【妄想小説】そして春の風(完結) | 彼方からの手紙

彼方からの手紙

ラブレターフロム彼方 日々のお手紙です

第12話

そして春の風

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

背中に回されてる

智のしなやかな腕。

 

しっかりと抱きしめられたまま

くちびるは深く深く、繋がる。

 

好き

すげー好き

好き、マジで

好きだよ

 

今までのぶんの”好き”を今、

全部もらっちゃった感じだな…

幸せすぎて倒れそう。

 

こんな風に熱く抱きしめられて

想いを伝えあって。

 

まさか、まさかこんな日が来るなんて。

 

智の首すじに顔を埋めて、

甘い甘い余韻に浸ってたら、

急に冷静な声が聞こえてくる。

 

「そうだ。ちょっと」

 

「?」

 

「ちょっと聞きたいんだけど」

 

眉間にぐっとしわを寄せて、

責めるみたいな目。

 

「オレはふつーに、恋人だと思って

こういうことしてたんだけど。

ニノに”彼氏いない”って言ったんでしょ?

オレのことなんだと思ってたの」

 

「えーっと……」

 

「ちゃんと答えなさい」

 

真剣な顔で、

まっすぐこっちを見てるから。

 

曖昧に目を逸らしながら、

小さな声で白状する。

 

「……セフレ?」

 

「はあっ?」

 

「セフレっていうか、

カラダだけの関係っていうか…?」

 

しどろもどろなわたしを見つめる表情が

どんどんどんどん曇っていくから、

必死に言葉を探す。

 

「だって最初の時はお酒も入ってたし…

なんとなくしたくなっちゃったのかなーって、

そういう感じで押し倒されたのかなーって、」

 

「ええぇぇぇー…」

 

「前の出版社でも、

徹夜明けの朝とかみんなその…

そういうお店行きたくなるとか言ってたから、

男の人ってそういうものなんだと思って」

 

「他の男と一緒にすんなよっ」

 

呆れたように笑ってくれた表情に、

思わずキュン。

 

「ああーーーショック。

セフレと思われてたんか。マジか」

 

「ごめんごめんごめん!」

 

「ショック。ああーーマジでショック。

そんな男だと思われてたなんて」

 

「違うよ?違うよ?

そんな風に思ってたわけじゃなくて、

わたしのこと好きだったらいいなって

いつもずーーーっと、思ってたよ?」

 

くちびるをぐっと尖らせて、

拗ねてるみたいな表情が

かわいくてまたキュン。

 

「でも自分からは、

気持ち確かめる勇気なくて…

怒ってる?」

 

「怒ってる」

 

「ごめんね…」

 

「すっげー傷ついてる」

 

「ほんとにごめん」

 

心細くなって。

 

シャツの背中に回してた手、

きゅっと智を抱きしめ直したら。

 

ちゅっ

 

優しく落とされる、

ちょっとオトコっぽい、

小さなキス。

 

智のくちびるは魔法みたい。

 

触れたらふわっと熱を持って、

ときめきが止まらない。

  

「許してくれたの…?」

 

「ぜったい許しません。笑」

 

「ええー?笑」

 

ふふふってふたり、笑いあう。

 

空気がふわふわ甘くて、

たまらない。

 

「好き」

 

「智、」

 

「すげー好き。

めちゃくちゃ好き。マジで」

 

「………」

 

「もうどんどん好きって言ってく。

セフレとか言われないように」

 

いたずらっこみたいに

きゅっと笑うきれいな笑顔。

 

腰に回されてた腕、

より一層ぐっと強く、抱き寄せられて。

 

密着したカラダは、

今までのどの瞬間よりも、甘い。

 

「めちゃめちゃ言ってくからねマジで」

 

「…え?」

 

「めちゃめちゃ好きって言いながら

めちゃめちゃ抱くからなっ。

覚悟しろよっ!笑」

 

もしかしたら智は、

フザけただけかもしれないけど。

 

ギュン!と心臓が跳ね上がって、

ドキドキどころの騒ぎじゃない音がもう

カラダから伝わってしまいそう!

