まぶたの裏に、眩しい光。
 
改札を通って、
階段を昇る直前、
 
振り向いて目があった時の、
雅紀くんの顔。
 
長い腕、大きな手のひら、
わたしを見つめてまっすぐに、
手を振ってくれた雅紀くんの笑顔。
 
 
 
<第3話>
恋は始まっている
 
 
(第4話へつづく)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 
 
m(__)m
 
読んでいただき
ありがとうございます!
 
今週は水曜日にいけた~
やったやった♪
 
次回は潤くん登場です。
 
朝まで既読無視とはいい度胸だな
 
早朝にそんなLINE送ってくる
じゅーんがちょうかわいっ♡
 
めちゃめちゃ楽しんでます。
わたしのストレス解消に
お付き合いいただき感謝です。
 
第4話もどうぞ、
よろしくお願いいたします(^^)/