その1からの続きです。
■神様の裏の顔
※ネタバレあります※
いきなりネタばれしてしまって申し訳ないが、私の中で、犯人が双子あるいは多重人格というのは禁じ手である。萎える。(序盤で示唆されている場合を除く。)そういう意味ではこの作品は禁じ手もいいとこなのだが、それを上回る面白さだったので、貶す気になれない(笑)。誰からも愛され、神様のようだった元校長先生のお通夜に集まった元生徒や近隣住民。そこで「神様」の悪行の数々が暴露される…?!という野次馬根性を刺激される展開。各々が神妙な面持ちで自分のことしか考えてないとこがリアル。設定は重いのにコミカルでサクッと読めました。
※ネタバレおわり※
読了日:06月22日 著者:藤崎 翔
https://bookmeter.com/books/8278292
■うたかたモザイク
雑誌やアンソロジーに掲載されたお話が再収録された短編集。「BL」と「神さまはそない優しない」(これ、関西弁になじみのない人にはちょっと読みづらいかも)が好み。一穂さんの書く文章を読んでいると、(あの時の私の言葉にできなかった気持ちはこういう風に表現できるものやったんや…)と気がついて、心の澱が柔らかく整理されていくような感覚に浸れて、落ち着く。「Melting Point」や「ツーバイツー」あたりは、(え、こんな官能小説的なの書く方やっけ?)と引いてしまったけど、これからも追いかけたい作家さんの1人です。
読了日:06月20日 著者:一穂 ミチ
https://bookmeter.com/books/20947809
■悪いものが、来ませんように (単行本)
子育てに悩む奈津子。不妊と夫の浮気に悩む紗英。距離の近すぎる女二人の友人関係(いわゆる共依存?)を描いた作品なのかな、でも何か所々で違和感を感じるな…と思いながら読み進めたら後半でひっくり返された!ラストの救いの無さもこれぞ芦沢央という感じ。殺された大志が疑いようもなくクズなのが唯一の救いかな?(←ヒドい。)終始重くてしんどい~。虐待の連鎖を断ち切って子どもを育て(しかも一見それに成功しているように見える)、それが却って子どもを縛りつけていた、…じゃあどうすればいいの?という哀しいような脱力感に襲われた。
読了日:06月19日 著者:芦沢 央
https://bookmeter.com/books/7147947
■我が友、スミス
別の生き物になりたい。そう思ってジム通いを始めたOLがある日スカウトを受け、ボディ・ビル大会への出場を目指す──という、粗筋だけ書いてしまうとなんとも陳腐な芥川賞候補作。同僚の「女性は大変ですね」という科白と、ボディ・ビルの世界が「クラシック」であることが繰り返し強調される。全人物名をイニシャル+αで表記することによって、主人公の一人称視点で語られる物語であっても一般化をはかることで過度に主人公に入り込むことなく物語ろうとしているように感じた。(私の勝手な解釈なので全然違う意図があったらすみません。)
読了日:06月18日 著者:石田 夏穂
https://bookmeter.com/books/19174377
■5分間リアル脱出ゲームR
「人生」が面白かったので「R」にも手を出してみた。(第一弾をやろうかと思ったがAmazonでやたら評価低いのでなんとなく…。何で第一弾あんなに評価低いのか誰か教えて。何故かSCRAPさんの出すシリーズは第一弾が評価低くて第二弾、第三弾と評価が上がるのは何でなんだぜ。)謎解きの難易度にバラつきがありすぎる気はするものの、面白かった!やっぱり五分では無理だけどね。
読了日:06月17日 著者:SCRAP
https://bookmeter.com/books/13509878
■わたしの結び目
※ネタバレあります※
父親が不倫をしたせいで母親がおかしくなり、その母親のサンドバッグとなってしまった(ヤングケアラーというだけでもない)、虚言癖のある彩名。いじめられていたが親の都合で転校することができた里香。出会った二人を軸に描かれる超絶リアルな女子中学生の人間関係、スクールカースト、いじめ。ラストはハッピーエンドっぽく締めくくられているけれど…彩名の家庭内の問題が改善されないとずっと彩名の自傷癖も治らないだろうし、里香がこの先もずっと側に居る訳でもないし。なんだかすごくモヤるな。それが作者の狙いなのかもしれない。うーん。