 

「ん、…」

 

誤解がとけたあとで

深く重なるくちびるは熱い。

 

深く深く重なる肌は、

どこまでも熱くて、幸せで。

 

愛し、愛される。

 

今、この瞬間。

死ぬほど愛おしい瞬間を、

目の前の智のきれいな肌を…

ぎゅううっと強く、抱きしめて。

 

ずっとずっと、

切なくて苦しかった想いは今、

目の前の大好きな人が

新しい色で塗り替えてくれるから。

 

揺れるからだを

ぎゅっと抱きしめあって、

想いを届けてくれるから。

 

「すげー好き」

 

「ん…わたしも…、」

 

あがる息、

からだじゅうが心臓になったみたいに

ドキドキドキドキしてるけど。

 

わたしも素直に。

想いをちゃんと、言葉にする。

 

「大好きだよ…智」

 

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

 

「あぁーーー。春だねえ」

 

「風があったかい。気持ちいいね」

 

次号の冊子に載せる雑貨屋さんの

写真撮影につきあってくれた智が

歩きながらぐーんと大きく伸びをする。

 

「ふああぁぁぁ~」

 

のんびりかわいい、大きなあくび。

智ってやっぱり、猫みたい。

 

「~♪」

 

「お、今日はなに歌ってんの」

 

「え?わたし歌ってた?」

 

また無意識を指摘されて恥ずかしい。

 

「~~♪ってなんか、

聞いたことあんな。なんだっけ」

 

「キングヌーの”白日”」

 

「あああれか。好きやなー笑」

 

”真っさらに生まれ変わって”

 

つい数か月前のわたしは、

未来は崖っぷちで、

人生はどん底だと思ってた。

 

暗いトンネルの中にいるような時、

良く口ずさんでたこの歌は。

 

今、あたたかい空気の中で。

全然違った曲みたいに感じる。

 

「おっ、桜の木や」

 

「ほんとだ。キレイ」

 

小さな公園の脇に、

立派な幹が佇んでる。

 

「もうけっこう散ってんなぁ」

 

「早咲きだったんだね」

image

足元に広がる薄いピンク、

小さな花びらたちを見ながら

思ってたことを口にする。

 

「そういえばわたし…さくらさんのこと。

智の好きな人なのかもって

勝手に思い込んでたんだよね」

 

「ふははは。笑」

 

バレンタインの日、

こっそり教室に行ったこと、

中に入れなかったことを話した時。

 

”さくらは翔ちゃんの大事な人で”

 

さくらさんと翔さんのことを、教えてくれた。

 

今ははなればなれの、

愛しあうふたりのこと。

 

別れの朝に、

ジークンドー教室でふたりがぎゅっと

抱きしめあったのを見て。

 

”オレも会いたくなったんだよ”

 

智がわたしに会いたくなったって

話して聞かせてくれた時。

 

すごくすごく嬉しくて。

すごく胸が切なくなったことを、

思い出す。

 

「智」

 

「んー?」

 

「ちょっと手を…

つなぎたいなーー、なんて…」

 

もじもじ言いだしたわたしの手、

さっと握ってくれる、智の手。

 

ごつごつ節ばった、

オトコっぽい、大好きな手に

右手をきゅっと包まれて…

思わず涙が出そうになる。

 

あたたかい温度を

分かち合えること。

 

包まれる肌の感触を

感じられること。

 

大好きな人が今、

となりにいてくれる奇跡。

 

特別な奇跡を思う。


「翔ちゃんたちも、きっとすぐだよ」

 

「…うん」

 

「すぐ会える。絶対に」

 

「うん。きっと、そうだね」

 

信じる気持ち、

想いあう気持ちは、きっと。

 

 

「その頃にはきっと~

春風が吹くだろう~♪」

 

 

口づさむメロディの続き、

歌ったと同時にふわりと風が、

頬を撫でる。

 

「お!今ちょうど風吹いたっ」

 

振り向いて嬉しそうに笑う智の

きれいな笑顔、そして、春の風。

 

「智…大好き」

 

「いーや。オレの方が絶対好き」

 

「ふふっ…笑」

 

「めちゃめちゃ好き。大好き」

 

「大好きっ!」

 

「ちょっと!今のはフザけた。笑」

 

「フザけてないよ、大好きっ!」

 

「もーー!

