「球体」
天使は女の漁師に問うた。
「腐った魚はどんな臭いだ?」
女の漁師はこの質問に大きな衝撃を受け、
必死に言葉を探し、
どれくらい時間が経ったろう、
いつしか言葉を喪った。
そして空を見上げた。
4機の飛行機が彼女の周りを厚く囲む球体を突き破ってはくれないかと、
そう、願うような物悲しい顔で。
彼岸からかすかに見える白い光。
再び日付がやってくる。
もはや換喩されるもののすべてが綺麗に作り直されてしまった今でも
それでも強く踏みつけ、踏みにじらなくてはならない。
かすかな残余が、すべてを敵と同定してしまう前の裸の他者が、
まだ、薄い声を放っているのだから。