アナログでやる「宇宙刑事ギャバン」は最高過ぎる。

♪男なんだろ
♪ぐずぐずするなよ
♪胸のエンジンに火をつけろ!

という歌い出しからして、昭和である。
今ならジェンダー的に色々言われるかもしれない(笑)が、語られなくなった「男の生き方」に、冒頭から強引に引っ張り込んでくる。
特に2番。

♪おれもお前も名もない花を
♪踏みつけられない男になるのさ

ここは泣ける。
野暮で、不器用で、優しい。
だが優しさの表現がぎこちない。
そんな、かつて恐竜の如く街を闊歩した、むくつけき男像は絶滅したか。

 ますらをや 片恋ひせむと 嘆けども
 醜のますらを なほ恋ひにけり

万葉以来、日本男子は「かくありたい男」と、「実際には情けない男」との間で揺れてきた。
いかにして「ますらを」たるか。

♪若さ 若さってなんだ?
♪ふりむかないことさ
♪愛ってなんだ?
♪ためらわないことさ

名高いサビのギャバン問答は、「若さ」とは年齢ではなく生き方であり、「愛」とは感情ではなく行動であるとファンキーに叩きつける。
その規定ぶりはもはやゲーテ的ですらある。
つまり男にとっていかに振り向かず、ぐずぐずためらわず、自分の中の理想像を裏切らずに生きるかということが戦いなのであり、「若さ」と「愛」に生きることで「ますらを」となるのだと、しっかり答えを提示する。
それを体現せし先達「ギャバン」と体言止の呼び掛けにて歌は終わる。

平成前夜。
人間も社会も軽く、速く、乾いていく時代の入口で、万葉から時代を越えて詠み継がれてきた「ますらを」の残響を、この歌は最後の昭和声で高らかに歌い上げたのかもしれない。
「後ろを見るな。光の速さで明日へダッシュしろ」
そのメッセージは、敗戦の影を振り切り、経済成長の彼方をまだ信じていた時代の声にも聞こえる。
そんな夢の覚めゆく衰退途上国で中年を送り、ともすると情けなさの側溝にはまりがちな、われら永遠の昭和少年。
今日もこの歌を胸に、ぐずぐず突っ走って参りましょう。


さあ聴くがよい,ビームビーム!
「宇宙刑事ギャバン」(昭和57年)
https://youtu.be/2Cu4-us-TWw


#メタルヒーロー #宇宙刑事ギャバン #ギャバン #昭和 

もし、日本人の生み出したデザインで最も美しいものは何かと問われたなら、僕は箸墓古墳を挙げる。


古墳時代の到来を告げる最古級の巨大前方後円墳でありながら、隅々まで無駄を廃し研ぎ澄まされた幾何学美は、何の手本も無く作られたとは信じられないほど洗練されている。



後円部の直径とほぼ同寸の撥型に広がった前方部のまとまりの良さ、四段築造の前方部墳頂から後円部墳頂の土壇(埋葬施設)に伸びるスロープ、後円部と前方部をつなぐくびれ部の角度を変えた面取りの心憎さなど挙げればキリが無いが、とにかく世の築造物に似たものが無く、自然物にも全く似ていない箸墓のデザインは謎である。


箸墓は奈良県三輪山のふもと、纏向地域にて作り出された墳形・纏向型古墳に続く最初期の前方後円墳に属するが、驚くべきことに遠く千葉県にも纏向型古墳が存在する。

それが神門古墳群である。




後々隣接して上総国国分寺が作られることからも、一等地に造られたことがわかるこの古墳群(3、4、5墳)が、前方後円墳のデザイン発生の、謎を解く鍵になるかもしれないことはよく知られている。

3号墳、4号墳は昭和の開発によって失われてしまったが、現存する5号墳と過去の調査記録との比較からわかるのは、円墳を取り巻く周濠を渡るための土橋が徐々に前方部へと発展した可能性があるということだ。

