おっぱいは誰のものか。
息子のものか父のものか。
それが問題だ。

父は息子に、右と左で山分けを提案したが、なかなか首を縦に振ってはくれぬ。
彼は要するに既得権益を主張するのだが、そんなことを言ったらもともとは父のものであったはずだ。

過去は問題ではない、今を、現実を見ろと息子の眼差しが諭そうとする。

いやそれも違う。もはや離乳食に移行せんとする君においては、むしろおっぱいから離れるべきなのである。全てを手放せと言っているわけでもあるまい、国境線を引こうと言っているのだ。時間で区切ってもよかろう。

なに、ミルクそのものは君のものでもよいのだ。
お互い、要求とこだわりを明確にして、妥協点を探るのが大人というものだよ。

なあ、君ももう4ヶ月だ。
聞き分けなさい。

おっぱいはあたしのものよ。
男同士の会話をだまって聞いていた女が、横から呟いた。

あ、嗚呼、そうだった。