その顔絶対フザけてるもん。笑

だってこのチカラこぶ何??」

 

はしゃいで笑うわたしたちの間を、

また通り抜ける、春の風。

 

あたたかい、幸せの季節。

 

繋いでた手、

きゅっとひっぱった智に

ぎゅっと甘く、抱きしめられて。

 

ちゅっとくちびるに、

優しくて甘い、小さなキス。

 

「好きだよ」

 

最後はそんな風に、

優しい声でささやくなんて、

もうずるいよ、智…

 

まっすぐ真剣な瞳に、

キュンと胸が切なくて。

 

まっすぐ届けてくれた

シンプルな言葉に、

もう胸がいっぱいで。

 

しなやかに硬い背中、

ぎゅっと抱きしめてくれる

あたたかい胸の中で、

静かにそっと、目を閉じた。

 

 

最終話

そして春の風・終わり

 

 

(初出:2020.03.27) 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

最後までお付き合いほんとうに!

ありがとうございました(^^)/

 

チカラこぶ、グッと作りながらの

「大好きっ!」はポパイ智ね(*^^*)

ちょうど書いてた時期にOAだったので

入れてみたのでした。

 

前回の最終回時は

他のお話は下げてたので、

2年の時を経て全部上げられて、

とっても嬉しい(*^^*)

写真も全部、

差し替えられて良かったー!

 

最初から読み直すと

めちゃめちゃ長ーいけど(^^;)

「結晶」から続くひとつなぎの物語なので、

またたまに思い出した時にでも、

読んでいただけたらこれ幸いです。

 

前に書いたあとがきも、

せっかくなのでそのまま、

残しておきます。

 

【2020.3.27に書いたあとがき】

 

読んでいただき

ありがとうございました!

 

書いた!書けた!!

最後まで全部書いた!!!!!

 

あなた最後まで書いたよ!!と、

2018年11月のわたしに伝えたい。

 

去年の1月から連載した

雅紀=「結晶」

潤=「甘い色」

翔くん=「ルビー」

智さん=「そして春の風」は、

 

2018年11月に「5×20」の

最初の札幌公演が終わったあとに、

4つセットで考えていたものでした。

 

その時期はもう、

ニノの結婚が近そうだなぁと、

本気で思っていて。

ニノの連載を考えようと思っても、

ハッピーエンドのお話がなかなか

浮かばなくなっていて。

 

だったらいっそ、

ニノを真ん中に据えて、

ニノが4人の恋愛をアシストするような、

ひとつの世界を舞台にしたお話、

そういうラブストーリーを書けたらな、

と考えていて。

 

雅=「結晶」

潤=「一線」

翔=「刹那」

智=「魔法」

 

っていう仮タイトルをつけて

大まかなストーリーを考えて、

よし2019年これでいくぞ!と

書き始めた矢先に、

1月27日の発表があって。

 

正直もう、

最後まで書けないと思ってました。

 

ひとつ連載を終えるたびに、

まさか今?と思うような

衝撃的な事が起きるたびに、

何度も何度も、

もうここで止まっちゃおうかなって

何度も何度も考えて。

 

もともと、

誰かに宣言してたわけではないし。

 

どこかで止まっても、

お話として完結していれば、

問題はないし。

 

でもこれはわたしの中で、

智さんのお話まで4人全員を

完結させてはじめて、

”5”が成立するストーリーだったので

愛おしい”5”に辿り着きたい、

その気持ちだけで走ってきたので、

今日の日を迎えられてほんとに…

嬉しくてちょっと泣いてます。笑

 

最後の最後までほんっとに!!

お付き合いありがとうございました。

 

2019年1月からここまで、

ほんっとにいろいろあったねー(^^;)

 

せっかくのひとつなぎの世界だから

大野さん以外の3つのお話も、

今上げられてればよかったんだけど…

 

近いうちにきっと、

Rebornできたらと思ってます。

 

いろいろアイデアや言葉をいただいて、

前向きに考えられるようになって。

ほんとにほんとに感謝です。

 

でも読んでいただいてるだけで、

ほんとにとっても嬉しいのでね(^^)

なによりもまず、

ここまで読んでくれてありがとう。

 

共に駆け抜けてくださり

ほんとうにほんとうにありがとう。

 

はーーーーー!!!!!

終わったーーーーー!!!!!

 

無事完走できて感無量。

 

とりあえず今日はもう

喜びの舞いを踊りたい。

 

(ここに5人の画像貼りたい)

(違反はダメ、絶対)

 

長いあとがきになりました。

最後までお付き合い感謝です。

 

ほんとにほんとに、

ありがとうー!!!!!