※ネタバレおわり※
読了日:06月15日 著者:真下 みこと
https://bookmeter.com/books/20952631
■ストロベリー戦争 弁理士・大鳳未来
このミス大賞を受賞した前作よりは落ちるだろうな…と思いきや、前作を超える面白さ!商標権と品種登録の違いもよくわからん素人にもサクサク読めました。又、中国はじめ諸外国への流出という現実の問題にも目を向けさせられました。農家の苦労をバカにするような大企業のやり口に負けずバッサバッサと気持ち良くやり返す大鳳未来が今回もかっこいい。なのに甘いもののことになると(あの毅然とした弁理士さんどこ行った…?)ぐらい別人みたいにかわいくなっちゃうギャップも好き。終始イチゴの甘酸っぱさを思い出して涎が止まりませんでした。
読了日:06月13日 著者:南原 詠
https://bookmeter.com/books/20118894
■夜空に浮かぶ欠けた月たち
良くも悪くも薄かったです。心の病を簡単に説明する本を小説風に味付けしました、という印象を受けました。精神科や心療内科にかかろうかどうか悩んでいる人の心のハードルを下げてくれるかもしれないけど、そもそも心身病んでる時にこの長さの文章は読めないのでは。そして物語としては、話がうまく進みすぎて深みが無いように感じました。そんなに人生甘くない。蛇足ですが、残念ながら今の日本(特に首都圏)で簡単に予約が取れる、あるいはこの小説に出てくるような行きたい時にフラッと行けるような(まともな)メンタルクリニックは無いです。
読了日:06月12日 著者:窪 美澄
https://bookmeter.com/books/20891315
■名探偵のはらわた
現実に起きた事件を土台にした特殊設定ミステリー。意外とサクッと読めた。過去の凶悪犯が地獄から呼び戻されて再び悪行を働く…というぶっ飛び設定を受け入れられるか、がこの本を楽しめるかどうかの別れ道だと思う。ミステリーとしてというよりエンタメ的に面白いと思った。なるほどその部分をそういう風に推理するのね、と単純な私はいちいち感心してしまう。(←こういう人間ほど現実で簡単に騙されるのだ。)まだ何人か殺人犯退治しきれてないし、この顛末は…続編期待していいんでしょうか。ディスプレイに話しかけちゃう古城探偵、おもろい。
読了日:06月11日 著者:白井 智之
https://bookmeter.com/books/16352142
■鎌倉うずまき案内所
人生にはぐれてさまよう老若男女が、螺旋階段を降りた先には双子のおじいさんとアンモナイトの所長が待っている。困った時のうずまきキャンディはお一人様一個まで。時代が螺旋を描いて繋がっているように、六編各話が少しずつ繋がっている。このあたりの手法が実に上手く、さすが青山美智子さん。誰しも外巻さんと内巻さんに「ナイスうずまき!」って言ってもらいたい時、あるだろうな。そんな時のために物語の力ってあるんだよ、という作者のメッセージが胸に沁みる。時代を超えて語りかけてくる本たちが尚更愛しく思える、そんな一冊でした。
読了日:06月10日 著者:青山 美智子
https://bookmeter.com/books/14031794
■老虎残夢
宋・金・蒙古が睨み合う時代の中国が舞台の特殊設定で館で孤島で密室で百合で…と、要素てんこ盛り。初っ端からカンフー映画的武闘が始まり、(あれ?これって江戸川乱歩賞作品よね…?)と戸惑いながらも読んでしまう。ちょっと十二国記を彷彿させる、こういう雰囲気大好き!(ここから妄想です。)話の流れ的に、私としては師父殺害の濡れ衣を着せられて逃亡&真犯人を探す旅に出て欲しかったー(※あくまで妄想です。)ところで恋華は何故戦闘技術を教えられず養女扱いのままだったのか?紫苑との扱いに差がありすぎて可哀想になってしまった。
読了日:06月08日 著者:桃野 雑派
https://bookmeter.com/books/18527759
(何故か楽天ブックスになかったのでAmazon貼っておきます。)
その3へつづく!