(前回の続きです。)
救急車の周りには人だかりができていました。
夏の夜。公園の目の前の病院。
ということもあり、人の行き交いも多く、
なにごと?と様子を見にきた人で
ごちゃごちゃしていました。
その中で意気揚々と救急隊員に話しかける旦那がとても異様に映り、
この人は一体なにがしたいんだろう?と
薄気味悪ささえ感じました。
「娘のことを頼むな!
ソラのことは気にせんでいいよ!」
ハイテンションでわたしに話し掛ける様は、
もう滑稽。
いやいや、あんたすでに、ソラをひとりにしてきとるがな!
それに、気づいてないあんたはすごいよ、ハァ
わたしは敢えてなにも応えず、
乗ってきた車のキーを無言で旦那に渡しました。
「車、うちに戻しておくな!」
とニコニコ笑顔。
はい、はい、頼みますよと頷きながら、
わたしもやっと救急車へと乗り込みました。
救急車に乗り、
指定された場所に座るとすぐに、
うしろの扉が閉められました。
その窓ガラスの隙間から、
旦那が嬉しそうに救急車を見つめ、
近くにいた内科の先生に話しかけるのが見えました。
どんだけ、救急車好きなのよ。
呆れる気持ちを切り替えて、
わたしは救急隊員の方に、
今日のこれまでの出来事や今までの病歴、
そして、万が一、コロナという事も考えての対応をします。との話を受けて、
全ての質問に答えていきました。
一通りの話が終わると、
それでは。とサイレンが再び鳴らされ、
救急車が動き始めました。
病院に着くまでの10分弱の間。
救急隊員のおじさんが
娘にずっと話しかけて下さいました。
よくがんばったね。
大丈夫だからね。
学校、楽しい?
そう、〇〇(←習い事)してるんだ、すごいね。
痛みの合間、娘にも少し笑顔が見られ、
救急隊員のおじさんとの会話をしながら、
病院へと向かいました。
慣れた道を緊急車両で通りすぎる非日常の時間があっという間に終わり、
救急車は、見慣れた病院へとすべりこんでいきました。