この発展の先に箸墓の美しい撥型の前方部があると見ることができるかもしれない。

後々改葬の容易な横穴式石室が一般的になるが、初期古墳の埋葬施設は竪穴式石室で、基本的に後円部墳頂中央付近に造られた。

つまり、まず円墳があったはずであり、これは墳墓のデザインとしても想像しやすい。

王の眠る円墳を現世から隔絶された霊界として荘厳するために、周濠を作ったのもよくわかる。

では土橋であった前方部が撥型に発展した理由はどうであろう。


能舞台には現世(本舞台)と異界(幕の向こう)とを渡す、橋掛がある。

この橋掛は舞台に対してわずかに斜め後方へ取り付けられ、沿いに立つ三本の松は幕に近づくほど低くなる。

そこには視覚的な遠近の錯覚を生む工夫がある。

限られた空間の中で異界をより遠く見せ、キャラクターの登場を、より遥かな世界からの来臨と感じさせるための構成である。

この限られた空間を用いてなるべく異界を遠く見せる視覚的操作の工夫が、前方後円墳のデザインにもなされているように思う。


神門古墳群を参考に、葬送の際、王の棺はまず周濠に渡された土橋を通って、埋葬施設である円墳に向かうという基本的な形があると考える。

そしてその王を葬る霊界である円墳をより大きく立派に、より遥かに見せるためにどうするかと考えたとき、能の橋掛のように遠近法を使うのではないかと思う。

土橋の中央、前方部の中心を墳頂まで上り、後円部を見たとき、前方部が後円部に向かってくびれていく。

また、墳頂のスロープもくびれに向かって一度下り、また円墳墳頂へ上る。

この構成によって、遠近法的に円墳は実際以上に巨大で、そして遠くにあるかのように感じられる。

僕も古墳に上るのが好きだが、築造時の箸墓前方部から眺めた人々は、荘厳さに身震いしたであろうと想像する。

もしこの遠近法的効果が意図されたものであるならば、それは王の威徳の大きさと、その永遠性を空間として表現する試みであったのかもしれない。

限られた空間を最大限に活かした視覚効果によって聖と俗を隔てる、前方後円墳と能舞台に通底する空間認識は、確かにあると見る。

いまも変わらぬ、土地の制約が磨いた日本的美意識の核にあるものだと思う。


その美的構成が実用を超えて極限まで推し進められた結果、箸墓に見るように前方部はより高くなり、やがて陸地から切り離され、水に浮かぶ鍵穴型の墳墓が全国に広がっていった。

追求が飛躍する、非常に日本的なガラパゴス現象であるように思う。


#古墳 #前方後円墳 #能 #能楽

まれにやります。





「希の会」川口晃平
このたび、川口晃平能の会として「希の会」を立ち上げさせていただきました。その名に込めた思いについて、少し書かせていただきます。

師匠・梅若桜雪はこれまで二度にわたりギリシア公演を行ってまいりましたが、二度目はギリシア側からの要請により、ホメロス『オデュッセイア』を題材とした新作能を創作いたしました。ギリシア夏の芸術祭・アテネフェスティバルにおいて、目玉演目が上演されるエピダウロスの古代円形劇場にて、「冥府行—ネキア—」として初演されたのです。
英雄オデュッセウスが苦難の旅の途上、冥界を訪れ、亡き戦友や母の霊と出会い、帰郷への予言を受ける——その物語を、二千四百年前の劇場で、一万人を超える観客に見守られながら上演したあの夏の夜は、私の人生において忘れ得ぬ瞬間となりました。おそらく生涯の終わりに至るまで、折に触れて思い出すことでしょう。
実は私は少年時代よりエーゲ海やギリシア文化に憧れ、ホメロスも読んでおりました。その縁もあり、師匠を補佐しつつ、本企画に深く携わらせていただきました。

この「冥府行」を師匠とともに創作したのが、ギリシア人演出家ミハイル・マルマリノス 氏です。氏は来年のアテネフェスティバルにおいて、バレエダンサー であり俳優でもあるミハイル・バリシニコフ氏と組み、能「楊貴妃」に着想を得た新作を上演されます。そのアドバイザーとして私をギリシアに招いてくださることとなりました。このお招きに応えるべく、そして自身にとってもいまだ舞ったことのない憧れの曲である「楊貴妃」を、本会第一回の演目といたしました。会の名「希の会」は、ギリシアの漢訳「希臘」の一字をいただいたものです。

さらに申せば、初めて師匠(梅若六郎)の能を拝見したのが、大学一年の七夕の日の「楊貴妃」でした。この七夕上演の趣向は、玄宗皇帝と楊貴妃が二星に「比翼連理」を誓った夜が七夕だったことに因みます。その舞台の衝撃に心を射抜かれ、この道に入門を志し、今日まで能楽師として歩んでまいりました。私にとって能人生の原点ともいえるこの曲を、旧暦七夕の夜に舞わせていただきます。
暑さ厳しき折ではございますが、なにとぞご来場賜りますよう、心よりお願い申し上げます。


和8年 8月19日㈬ 午後6時半開演
会場 梅若能楽学院会館

「第一回  希の会」

解説 高橋悠介(慶応義塾大学 斯道文庫教授)

能「楊貴妃」
 楊貴妃 川口晃平
 方士 御厨誠吾
 蓬莱の住人 山本則重
 笛 松田弘之
 小鼓 飯田清一
 大鼓 亀井広忠
 地謡 観世喜正 ほか

〔チケット(令和8年5月18日発売)〕
カンフェティチケットセンター
050-3092-0051(平日10:00~17:00)
http://confetti-web.com/@/marenokai

・指定S席 7000円 ・指定A席 6000円
・自由B席 4500円 ・ 学生券(自由席) 2000円

〔お問い合わせ〕
希の会
070-6422-1532
marenokai50@gmail.com

#ギリシア #ギリシャ #楊貴妃 #能 #能楽