【妄想小説】そして春の風(1) | 彼方からの手紙

彼方からの手紙

ラブレターフロム彼方 日々のお手紙です

第1話

白日

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

2020年・元旦。

 

今年もやっぱり実家には帰れなかったし、

例年の如く年末年始らしい準備なんて

なんにもできないまま年が明けた。

 

仕事の資料が積み上がってる、

狭い狭い部屋の狭い狭いベッドの上、

見慣れた天井をじっと見つめたままで。

もうずっと、

アタマから離れないメロディを

小さな声で口づさむ。

 

「~♪」

 

2019年、

いちばん良く聞いてた曲。

 

「真っさらに生まれ変わって

人生イチから始めようが~♪」

 

2020年。

 

新しい年になったんだから、

できることなら真っさらに

生まれ変わってしまいたい。

 

年が変わるのと同時に

くるんとキレイさっぱり、

生まれ変われたらいいのに。

 

イヤな記憶なんて全部なくなって、

曖昧なことも全部全部なくなって…

 

2019年は、

びっくりするくらいひどい年だった。

 

こんなことある?ってくらい

衝撃的なことが起きまくった。

 

”オレ結婚したんだよね”

 

5年付き合ってたはずの恋人から

まさかの事実を知らされた、

夏の終わり。

 

”結婚したけどさ。

オレらは変わんないでしょ?”

 

大好きだった笑顔が

訳のわからないことを言いだして、

 

わたしはこの人の

何を見てたんだろうって、

わたしの5年は

なんだったんだろうって、

 

っていうか!!!!!

 

アラフォーにとって

とてつもなく貴重な時期だったのに。

 

なんて男に引っかかってたんだろう。

なんでわたしは5年も、あんな男に―

 

「………」

 

思い出したらまたムカついてきて、

変わらないわけあるかバカ!って

心の中で毒づく。

 

もうとっくに見切りつけてても

思い出したらもやもやしてくるのは、

本人にきっぱりとノーを

突き付けられなかったからなのかな。

 

”結婚したからって

オレらの関係は変わんないよね”

 

ひどい事言われてるって

アタマでは十分わかってたのに、

曖昧に笑うしかなかった自分が情けない。

 

変わらないわけあるかバカ!

バカバカバカ!!

 

バカにしないで!って

ちゃんと言えなかったわたしのバカ!

バカバカバカバカ!!

 

「真っ白に全てさよなら

降りしきる雪よ今だけは

この心を凍らせてくれ、」

 

「全てを忘れさせて~~♪

くれよ~~~~~♪」

 

「ん……ちょ、なに?」

 

狭いベッド、

隣りで眠ってた彼と目があう。

 

「ごめん起こしちゃった?」

 

いけないいけない。

気持ちが入り過ぎて

ファルセットのとこだいぶ大きな声で

歌っちゃってたのかも。

 

「うるさかったよね、ごめん」

 

「んふふ…いや全然、いいけど」

 

眠そうな瞬きをした彼は

きれいな手でわたしを抱き寄せる。

 

泣きたくなるほど優しい腕。

 

あったかい素肌と素肌が

ぎゅっとくっつく感覚。

 

「なに歌ってたの?」

 

「キングヌーの、」

 

「わかった。昨日紅白出てたやつだ」

 

「うん、そう。笑」

 

2019年は、びっくりするくらい

ひどいひどい年だったけど。

 

「さみーから。もっとこっち」


きゅっと優しく抱き寄せてくれる

彼と出会ったことは…

 

良いことと悪いこと、

どっちにカウントされるんだろう。

 

人生のピンチを救ってくれた彼は、

わたしの救世主か。

 

それともわたしを

更なる地獄へといざなう悪魔か―

 

「ん、…ちょ、智」

 

優しく抱き寄せてくれてた手が

ゆっくりと肌を撫でるから

ドキンと胸が高鳴る。

 

「さ、さとし、」

 

「しよ」

 

「………」

 

見つめあえばもう…そうなってしまう。

 

”セフレ”

 

秋が深まった頃に

そういうことになってしまった、

この人の腕の中で。

 

やっぱりこれってカラダだけの関係、

セフレってことだよなあって、

キスが深くなる合間に考える。

 

付き合ってるわけじゃないのに。

 

肌の熱を感じる時間は、幸せで。

でも本当は、すごくすごく不安で。

 

幸せと不安の中で。

 

まっさらになんて

生まれ変われないわたしは、

 

昨日と地続きの今日を

ただ歩いてくしか術がないわたしは、

 

「ん、」

 

たとえカラダだけだとしても、

知ってしまった

甘いぬくもりから逃れられない。

 

セフレなんて。

 

いいわけないってわかってる。

わかってるのに。

 

2020年。

 

どんな年になるんだろう。

 

崖っぷちの未来。

運命はどうなってるんだろう。

 

わたしを待ち受けるのは、

天国か、地獄か―

 

 

第1話

白日

 

 

(初出:2020.1.7)

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店主ニノのお店を軸にした、

相葉さん「結晶」、潤くん「甘い色」、

翔くん「ルビー」に続く、

大野さん主演の物語です。

 
当時書いた記事、
写真と日付だけ変えてのRebornにしたので、
前にいただいたいいねはそのまま残ってます。
新たにつけ直していただいても、
元のままでも嬉しいので、どちらでも!(^^)
初めて読むYO!の方、
楽しんでいただけたらこれ幸いです♡
 
世の中はまだまだなかなか、
いろいろあるからせめて物語の世界は
楽しく読んでいただけたら…
 
と言いつつ、
始まりはちょっと不穏な空気で
ごめんごめんごめーん!!だけど(^^;)
 
冬から春になる季節にあわせて書いてたので、
ちょうど今の時期の感じで、
読んでもらえたらなーと思います。
 
今日もお付き合いどうもありがとう!
あと少し、良い日曜日を(^^)