小さな頃から不思議だったこと

けれど、それは僕にしか見えていなかったこと

 

僕には1日が24時間というのがよくわからない

 

だって僕の時計は28時間経たないと1日が終わらないから

 

でもね、お母さんの時計は1日が14時間しかない

お父さんの時計は23時間で、おじいちゃんの時計は35時間

 

みんなバラバラの時間を刻んでた

 

小学校にあがったら、僕の時計は1日が10時間になった

でもね、1ヶ月が67日になったんだ

 

中学生になった頃にはまた27時間に

1ヶ月は20日に

 

高校生は19時間で14日しかなくなった

 

友達の時計の進み方はよく似ていたけれど

時々違う進み方をしている人もいてその子は少し変わってた

 

大人になったら同じような時間の人は少なくなった

同い年でも違う時間を生きている

同じ時間でも日数が違う

 

そんな中で君に出会った

同じ時間、同じ日数で生きる君に

 

恋人になって、時々は時間がずれたけど、1年、2年と時計は同じ時間を刻んでく

 

3年経って結婚した

 

本当は少しずつ僕と君の時間がずれてたことには気が付いていたんだ

 

4年目には子供が産まれた

1日が58時間ある、1ヶ月が72日もある女の子

 

時間の流れが違い過ぎてとても戸惑った

近い時間を生きていた友達との時間も大きく変わった

 

それでも娘は可愛くて、僕は君の時計が1日3時間になっていることに気が付かなかった

怒りっぽくなった君。いつも何かに焦る君。1ヶ月は30日の君

 

いつからか君の時計は止まってた

僕の時計はすべてが秒針になったように早く回ってる

 

可愛い娘の時計が1日10時間になる頃、僕らの時計の時間も少しずつ24時間に近づいた

また君と近い時間を生きれることも僕は嬉しかった。本当に

 

それでも歳を重ねるごとに時計の速さは加速して、それでも1ヶ月は30日

学生が終わると大体みんな30日か31日。1年に一度だけ28日があって、時々29日になる

 

だけど、時計は加速するからついつい生き急いでしまう

これはみんな同じ

 

僕にしか見えない時計

でもみんなわかってる

自分の中の自分の時計

 

僕らは時計に急かされながら生きている

24時間じゃない、うつろいやすいこの時計に

 

でも僕は一つだけ知らなかった

僕の時計の針が明日外れてしまうことを――