神子の運命~戦う少女~第12話「敵」

作・葉菜

「わかりました。風間家第19代目当主、「竜水」使い援護、結界師総括、風間出雲。水城様の力、解禁いたします。」

出雲ちゃんはパーっと明るい顔をすると、胸の前で手を合わせた。

「笛魔術、封印解除!!「竜水」よ、記憶がなすままに、我が姫に使えたり。我が姫に姿を現せたり!!」

出雲ちゃんが何かを言い終わると、私の周りが光り始めた。

そして、全身が熱くてたまらなくなった。

「あ、熱い!!」

私は、熱さに耐えきれず声をあげてしまった。

少しすると、血管がドクン、ドクンと脈打った。目の前が真っ白になった。

気がつくと、服が甲斐小学校の体育着ではなく、水色と白の衣をまとい、白くて黒いラインが入った、細い笛を手にしていた。髪は、長くなりお尻より下の長さで、銀髪だった。

「うそ・・・?服が・・・。髪が・・・。」

「まあ。なんてそっくりなんでしょう。水子様に瓜二つでいらっしゃる。」

出雲ちゃんが口に手をあてていた。

そういえば、出雲ちゃんの姿も変わっていた。

水色の陰陽装束に、私と同じように長く銀色の髪の毛になっていた。

そして、目の色が銀色だった。ここまでくると、私もそうなのだろう。

「行きましょう。天界国を叩きのめしてきましょう。」

「はっ!!」

私は自分でもわからないが、校庭に向かっていた。

そして、校庭に着くなり、叫んだ。

「天界国のものよ!!竜宮国、姫、竜宮水城だ!!今すぐ出てこい!!」

(私、どうしてこんなこと言ってるの?口が勝手に・・・。いや、きっと本能って言うのだ。姫としての本能なんだ。)

「おお。久しぶりのうまそうな匂いだ。しかも、竜宮国の姫とは・・・。うひぃひぃひぃ。」

低くて野太い声が聞こえた。

聞いているだけで、おなかの中がかきまわされそうな、気持ち悪い感覚に襲われた。

眉間にしわをよせていると、出雲ちゃんが心配そうに声をかけてくれた。

「天界国のものは、声にも特徴を持っています。きっと、すぐになれますよ。」

「はい。ちょっと慣れてきました。」

少したつと出雲ちゃんが話しかけてきた。

「水城様。気分が楽になってきたら、意識を集中させて空気をしっかり見てください。何かがわかるはずです。」

「は、はい。」

出雲ちゃんははっきりは言わなかったけど、きっと、コツを自分でつかめってことなんだろう。

(やってやろうじゃない。)

一度目を閉じて、大きく深呼吸した。

まずは、目を閉じて、心を無にした。

シャラン。シャラン。

(何?この音。また、おなかの底からかきまわされるような・・・。気持ち悪い・・・。)

シャラン。シャラン。

(今だ!!)

目を思いっきり開いた。

目の前には、老婆の姿があった。茶色い古い衣をまとい、にやりと笑っていた。

そして、斜め後ろには、紫色のきれいな衣をまとった人がいた。

布で顔を深く覆っていたから、表情とかは全く分からない。

「うえっ!!」

地面にひざまずいてしまった。

目の前の二人の、圧倒官に、気持ちが負けてしまった。

「水城様!!」

出雲ちゃんが駆け寄ろうとする。でも・・・、頼ることはできない。

「よるな!!」

これもまた、本能として発せられた言葉だった。

助けてほしい。でも、いつまでも、甘えてるわけにはいかない。

「私を解放直後から、見ることができるとは。かなり、楽しめそうだな。」

老婆ではないほうの、紫色の衣の人が、言った。

声は、なんだか、くもっているような感じがしていた。

何か機械を使っているのだろう。

私は、なんとか立つともう一度敵をよく見た。

やはり、紫色の衣の人はよく見えない。

「水城様。笛をお使いください。演奏中は、私が結界を張ります。」

「でも、使い方が・・・。」

言いかけて、やめた。

なんとなく、弾けるような気がしたから。

つづく